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CPOが描く2026年AIインフラの光化転換構造

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NVIDIAは2026年3月2日、光部品大手のCoherentとLumentumに対して各20億ドル、合計40億ドルの戦略出資と複数年の調達契約を結んだことを公表しました。同社は同年前半にQuantum-X InfiniBandスイッチを、後半にSpectrum-X Ethernetスイッチを商用化する計画を示しており、いずれもCPO(Co-Packaged Optics)を採用したシステムとなります。Broadcomもまた、3月にTomahawk 6 - Davisson(TH6-Davisson)の早期アクセス顧客への出荷を開始し、102.4Tb/sのスイッチング容量を持つCPO製品で追随する構図が鮮明になってきました。

CPOは、AIデータセンター内の光トランシーバモジュールに占める比率が2026年時点で1%未満にとどまるとされる一方、2036年には35%を超え、市場規模は200億ドルを上回るとIDTechExは予測しています。背景には、NVLink世代の更新ごとに帯域要求が急上昇し、銅線インターコネクトが物理的限界に近づいているという、AIインフラ全体の設計思想の転換があります。日本では、ラピダスと技術研究組合 最先端半導体技術センター(LSTC)が千歳を拠点にした光電融合プロジェクトを2026年4月から本格的に始動させており、海外の量産レースと国内の政策投資が同時並行で動く局面に入っています。

今回は、CPO量産元年の市場構造、NVIDIAとBroadcomの戦略対比、千歳から動き出した日本の光電融合プロジェクト、そして、今後の展望について取り上げたいと思います。

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CPO普及率1%未満から35%へ――量産元年の市場構造

IDTechExが公表した「Co-Packaged Optics (CPO) 2026-2036」によると、AIデータセンター向けの光接続に占めるCPOの比率は、2026年時点で1%未満にとどまります。これが2030年には35%を超え、2036年には市場規模で200億ドルを上回る水準に到達するとしています。年平均成長率(CAGR)は37%程度であり、出荷数量は2030年に5,000万個を超えると見込まれています。

この急成長を駆動しているのは、AI学習基盤のスケールアップ・スケールアウト両軸での帯域要求です。NVLink 6世代の400G SerDesレーン仕様のもとでは、銅線による電気信号は1メートル未満で実効的に減衰し、ラック内のごく近接接続にしか耐えられなくなります。一方、光伝送は波長分割多重(WDM)による多重化が可能であり、銅線では原理的に到達できない帯域密度を実現できます。CPOはスイッチASICと光エンジンを同一基板に統合することで、リンクあたりの消費電力を10pJ/bit級から1〜2pJ/bit級に引き下げ、ラック電力に占めるインターコネクトの比率を抜本的に下げる構造を狙ったものです。

注意しておきたいのは、CPOが今後10年で銅線をすべて置き換えるわけではないという点です。スケールアップ接続の超短距離領域では銅線が2028年頃まで主流を維持するとの見方が業界内では根強く、光と銅の併存期間は相応に長くなると考えられます。ただし、AIラックの規模が単一筐体から複数ラックに広がる局面で、光化の比重が一気に高まるという段階的な移行シナリオが、量産元年の起点として2026年に置かれている構図となっています。

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NVIDIAの40億ドル垂直統合――Quantum-XとSpectrum-Xの戦略意図

NVIDIAは2026年3月2日、Coherent・Lumentumに対して各20億ドル、計40億ドルの出資と複数年の優先調達契約を発表しました。先端レーザーとシリコンフォトニクスモジュールの安定供給を確保し、自社のCPOスイッチ製品ラインに必要な光部品の囲い込みを進める動きです。

製品面では、Quantum-X InfiniBandスイッチが2026年前半に商用化され、800Gb/s × 512ポート、合計409.6Tb/sのスループットを実現する仕様が示されています。続くSpectrum-X EthernetプラットフォームのCPO版は2026年後半に投入される計画です。これらはいずれも、TSMCのCOUPE(Compact Universal Photonic Engine)と呼ばれるシリコンフォトニクス・パッケージング技術を採用しており、200G PAM4マイクロリングモジュレータをロジックチップと3D積層する設計となっています。

