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3.11とIT(2)被災現場から情報を発信する自治体

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地震発生後、被災地の自治体からはツイッターを使い、現地の被災状況が次々と発信された。

震災発生時に被災地の状況を発信した宮城県気仙沼市危機管理課

宮城県気仙沼市危機管理課(@bosai_kesennuma)は地震発生から9分後の2時55分、「宮城県沿岸に大津波警報高台に避難」と、被災地の自治体では、最も早く情報ツイッターから情報を発信。

気仙沼市役所では地震直後に停電となり、残された通信手段は携帯電話のみとなった。危機管理課の担当者の伊東秋広氏はパソコンと携帯電話を使い現場の被災状況の情報の発信を始めた。津波が市役所の庁舎1階にも押し寄せたため、4階の駐車場まで駆け上がり、パソコンと携帯電話をセット。津波の状況を目で確認し、防災無線を聞き、津波の警報や避難を呼びかける情報を発信し続けた。気仙沼市の携帯電話の基地局は地域の高台にあっため、停電中も非常用電源を使い数時間程度の通信ができた。

16分後の3時2分には、「大津波警報発令 高台へ避難」。その後数分おきに「大津波警報発令 高台へ避難」とツイートし続け、住民に避難を呼びかけた。50分過ぎの3時39分には、「市街地まで津波到達 すぐに避難」、「商港、新浜町、中みなと町、内の脇、中央公民館付近、鹿折唐桑駅前からバイパス方面に火災発生中 直ちに避難」、「避難所からは絶対に離れないでください」など、被災現場からは刻々と変化する被災状況と大津波と市内各地の火事により街が壊滅的なっている情報がリアルタイムに届けられた。地震発生直後から22時37分までの約8時間、携帯の基地局の予備電源が切れつながらなくなるまで、約60のツイートが投稿された。

気仙沼市の担当者がツイッターで発信した現場の被災状況は、リツイートにより拡散された。震災翌日の12日午前1時ごろにはNHKにその取り組みが放送された。解説者が「気仙沼市危機管理課がツイッターで情報を発信しています。」と、気仙沼市がツイッターで発信した時間ごとのツイート一覧を見せ、現場の切迫した被災状況が伝えられた。

気仙沼市は、震災後の津波により、湾岸の船舶用燃料タンクが流され、水上に流れでた大量の油が、押し寄せた津波とともに市街地を包み込み、引火によって大規模な火災が発生した。NHKの空からの中継でもその火災模様が放送され、街はまるで火の海となっている状況が伝えられた。気仙沼市の被災現場の状況が全くわからない状況で情報が混乱する中で、気仙沼市危機管理課の担当者が書き込むツイッターからの情報から、気仙沼市の被災状況を知ることができた。

危機管理課の担当者はNHKの取材に対して「住民にはとにかく助かってほしい。この情報を見て助かってほしい。今思いつくのはこれしかない」と述べ、担当者の迅速な判断と住民を助けたいという思いと行動、そして手段としてのネットにつながるツイッターの組み合わせが、現場からの状況をリアルタイムに届けることができた。

ツイッターによる情報発信は、3月12日、13日の二日間は停電などで使えず空白期間があったものの、公式ホームページに変わってツイッターから発信される現場からの被災状況や避難所などの案内は、貴重な情報源となった。

気仙沼市危機管理課では、2010年7月2日に防災情報などの発信を目的にツイッターアカウントを開設し、日頃から津波情報などを中心に災害情報を発信し続けていた。今回の震災で、横浜市など多くの自治体がツイッターアカウントを開設するなど、防災情報や災害発生時の緊急情報としての期待が高まっている。

気仙沼市でおきたソーシャルを活用した人命救助

気仙沼市では、ツイッターからのつながりが、多くの人々の命を救うきっけかとなった。震災発生後、地震と津波を逃れ400人あまりが、気仙沼市の中央公民館の屋上に避難した。避難者の中には、病院のお年寄りや生まれたばかりの幼児もいた。中央公民館は3階建ての鉄筋コンクリートで、津波による水位は2階天井まで達したものの安全を確保できたが、しばらくしてから、船舶用の燃料タンクから水上に流れでた油の引火によって、その炎が公民館にも押し寄せていた。

自閉症の子どもたちが集まる児童福祉施設気仙沼マザーズホームで園長を務める女性は、唯一の通信手段である携帯メールで「公民館にいます。火の海 ダメかも がんばる」と家族に危機的な状況を伝えた。メールを受け取ったイギリスのロンドン在住の長男は、Ustreamから火の海になった気仙沼の街を見て、最悪の事態も覚悟したものの「火に包まれた街が見えた時点であの中に母親がいると思うと、何かできないか」と思い、日本の消防に国際電話をするもののつながらず、ツイッターを活用し、現場の危機的な状況で支援を求める情報をツイートした。

