あまりに多すぎるランサムウェア被害「VPNからの侵入」を経営者向け解説。対策はゼロトラストVPN
VPN経由のランサムウェア被害は、「技術の問題ではなく、経営判断の問題」でもあります。
文系の経営者やビジネスパーソンにも理解できるよう、基礎から整理して解説します。
1. VPNとは何か?
■ 定義(専門用語を使わずに解説)
VPNとは、Virtual Private Network(仮想専用線)の略で、
「会社の外から、会社の中のネットワークに安全に入るための"専用の通路"」のことです。
たとえば、社員が出張先や自宅から自社サーバにアクセスするとき、
インターネットは公共の道路のようなもので危険なので、
暗号化されたトンネル(VPN)を掘って、そこを通って安全に入る――それがVPNです。
2. 企業での一般的な利用シーン
| シーン | 具体例 | 補足説明 |
|---|---|---|
| テレワーク | 自宅PC → 社内ファイルサーバ | 社内LANにいるのと同じ状態で作業できる |
| 海外出張 | 現地ホテル → 社内システム(会計、人事) | 国境を越えても安全に社内リソースへ接続 |
| 拠点間接続 | 工場・倉庫 ↔ 本社 | 遠隔地の拠点を一本の社内ネットワークのように扱う |
このように、VPNは「利便性」と「セキュリティ」を両立するための技術でした。
しかし――ここに「重大な盲点」があります。
3. なぜVPNが"攻撃のドア"になるのか?
■ 問題の核心
VPNは「社内ネットワークに入るための正規の入口」だからこそ、
一度破られると、社内全体に入れる"正面玄関"になってしまうのです。
■ 典型的な侵入パターン
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VPN機器の脆弱性(セキュリティホール)を悪用
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例:Fortinet、Palo Alto、Pulse SecureなどのVPN装置の古いバージョンに脆弱性。
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攻撃者はログインなしで内部に侵入できる場合がある。
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VPNのログイン情報(ID・パスワード)を盗む
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多要素認証(MFA)が未設定
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IDとパスワードだけでログインできるため、盗まれれば侵入可能。
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VPNサーバがインターネットに"むき出し"
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「誰でもアクセスできる状態」にあり、24時間スキャンされている。
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■ つまりVPNは...
「利便性のために設置された正面玄関が、セキュリティ上の最大の弱点になっている」
4. 実際の被害事例
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Black Basta(英国Capita社など)
Fortinet製VPNの既知脆弱性(CVE-2018-13379)を悪用して侵入。
結果、年金情報・医療記録流出、被害額80億円規模。 -
LockBit(国内大手製造業など)
海外出張者のVPNアカウント情報が漏洩し、そこからActive Directoryへ侵入。
バックアップごと暗号化され、全工場停止。 -
Qilin(アサヒグループHDなど)
攻撃経路の詳細は非公開だが、VPN・リモート接続経由の初期侵入が強く疑われている。
5. なぜVPNは「古い仕組み」になりつつあるのか?
VPNはもともと「社内と社外を区別できた時代」の発想です。
しかし、クラウド利用・リモートワーク・海外拠点などで、
もはや「社内」という境界は存在しません。
そのため、セキュリティの世界では今、
"境界防御(Perimeter Security)"から"ゼロトラスト(Zero Trust)"へと移行しています。
6. 現代的な解決策:「ゼロトラストVPN」
| 比較項目 | 従来のVPN | ゼロトラストVPN(SASE/SSE型) |
|---|---|---|
| 接続判定 | 社内ネットワークに入れたら"信頼" | 常にユーザー・端末・位置・時間を検証 |
| アクセス範囲 | 社内LAN全体 | 必要最小限(業務アプリ単位) |
| 検知機能 | 侵入後の監視なし | 行動異常をAIでリアルタイム検知 |
| 更新頻度 | 年1〜2回 | クラウドで常時更新 |
代表的な事業者例:
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Zscaler(米国) - ZTNA(ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス)の先駆者。日本の窓口
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Palo Alto Networks Prisma Access - SASE統合プラットフォーム。日本の窓口
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CrowdStrike Falcon ZTA - EDRと統合されたゼロトラストVPN。日本の窓口
7. 経営層が理解すべき「VPNリスクの本質」
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VPNは"便利な社内入口"だが、同時に"攻撃者の入口"でもある
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「閉じたLAN=安全」という発想がすでに時代遅れ
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VPNを刷新する勇気が、次世代セキュリティの第一歩
まとめ:ビジネスリーダーのための要約
| 視点 | 一言で言うと | 経営判断のポイント |
|---|---|---|
| 技術 | VPNは暗号化された社内接続トンネル | 安全だが、一度破られると全社侵入される |
| 経営 | VPN構造は全社停止リスクの根源 | 分散構造+ゼロトラスト設計への移行が急務 |
| 実行 | MFAと脆弱性管理を徹底 | CIO主導で"入口管理"を刷新する |
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