世界17市場・18,000人が語る「働く人の本音」 Health on Demand 2025 を手がかりに、福利厚生の未来を考える
働き方がこれほど揺らぐ時代において、福利厚生はどこまで企業の競争力を左右するのか。Mercer が今年発表した「Health on Demand 2025」は、まさにこの問いに真正面から向き合った大規模調査です。世界17市場・約18,000人の従業員の声を集めたデータからは、健康・経済・雇用の不安が複雑に絡み合う"いまの働くリアル"が浮き彫りになります。
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この記事では、調査から見える示唆、日本企業が直面する課題、そして今後の福利厚生戦略のヒントを整理していきます。
1. 調査が示す「いま、働く人々が感じていること」
調査を読むと、世界的に共通する不安がいくつも見えてきます。
・経済的ストレスや生活コストの上昇を「日常的なプレッシャー」として感じる従業員が多数
・医療費の高騰、健康サービスへのアクセス不足に対し、雇用主が提供する福利厚生への依存度が増加
・一律の福利厚生ではニーズに応えられず、よりパーソナライズされたサポートが求められている
働き方や家族構成、健康状態が多様化し続ける中で、従業員は自分の状況に合わせて「選べる福利厚生」を強く求めるようになりつつあります。
2. メンタルヘルスは依然として最重要テーマ
本調査に限らず、近年の多くのグローバル調査で「メンタルヘルス」が経営課題として浮上しています。
・経済不安
・長時間化しがちなハイブリッドワーク
・ケア負担(育児・介護)の増加
こうした複合的なストレスが、パフォーマンスだけでなく、離職率、エンゲージメント、生産性といった企業成果に直結することがデータで明らかになっています。
参考レポート
World Economic Forum:Mental Health in the Workplace
3. 日本企業の現状とギャップ
日本企業は制度としての福利厚生は比較的充実しているものの、次のような課題が指摘されています。
・制度はあるが「使われていない」
・メンタルケアやウェルビーイング施策が点在しており統合的な戦略になっていない
・ライフステージ対応の柔軟性が弱い
・人的資本開示の流れに対し、エビデンスや効果測定が不十分
人的資本経営が求められる中で、福利厚生は「コスト」ではなく「投資」として再定義すべき段階に来ています。
4. これからの福利厚生はどう設計すべきか
Health on Demand 2025 の示唆と、その他の研究知見から見えてくる方向性は明確です。
1. 従業員ニーズをデータで把握する(サーベイや分析)
2. 一律制度から選択型・パーソナライズ型へ移行する
3. メンタルヘルス、フィナンシャルウェルビーイングなど「リスク領域」を優先的に整備
4. HR・総務主導ではなく、経営主導の戦略として福利厚生を再構築する
5. 効果測定(利用率・満足度・生産性・離職率改善)をセットで行う
海外企業の多くは、すでに「Employee Experience(従業員体験)」の一部として福利厚生を再定義しています。
日本企業にとっても、まさに今が転換期と言えます。
5. 福利厚生は「働く安心」を支える社会インフラへ
働く人が健康で、安心して、持続的に力を発揮できる環境。
これは企業の責任であると同時に、社会全体の持続性にも関わるテーマです。
給与や働き方だけでなく、「心身の健康」「生活の安定」「ケアのしやすさ」といった幅広い要素を含めて、福利厚生を統合的に設計できる企業が、これからの労働市場の勝者になります。
Health on Demand の調査は、その未来を考えるための強力なヒントを提供してくれるレポートだと感じています。