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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

ランサムウェアの損失額に直結する最重要KPI「MTTR」。MTTRを劇的に下げるのがゼロトラスト【ランサムウェア被害に遭わない米国最新DX】

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ランサムウェアを含むサイバーセキュリティ被害では、「障害が発生してから、復旧して通常業務に戻るまでに何日かかるか」という時間が、極めて大きな意味を持ちます。
なぜなら、その間は業務が止まり、止まった日数分の売上がそのまま失われてしまうからです。

米国・英国を中心とする先進企業や政府機関では、この「システムが停止してから復旧するまでの時間」をサイバーセキュリティKPIとして扱っており、
「MTTR(Mean Time To Recovery)」 と呼ばれています。
IT運用では MTTR=Mean Time To Repair という定義もありますが、
サイバー領域では 「復旧までの時間」=Recovery として使われるのが一般的 です。

たとえば、現在のシステムが MTTR=20日 かかっているなら、業務停止は20日間続きます。
これを MTTR=10日 に短縮できれば、1日あたりの損失額 × 10日分 にまで損害を圧縮できます。

つまり、「MTTRを短縮する」こと自体が、経営課題であり、事業継続のKPIになるということです。
経営が MTTR を明確な指標として掲げることで、復旧力を高める投資が、具体的で測定可能な目標に変わります。

MTTRとは何か?

MTTR(復旧平均時間) は、システムやサービスが障害・攻撃を受けてから「正常稼働に戻るまで」にかかる平均時間を表す指標です。

読み方は エムティーティーアール

なぜサイバーセキュリティでMTTRが重要なのか?

ランサムウェア被害では、
「侵入されたかどうか」よりも「止まっていた時間」 が損失額を決めます。

  • 出荷停止

  • 受注処理停止

  • 生産ライン停止

  • 顧客対応・コールセンター業務停止

  • 売上計上が止まる

  • 株価下落

  • 信用失墜

これらの損失は、止まった時間×事業の売上高レート で指数的に膨らみます。

だから各国のサイバー標準では、

「MTTRを短くできる会社は強い」
「MTTRを短縮する投資は、サイバー防衛の核心」

と位置づけられます。

例えば:MTTRがこう違うと損失が激変します

  • MTTR = 72時間(3日) → 損害 200〜600億円

  • MTTR = 7日 → 損害 1,000億円以上

  • MTTR = 14日 → 数千億円規模

  • MTTR = 30日 → 企業存続の危機

※過去の大会社の事案の実際の数字を基に算出した一般的なイメージ。

MTTR を構成する4つの意味(どれもMTTRと呼ぶ)

MTTRには複数の種類がありますが、いずれも「復旧にかかった時間」を示す指標です。

MTTRの種類 意味
Mean Time To Recovery 正常稼働に戻るまでの時間(セキュリティで最重要)
Mean Time To Repair 故障箇所の修理にかかった時間
Mean Time To Respond インシデントへの最初の対応までの時間
Mean Time To Restore システム・データを復元するまでの時間

日本企業のランサムウェア対策で最重要なのは
Recovery(復旧)Respond(初動) です。

ゼロトラストでMTTRが劇的に短縮する理由

ゼロトラスト・アーキテクチャでは:

  • 侵入を前提とした設計

  • 重要資産(Protect Surface)を囲い込む

  • 最小権限(Least Privilege)

  • マイクロセグメント化

  • AIによる自動隔離・自動修復

  • ログの一元管理

  • バックアップの独立構造化

これらによって 被害拡大を止める時間/復旧する時間が半分以下になる ことが多いと考えられます。

米国政府機関では「MTTRを短くできるゼロトラスト」を基準として推奨しています。


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-経営企画室が主導するアメリカ基準のランサムウェア対策-

一般社団法人 企業研究会

【開催にあたって】

アサヒグループやアスクルが被害に遭っているランサムウェアは、犯罪集団の手口が高度化しており、多くの上場企業が潜在ターゲットになっています。従来サイバーセキュリティはCIO/情報システム部門が管掌していましたが、アサヒに見るように全社規模の営業損失になりかねないことから、対策には経営者の意思決定が不可欠になっています。

このセミナーでは経営者の意思決定を支援する経営企画室が主導するアメリカ水準のランサムウェア対策について、ChatGPT 5を活用した情報収集から現行社内システムに堅固なランサムウェア防御策を組み入れるプロジェクト詳細まで、ノウハウを伝授します。

【講師】

インフラコモンズ代表

リサーチャー AI×経営ストラテジスト
今泉大輔 氏
日時 2025年 11月 17日(月) 13:30~16:00  
受講料 1名につき 
会員 38,500円(本体 35,000円)  一般 41,800円(本体 38,000円)
講演者 インフラコモンズ代表 リサーチャー AI×経営ストラテジスト 今泉大輔 氏
対象 経営企画部門、情報システム部門、リスク管理部門、法務部門、総務部門、管理部門の方、経営者の方など
内容 第一章 海外ランサムウェア事案を熟知しているAIを活用した情報収集
 ・主なランサムウェア犯罪集団と手口、被害に遭った主なケース
 ・平均的な身代金、ケースごとの損失額、被害対応のベストプラクティス

第二章 危機発生時に頼りにできる外資系フォレンジック専門会社5社
 ・ランサムウェア事案発生時の典型的な「フォレンジック専門会社の動き」
 ・フォレンジック会社を使えないと何が起こるか?
 ・世界的に定評のある外資系フォレンジック会社5社と日本の窓口

第三章 経営企画部が主導すべきランサムウェア対策の最重要項目5つ
 1.「ゼロトラスト・ネットワーク化」へ米国型DXの導入
 2.フォレンジック即応契約と「72時間以内復旧体制」の常設化
 3.「事業停止コスト」の定量化と"防衛費"の明示化
 4.「AI監視+EDR/XDR」統合監視体制の全社常時運用
 5.「経営サイバーKPI」と演習制度の組み合わせ

第四章 現行社内システムに堅固なランサムウェア防御策を組み入れる
 ・Wave 1(0〜90日)|初動と"止血"フェーズ
  目的:いまあるシステムの「弱点を塞ぎ」「72時間で復旧できる土台」を整える
 ・Wave 2(3〜6ヶ月)|構造改革フェーズ
  目的:VPN依存からの脱却と、ゼロトラストによる"侵入を許しても止まらない構造"の実現
 ・Wave 3(6〜12ヶ月)|定着と経営統合フェーズ
  目的:サイバー防衛を経営KPI・IR・監査に組み込み、"防衛文化"を定着させる
 ・会社規模別の費用レンジ(初年度)例:従業員 5,000名規模:5~12億円
  PMO/体制と期間の目安、経営会議用:"社長決裁を仰ぐ予算提案パッケージ"

第五章 危機発生時に初動を仰ぐことができるAI
 ・緊急時のシナリオに応じた具体的な活用方法
 ・AIを活用したランサムウェア犯罪集団にはAIで立ち向かう

【本セミナーはZoomを利用して開催いたします】


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