2026年に向けたIT変革の本質AI・クラウドは「導入フェーズ」を終え、経営能力が問われる段階へ
2025年は「AIが使えるかどうか」ではなく、「AIを前提に経営や業務を再設計できるか」が問われた一年でした。EnterpriseZineがITベンダー・コンサルティングファーム6社に行ったインタビュー(PwC、アクセンチュア、IBM、Google Cloud、Oracle、Microsoft)は、その転換点を非常に象徴的に捉えています。
https://enterprisezine.jp/article/detail/23157
本稿では、この特集内容を起点に、外部調査やグローバルレポートを補足しながら、2026年以降に企業が直面するIT変革の本質的論点を整理します。
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論点1:AIは「生産性向上ツール」ではなく「経営設計の前提条件」へ
PwCやIBMが共通して指摘していたのは、AI導入の成否はアルゴリズムやモデル性能ではなく、
・業務プロセス
・意思決定構造
・人材の役割設計
にどこまで踏み込めているか、という点です。
この指摘は、マッキンゼーの以下の調査とも整合します。
https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/the-state-of-ai
同レポートでは、生成AIの価値の約60%は「既存業務の部分最適化」ではなく、「業務構造そのものの再設計」によって生まれるとされています。
つまり、AIはIT部門のテーマではなく、経営モデルの再定義そのものです。
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論点2:「AI筋トレ」という概念が示す、日本企業の勝ち筋
IBMやMicrosoftが使っていた「AI筋トレ」という表現は非常に示唆的です。
これは、
・一度AIを導入して終わり
・PoC止まりで現場定着しない
といった失敗を前提に、「継続的にAIを使いこなす組織能力」をどう育てるか、という視点です。
この考え方は、MIT Sloan Management Reviewの研究とも一致します。
https://sloanreview.mit.edu/article/building-the-ai-powered-organization/
MITの研究では、AI成果を出している企業の共通点として、
・技術より先にガバナンスと役割定義を整えている
・現場に「AIを使って意思決定する責任」を持たせている
ことが挙げられています。
これは、日本企業が得意とする「現場改善文化」との相性も良く、2026年以降の日本型IT変革の現実的な勝ち筋だと感じます。
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論点3:クラウドは「移行」ではなく「前提条件」になった
Google Cloud、Oracleが語っていたように、クラウドはもはやDXの選択肢ではなく、AI・データ活用の前提インフラです。
IDCの最新レポートでも、
・AI活用企業の9割以上がクラウドネイティブ基盤を前提にしている
・オンプレミス中心企業はAI投資回収に2〜3倍の時間を要する
とされています。
IDC
"Worldwide AI and Cloud Infrastructure Forecast"
特に日本企業では、「クラウド移行=コスト削減」という誤解が残っていますが、実態は
・スピード
・拡張性
・AI連携
という競争力の問題です。
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論点4:IT変革は「IT部門の仕事」ではなくなった
アクセンチュアやPwCが繰り返し強調していたのは、IT変革が完全に経営テーマに移行したという点です。
これは、World Economic Forumの以下の報告とも一致します。
https://www.weforum.org/publications/
同レポートでは、
・AI・デジタル投資の意思決定主体がCEO・CxOに移行している
・IT人材不足より「意思決定の遅さ」が競争力低下の主要因
と明示されています。
ITはもはや「支援機能」ではなく、事業戦略そのものです。
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2026年に向けたまとめ
EnterpriseZineの6社インタビューと外部調査を総合すると、2026年に企業が問われるのは次の一点に集約されます。
・AIを導入したか
ではなく
・AIを前提に、組織・意思決定・業務を再設計できているか
技術トレンドはほぼ出揃いました。
これから差がつくのは、
・変革を続ける経営の覚悟
・AIを使い続ける組織の筋力
・人とテクノロジーの役割分担設計
です。
AI時代のIT変革は、技術論ではなく、経営能力の差がそのまま結果に表れるフェーズに入ったと言えるでしょう。