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システム開発の大変革:「生産性」から「俊敏性」の時代へ

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現代は「不確実性が常態化」した時代と言われています。市場のニーズ、競合の動き、さらには社会情勢まで、あらゆるものが予測できないスピードで変化しています。

このような時代において、企業のシステム開発や運用に対する考え方も、大きな転換点を迎えています。

今回は、システム開発・運用の大きなトレンドである「生産性」重視から「俊敏性」重視へのシフトについて、分かりやすく解説していきます。

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かつての主流:「生産性」を重視したシステム開発

これまでのシステム開発で最も重視されてきたのは「生産性」でした。

「ユーザーから要求されたシステムを、いかに高いコストパフォーマンス(効率的)で開発・運用するか」

これが至上命題でした。このモデルは、主に以下の特徴を持っています。

  • 目的: 生産量の最大化、効率の追求、ムダの排除

  • 体制: 外部のITベンダーへの「外注依存」

  • 手法: 計画者(要件を決める人)と実行者(開発する人)が分離する「テイラー主義」

  • 技術: 「レガシーIT」と呼ばれる、ウォーターフォール開発、オンプレ、人海戦術・・・

かつて「作れば売れる時代」には、大量生産が求められました。テイラー主義はそんな時代のものづくりの考え方で、徹底して無駄を省き、生産量を最大化することを目指しました。ウォーターフォール開発は、そんなテイラー主義の思想に支えられています。

そのため、優秀な計画者が合理性を追求した計画を立てて、それを忠実に実行する実行者が、彼らとは別に存在していました。すなわち、「計画者と実行者の分離」が、このやり方の前提となります。

スライドの「生産性」モデルの図が示すように、これはまさしく「工場のライン生産」のイメージです。初めに全ての計画(要件)をかっちり決め、その通りに順番に(要件定義→設計→コーディング→テスト)モノづくりを進めます。

この方法は、作るべきものが明確に決まっていて、途中で変更がない場合には非常に効率的でした。

現代のトレンド:「俊敏性」を追求するシステム開発

しかし、予測不可能な変化が当たり前になった現代では、旧来のやり方が通用しなくなってきました。数ヶ月や一年かけてシステムを開発している間に、ビジネス環境が変わり、完成した頃にはそのシステムが不要になってしまう、といった事態が起こり得ます。

そこで登場したのが、「俊敏性(アジリティ)」を重視する新しい考え方です。

「ユーザー(ビジネスサイド)と一緒に、ビジネスの成功にコミットする」

これが新しいモデルの目的です。このモデルは、以下の特徴を持っています。

  • 目的: ビジネス価値の最大化、俊敏性の追求、手戻り(ムダな作り直し)の排除

  • 体制: ビジネスと開発が一体化した「内製シフト」

  • 手法: 計画者と実行者が一体化し、自律したチームで動く「アジャイル」

  • 技術: 「モダンIT」と呼ばれる、アジャイル開発・DevOps、クラウド・ネイティブ、自動化・AI駆動開発・・・

不確実性が常態化したいま、テイラー主義では、変化に俊敏に対処できません。そこで「計画者と実行者が一体化」した自律したチームが、状況の変化に即応して、直ちに対処するというアジャイルの思想が求められるようになりました。アジャイル開発とは、この思想を具体化したものです。

スライドの図では、チームが「発見(Discovery)」→「開発(Development)」→「フィードバック&デリバリー」という小さなサイクルを高速で回している様子が描かれています。

まず小さく作ってみて、すぐにユーザーに使ってもらい、フィードバックを得て、また改善する。この「作らない技術(=クラウドなどを活用して素早く環境を用意し、自動化でテストを効率化する)」と「自律したチーム」の組み合わせによって、変化に素早く対応し続ける「俊敏な対応」が可能になります。

まとめ:変化に対応し、価値を最大化するために

スライドに示された2つのモデルは、どちらが絶対的に正しいというものではありません。しかし、現代の不確実なビジネス環境においては、「俊敏性」を重視する後者のアプローチがますます重要になっているのは事実です。

観点 旧来のモデル(生産性重視) 新しいモデル(俊敏性重視)

ゴール

高コスパで要求に応える

ビジネスの成功にコミットする

キーワード

効率、ムダの排除

価値、俊敏性、手戻りの排除

体制

外注依存

内製シフト

開発手法

ウォーターフォール

アジャイル・DevOps

IT基盤

レガシーIT (オンプレ)

モダンIT (クラウド・ネイティブ)

組織

計画者と実行者が分離

計画者と実行者が一体化

このように、システム開発は単なる「モノづくり」から、ビジネスと一体になって「価値を共創」する活動へと進化しています。この大きな変化の波を理解し、乗りこなすことが、これからのビジネス成功の鍵となりそうです。

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