この40億ドルは部品調達の安定化を超えた意味を持ちます。光部品のサプライチェーンは、レーザー光源や変調器など、ごく少数の特化メーカーに依存している領域です。NVIDIAは、GPUとCUDAで演算プラットフォームを垂直統合したのと同じ構造を、光配線の物理層にまで拡張しようとしていると見るのが妥当でしょう。複数年の優先調達契約は、競合のCSPやスイッチベンダーが同じ光エンジン部品を確保しにくくする効果を伴うため、調達側の自由度を実質的に制約する一面も持ちます。AI計算基盤の競争軸が、演算性能から「光部品の供給能力をどれだけ手中に置けるか」に移りつつある構図といえます。

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Broadcom Tomahawk 6 - Davissonとモジュラー戦略の対比

NVIDIAの垂直統合に対して、Broadcomは異なるアプローチを採っています。同社は2026年3月、Tomahawk 6 - Davisson(TH6-Davisson)の早期アクセス顧客への出荷を開始したと公表しました。TH6-Davissonは102.4Tb/sのスイッチング容量を持つEthernet向けCPOスイッチで、TSMC、HPE、Micas Networksなどと共同で開発された製品となります。

Broadcomの戦略の特徴は、特定の光部品メーカーへの大型出資を行わず、複数のサプライヤーと標準化されたモジュラーアーキテクチャで連携する点にあります。Ethernet基盤の優位性を活かし、ハイパースケーラー各社が自社のスイッチプラットフォームに合わせて柔軟に組み合わせやすい構成を志向しています。NVIDIAの垂直統合が「主導権を一社で握る」戦略であるのに対し、Broadcomは「業界標準のレールを敷くことで規模を取る」戦略と整理できます。

ベンダー実務の観点で重要なのは、両社ともにファウンドリ側ではTSMCのCOUPEを採用している点です。CPO量産の物理的な制約――フォトニクス・ウエハの歩留まり、3D積層の熱設計、光ファイバー結合の精度――は、いずれの戦略を採る場合もTSMCの先端パッケージング能力に依存します。供給制約の所在が同じであるため、両社の差別化は実質的に光部品サプライチェーンの組み立て方と顧客側の調達設計に絞られていく構図となります。ハイパースケーラーから見れば、NVIDIA系AIファクトリーで囲い込みを受けるか、Broadcom系のEthernet基盤で複数ベンダー併用の自由度を残すかという選択を、2026〜2027年の調達計画の中で迫られることになります。

ラピダス+LSTC千歳プロジェクトと光電融合の政策設計

日本国内では、ラピダスと技術研究組合 最先端半導体技術センター(LSTC)が、千歳を起点とした光電融合プロジェクトを始動させています。LSTCは2026年4月13日付で、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」に採択されました。プロジェクト期間は2026年度から2030年度までの5年間で、千歳科学技術大学キャンパス内の研究拠点は2028年度に完成予定とされています。

経済産業省は、ポスト5G基金における光電融合技術開発の枠組みのもとで、チップ間通信の光化に関する研究開発を継続的に支援してきました。NEDOによると、2014年から2022年にかけて関連プロジェクトに総額228億円を投じてきた経緯があります。今回のラピダス連携は、これまで研究開発レイヤーに分散していた光電融合の取り組みを、2nm世代のロジック半導体製造拠点に物理的に近接させ、ロジック・パッケージ・光接続を一体で開発できる体制に再編する意味を持っています。

産業構造審議会の半導体WGなどの議論では、「光電融合の研究開発投資は積み上がってきたが、量産メーカーが空白であった」という認識が共有されつつあります。NVIDIAが40億ドルでCoherent・Lumentumを押さえ、TSMCがCOUPEで先端パッケージを握る構図が固まりつつあるなかで、日本がどの工程に「量産能力」を持つのかが、政策議論の焦点に上がってきている局面といえます。今回の千歳プロジェクトは、光トランシーバや光モジュールの組立工程というよりも、ロジックダイとフォトニクスダイのインターポーザ統合や3D実装の研究開発を、将来的な量産につなげる橋渡しの枠組みと位置づけて読み解くのが妥当でしょう。

