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3.11とIT(6)震災とクラウド

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震災直後、津波による被害で多くの公共施設が流失、破壊され、住民生活に関わる多くの基本データが失われた。本人性の確認や、被災者の安否や所在の確認が困難となり、医療や介護などでの診療や心身のケア、子どもの教育や各種生活支援の実施や行政手続を進める上で支障が生じた。

宮城県南三陸町の役場は、建物が全壊して庁舎全体が津波により水没。住民関連データを格納したサーバーが流され、電子化された戸籍の原本データが消失した。また、紙で保管していた土地台帳なども津波で流されている。その結果、生活を支える行政手続が困難となるという事態が生じている。宮城県の女川町や岩手県大槌町などの3市町でも住民基本台帳サーバーをはじめとしたハードが破損しデータが消失するなど、被災各地の自治体で、情報システムの破壊や停止などの大きな被害を受けた。

戸籍のデータは、地方法務局で保管していた戸籍副本をベースに復元できたものの、個人情報保護など制度上の障壁もあり復元するまでに相当の時間を要した。紙台帳のデジタル化やデータの安全な保管など、災害時の業務継続や行政機能を早期に回復するための行政情報システムの見直しの必要性が浮き彫りとなった。

震災直後、被災地の自治体など公的機関のWebサイトに全国からアクセスが集中してつながりにくく、被害状況や避難所の情報収集ができないという障害が生じた。クラウド事業者各社は、クラウドによるミラーサイトの構築やクラウドの無償提供を行い、アクセス集中の緩和と円滑な情報提供を支援することで、行政サービスの一部維持や継続をすることができた。

一方、ミラーサイトの利用にあたっては、サイトを運営する自治体などの公共機関の運営主体が、知的財産や個人情報を第三者へ委ねることを懸念し、ホームページにアクセスが集中していても、ミラーサイトの設置を承諾しない事例も報告された。

東日本大震災復興構想会議は2011年6月25日、「第12回東日本大震災復興構想会議」において、復興ビジョン「復興への提言~悲惨のなかの希望~」を菅直人首相に提出。本提言では、ICT(情報通信技術)やクラウドの方向性についても示された。

ICTについては、情報通信基盤の整備とともに、ICTを活用した的確な情報提供や、被災地自治体と地域住民が円滑にコミュニケーションを行える地域コミュニティの再生、そしして、ICT(情報通信技術)の利活用による地域産業の再生・創出に取り組む必要性が明記された。

クラウドにおいては、行政をはじめ、医療、教育等の地域社会を支える分野のデータが震災により滅失したことを踏まえ、公共分野においては、情報の一層のデジタル化を進め、クラウドの導入を強力に推進すべきとしている。

本提言を受け、東日本大震災復興対策本部は2011年7月29日、「東日本大震災からの復興の基本方針」を公表。次世代の発展につながるよう地方公共団体をはじめ幅広い分野へのクラウドサービスの導入推進などICT(情報通信技術)の利活用促進を行うことを明記している。

IT戦略本部の「電子行政に関するタスクフォース」では2011年7月4日、「電子行政に関するタスクフォースの提言」を公表し、事業継続の観点から、必要なデータのバックアップ、クラウド技術の活用等による拠点の移設などの対策を講じる必要があると提言した。

総務省は震災後の2011年7月、「自治体クラウド推進本部有識者懇談会とりまとめ」及び「クラウドサービス導入による効果提案項目(案)」を公表。効果提案項目(案)では、自治体がクラウドサービスの導入を行う際に、サービスの向上、業務改革支援、情報セキュリティやシステム性能向上などの導入効果を検証するなどの参考資料として位置づけている。

懇談会とりまとめでは、クラウド導入にあたってのカスタマイズの制約や相互運用性の確保や住民データのプライバシー確保などの情報セキュリティ対策や法的留意点などの諸課題を整理した。自治体クラウドの全国導入を加速するための取り組みについては、導入効果に係わる検討項目の整理や共同化の計画策定や財政支援などの導入環境の整備についての方向性を示した。

医療分野

震災によって、患者の紙のカルテ情報や院内に設置した電子カルテシステムが津波などにより流出・毀損し、患者情報を紛失してしまった医療機関も多い。少なくとも宮城・岩手県沿岸部で、少なくとも14病院のカルテ情報が流されたという。石巻市立病院では、津波により、電算室に保管していた約4万人分の電子カルテが水没。山形市の病院との提携で電子カルテの相互保存をしていたため復元することができたが、震災後は、各地でカルテの保管方法を見直す動きが進んだ。

震災の避難所での診療は困難を極めた。避難所にかかりつけの医師がいて、被災者の患者のカルテ情報があれば、適正な処置ができるが、震災ではカルテが津波で流されるなどで、避難所に患者ごとの過去の診療記録や投薬情報などがあることは少なかった。避難所では、65歳以上の高齢者が約4割を占めるといわれており患者自身が自分の過去の病歴を正確に把握しているケースは多くはなかった。避難所の診療所で被災地に入った医師が被災者を治療しようとしても、患者の病歴が把握できないため、問診から始まり、必要に応じて検査を実施し禁忌薬やアレルギーを考慮した上で処置が必要となる。患者一人ひとりの診療に時間がかかってしまい、医療サービスに支障をきたした。

被災地では、被災直後は緊急医療が中心であったが、高齢者を中心に糖尿病や高血圧などの慢性疾患への治療も必要となり、適正に処置をするためのカルテ情報が必要となる。診療情報をもとに十分な診療を実施していくためには、複数の機関同士が診療情報をクラウドで医療データを共有し、どこの病院でも患者の病歴を確認し、医療効率を高めて適正に診療を受けられる環境が必要となる。

この場合、クラウドなどを活用し遠隔地にデータを安全に保管することによって、震災などでカルテ情報を失うリスクも軽減できる。緊急搬送などの緊急時にも患者情報にアクセスし、迅速に処置ができるなどのメリットも見込まれている。

教育分野

教育分野においても震災による大きな被害を受けた。(社)全国教科書供給協会の調査によると、被災地で計50万4千冊の教科書が津波などで流された。また、指導要録などの児童・生徒の記録も津波で流され、新学期への対応や避難先の学校に児童・生徒の記録を引きつぐことが困難となるなどの問題が生じた。

震災により、授業に遅れている児童・生徒へのケアも必要となる。教科書が準備できない中、避難所にテレビチューナーや電子黒板やタブレット端末を運び、情報収集の手段とするなど、学校におけるICT環境は災害時においても有効活用されている。特に、震災により子どもたちの心身への負担は大きく、特に学業への遅れなど自分の将来への不安を感じる児童や生徒も多く、児童ごとの学習履歴の管理や、どこでも学習できる環境など、教育の情報化へのニーズも高まった。

 

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