「(拡散願い)障害児童施設の園長である私の母が、その子供たち10数人といっしょに、避難先の宮城県気仙沼市中央公民館の3階にまだ取り残されています。下階や外は津波で浸水し、地上から近寄れない模様。空からの救助が可能であれば、子供達だけでも助けてあげられませんか。」

140文字の中でより正確に簡潔な情報を書きこむために、1時間を要した。このメッセージは、数時間で何百回という多くの人たちにリツイートされ、またたくまに広がった。東京で偶然読んだ男性は、「本当になんとかしなきゃ、行政機関に伝われば」と思い、面識はないが、ツイッターを積極的に活用している東京都副知事の猪瀬直樹氏(@inosenaoki)にツイッター経由で情報を送った。

猪瀬副知事は、詳細な情報が書き込まれていたため事実であると判断し、東京消防庁の伊藤克己防災部長に「大至急副知事室に来てくれ」と電話。9階の防災センターから6階の副知事室まで急いで降りてきた伊藤氏に対し、猪瀬氏はツイッターの情報の内容を印刷して手渡した。伊藤氏は至急対応を進め、夜明けには東京消防庁のヘリコプター送り出し、障害施設の子どもたちを優先的に救助することが決まった。

翌日朝の気仙沼市には、東京消防庁のヘリコプターが公民館に到着。消防士は「児童施設の施設長さんいらっしゃいますか!子どもたちがいるとのことで助けにきました」と呼びかけ避難を開始した。避難してからおよそ18時間後、容態が悪化したお年寄りや子どもから順番に救助がはじまった。

猪瀬知事は12日の午後5時12分、ツイッターで「朗報! 東京消防のヘリが気仙沼施設の障害児9名全員を救助しました。」と書き込んだ。そして、400名の避難者は、二日間かけて全員が無事救助された。

家族への助けを求める一通のメールが、日本とイギリスの1万キロの距離を超え、家族からツイッターにより情報が拡散され、東京都の副知事に伝えられて東京消防庁が救助するまで、人それぞれの思いが込められた情報のバケツリレーにより、多くの命が助けられた。

今回の救助後、東京消防庁は、猪瀬副知事のツイートを随時チェックし、東京消防庁と15万のフォロワーを抱える猪瀬氏との連携により、福島第一原発へ東京消防のハイパーレスキュー隊の派遣をはじめ、様々な取り組みがツイッターを通じて伝えられた。

ツイッターなどのソーシャルメディアは気仙沼の事例のように、災害時において被災地における人命救助や安否確認としても力を発揮した。地震発生後は、なかなか電話がつながりにくい状況が続き、家族の安否確認をいち早くできたのは、ツイッターなどインターネットを使ったサービスが多かった。ソーシャルメディアの場合は、自らがツイートするといったように情報発信することで、自分自身が無事であることを伝えることができる。一人ひとりと連絡をとりあわなくても、心配している相手に対しても無事であることを伝えることができた。実際に今回の震災をきっかけに、安否確認ツールとしてソーシャルメディアを始める人も増えている。これまでの災害では、テレビや新聞、電話などで安否確認をすることが一般的であったが、ソーシャルメディアが安否確認においても大きな役割を担うようになっている。

県知事との情報連携など複数のソーシャルメディアを活用した岩手県

岩手県広報広聴課(@pref_iwate)は地震発生から17分後の3時3分、「県内で大きな地震が発生しました。津波警報(大津波)が出ていますので、沿岸部の方は注意してください。」とツイート。庁内ではネットワークがつながらず、サーバーもダウンしている状況も書き込まれた。3時間後に「現在、災害対策本部会議を行っています。追加情報が入りましたらお知らせします。」と災害対策本部で対応が進められている状況が伝えられた。

岩手県知事の達増拓也氏(@tassotakuya)は、3月11日の17時40分、「地震発生直後に岩手県災害対策本部が設置されました。午後6時に次の本部員会議が開かれ、状況把握の後、知事の記者会見を行う予定です。極めて大きな災害ですが、皆で力を合わせ、少しでも被害を少なくしていきましょう。」と呼びかけ、その後も、停電状況、陸上自衛隊や消防隊の救助、緊急支援物資の搬送や通行規制などの情報を発信した。岩手県広報広聴課では、岩手県知事の達増拓也氏とツイッター上でも連携を密にし、首長の迅速な判断のもと対応が進められていた。

