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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

中国が世界一のスマートグリッド大国になる理由(上)

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現在構築が進んでいる中国のスマートグリッドはかなり巨大です。投資額で見ると、米国を上回る世界最大のスマートグリッドが形を表すことはほぼ確実です。かつ「グリッド」(送電網)として見ても世界で最先端のものになりそうです。

また、関連の報道などを総合すると、中国ではスマートグリッドをほぼ自前の技術、自国メーカーの製品でまかなおうとしています。すると、世界最大の投資額による世界最大規模のスマートグリッドを自国製品で作り上げた結果として、世界でもっとも競争力のあるスマートグリッド関連製品を他国に輸出できるようになる可能性が出てきます。日本を含め、スマートグリッド製品の他国への輸出を考えている国にとっては、大きな脅威になるかも知れません。

3回程度に分けて、関連状況を見ていきたいと思います。

■中国のスマートグリッドの基盤となる西電東送

どの国でも電力需要はGDPの伸びと同等かそれを上回る勢いで伸びるのが普通です。中国では1978年から2007年に至る30年間にわたって、平均9.8%の成長を続けてきました。それに応じて電力需要も高い伸びを見せてきたわけですが、2000年頃までは供給が需要に追いつかず、大都市や工業団地では計画停電が普通に行われていましたし、突発的な停電も珍しくありませんでした。この電力不足を抜本的に解決するために2000年から取り組まれてきたのが「西電東送」プロジェクトです。一説によると、総投資額は1,000億元(1兆2,400億円)以上だそうです。

中国では西部に豊富な水力の資源があり、また、内モンゴルなどには膨大な石炭資源が眠っています。これを電力に変えて、北京、上海、広東などの大消費地にまで運ぼうというのが西電東送です。そしてこの西電東送によって作られる大規模な送電網が2今後は中国のスマートグリッドの基盤ともなります。

西電東送には北部ルート、中部ルート、南部ルートの3つのルートがあります。北部ルートは、黄河の中上流の水力および内蒙古、山西の火力によって得られた電力を北京、天津、唐山へ送電。中部ルートは、世界最大の三峡ダムと金沙江流域の水力で得られた電力を上海、江蘇、浙江へ送電。南部ルートは、雲南、貴州、広西の境界にある天生橋水力発電所から広東省へ送電します。各ルートの位置関係はこちらのページにある地図をご覧ください。

2000年から建設が始まった西電東送は2010年が完成メドとされていました。資料では確認できませんでしたが、3つのルートともほぼ完成した模様です。ここまでが中国における「スマートグリッドの前史」ということになります。現在ある需要を満たすインフラがようやくできあがったわけです。

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