レイヤー横断で読むCPO――半導体・電力・通信の連動構造

CPOの普及は、半導体パッケージング技術の話題に閉じない広がりを持っています。AIインフラの設計を、半導体・データセンター電力・通信ネットワーク・国際サプライチェーンの4層で同時に変える契機となるためです。

第一に、ファウンドリ側の制約です。TSMCのCOUPEプロセスやSamsungの先端パッケージング能力は、CPOの普及速度を決定づける物理的なボトルネックとなります。フォトニクス・ウエハの歩留まりが想定通りに改善しなければ、いくらNVIDIAやBroadcomが製品計画を前倒しても、量産は計画通りには進まないことになります。

第二に、データセンター電力です。1.6Tb/s帯域における銅線インターコネクトは10pJ/bit以上のエネルギーを消費するとされ、ラック間接続の総電力がサーバー演算電力に匹敵する規模に達しつつあります。CPOによる消費電力削減は、効率化施策というよりも、データセンター立地の電力制約を回避するための前提条件に近づいています。

第三に、通信ネットワークとの接続です。ラック間・データセンター間の光接続が連続的に高密度化することで、IOWN構想に見られる光電融合と、AI学習クラスタの分散配置との関係が制度設計の論点として立ち上がってきます。

第四に、国際サプライチェーンと地政学です。光部品メーカーの寡占構造のもとで、NVIDIAの40億ドル投資のような戦略出資が連鎖すれば、調達自由度の差が国別のAI基盤整備の速度差として現れることになります。

このように、CPOは単独の技術トピックではなく、AIインフラのレイヤーを縦に貫く変数として位置づける必要があります。日本の政策設計においても、半導体・データセンター・通信・国際協調を別個に扱うのではなく、光電融合を共通の接続点としてレイヤー横断で議論する視座が求められる段階に入ってきています。

今後の展望

CPOを取り巻く構図は、2026年から2028年にかけて急速に形成されていくと考えられます。その進行速度を左右する分岐条件は、TSMC COUPEの量産歩留まりがどの程度の速度で改善するか、Coherent・Lumentumを起点とした光部品サプライチェーンがNVIDIA以外の顧客にどれだけ開かれるか、そして、ラピダス・LSTC千歳プロジェクトが2028年度の拠点完成までに具体的な実装技術をどこまで仕上げられるか、の3点に集約されます。

もしファウンドリ側の歩留まりが計画通りに改善し、2027年にNVIDIA Spectrum-X系のCPO製品がハイパースケーラーで広く採用される展開となれば、2028〜2029年にかけてのCPO普及加速が一気に進むでしょう。この場合、光部品の供給能力を持つ企業と、CPO対応のスイッチプラットフォームを早期に手当てしたCSPが、AIファクトリーの設計主導権を握ることになります。逆に、シリコンフォトニクスの歩留まりや3D積層の熱設計が想定以上に難航した場合は、銅線併用の暫定アーキテクチャが2028年以降も残り、IDTechExの普及率予測は下方修正を迫られる可能性があります。

日本企業にとっては、この移行期が参入機会と淘汰圧力の両面を持ちます。化合物半導体のエピタキシャル成長技術、精密光学部品、高密度実装装置、検査装置といった上流の領域では世界水準の競争力を持つ企業が複数存在しており、これらがNVIDIA・Broadcomおよび台湾ファウンドリのサプライチェーンに組み込まれる条件をどう整えるかが鍵となります。228億円の研究開発投資が、量産能力としてどこに着地するのか。2026年後半から2027年にかけての技術提携と調達契約の動向を見据えた判断が求められます。

出典:
- IDTechEx「Co-Packaged Optics (CPO) 2026-2036: Technologies, Market, and Forecasts」
- NVIDIA「Scaling AI Factories with Co-Packaged Optics for Better Power Efficiency」(2026年)
- TrendForce「NVIDIA Compute Architecture Paves the Way for Scale-Up Optical Interconnects」(2026年3月11日)
- 経済産業省 商務情報政策局「ポスト5G基金における光電融合技術開発の現状について」(資料45-4)
- NEDO「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発」採択(2026年4月13日)

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