達増拓也知事は3月13日午前9時、ツイッターで、「見たり書いたりできる機会が取れないことも多いのですが、県の広報広聴担当が私宛のツイッターを見て、災害対策関係の情報は被害対策本部に伝えるようにしていますので、皆さんよろしくお願いします。」と書き込んだ。被災地では、電話やメールがつながりにくい状況の中で、ツイッターを活用し、首長と災害対策本部との間で指示と情報共有も進められていた。

岩手県の広聴広報課の担当者は産経新聞の取材に対して「手軽に使われているツイッターではホームページより広範囲に情報を伝えられる。口コミで被災者に届けばいい」と話し、ツイッターによる情報の伝播力が被災地まで届くこと願い、情報発信を続けていた。

さらに、岩手県広報広聴課では、ツイッターだけでなくフェイスブックページも開設しており、被災状況、避難所、鉄道の運行状況などの情報を発信するなど、ツイッターよりも詳細な情報が発信されていた。フェイスブック上では、被災地を応援するメッセージや、避難所の詳細な情報などを求める声、被災地の関係者からの安否確認の声など、多くのコメントが書き込まれた。県が発信する被害状況などをボランティアが自発的に英語や韓国などに翻訳した書き込みも見られた。フェイスブックの場合は、ツイッターの140文字のように文字数が限定されないため、より詳細な被災地からの情報の発信されていた。フェイスブックの場合は、原則実名で登録しているため、デマ情報などはなくユーザーからの生の声や情報共有などから被災地の状況を正しく可視化することができた。 

岩手県は、ツイッターでは被災地からの被害情報などをクチコミで拡散。そして、フェイスブックではより詳細な情報が書き込まれ、実名ユーザーによる様々な情報の書き込みなどにより、被災地のより詳細でリアルな情報を確認することができた。さらには、ツイッターの伝播力とフェイスブックの状況の可視化が相乗効果を生み出し、首長のツイッターとの連携も加わり、より多くの情報が被災地及び全国に届けられた。

岩手県は震災前からソーシャルメディアの活用において力をいれていた。2010年2月1日に達増拓也知事がツイッターアカウントを開設し、「インターネット知事室」とリンクさせ、県の食や観光などに関する情報を発信。2010年4月16日には広報広聴課がツイッターアカウントを開設、2011年にはフェイスブックを開設している。岩手県はある調査で知名度などが低いという結果が出ており、ソーシャルメディアを通じて地域の食や観光の案内など地域ブランドの向上などに活用していた。こういった平常時の活用が、知事との連携や的確な情報発信など、震災にも力を発揮できたといえる。

液状化現象などの対応にソーシャルメディアを活用した千葉県浦安市

千葉県浦安市(@urayasu_koho)は、震災発生13分後の2時59分、「ただ今、宮城県北部で震度7の地震がありました。浦安市でも震度5弱となっています。千葉県内では津波警報、注意報が出ていますので海岸沿いには近づかないでください。また、交通機関などへの影響も懸念されますので、今後、最新の情報にご注意ください。」とツイート。その後対策本部の設置や避難所などが案内された。

浦安市では、震災により道路などが激しく波打つなどの液状化現象がおきていた。浦安市は、震災翌日の3月12日、「現在、市内のいたるところで液状化と思われる現象が起こっており、道路上に地中から噴出した水混じりの土砂がたい積しています。道路は、舗装面やマンホールなどの隆起や、縁石の倒壊があり、危険な状況ですので、通行の際は十分ご注意ください。」と注意を呼びかけた。

被害を受けたライフラインの中でも下水道が大きな被害を受け、最大約3万3千世帯の下水道が不通となった。浦安市では、ツイッターなどを通じて液状化による断水状況や給水所の案内を発信した。「飲料水300トンを積んだ海上自衛隊による水の運搬船がまもなく到着する見込みです。今後、順次、市内の給水所へ運搬します。」と、海上自衛隊の水の運搬船による大規模な給水準備が進められていることが伝えられた。

浦安市では、液状化への対応により様々な情報が発信されており4月10日、「市では、災害情報をホームページ、重要なお知らせメールサービス、Twitterなどでお知らせしています。インターネットを使えない環境で、情報を入手できない方が近所にいましたら情報を伝えていただきたいと思います。災害時は地域による助け合いも大変重要です。ご理解ご協力をお願いします。」と、積極的にホームページやメルマガ、そしてツイッターで情報発信をし、その情報を受け取った人たちによる地域への情報の伝達と助け合い呼びかけた。

浦安市のように、液状化現象により刻々と状況が変化し、水道の復旧情報などの生活支援の情報が必要となる中、ツイッターはリアルタイムに情報を発信することができるため、市民に迅速に適切な情報を届けることができた。また、ツイッターを読んだ住民がクチコミで他の市民に連絡するケースも見られ、情報を正しく拡散させている。

 

3.11とIT(1)ソーシャルメディアのちから 2014.3.13

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