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電子書籍時代に向けての出版戦略

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電子書籍に関するニュースが連日賑わいを見せています。政府の電子書籍に関する懇談会や出版社31社による「電子書籍出版社協会」などでの電子書籍の著作権やフォーマットのあり方などについての議論も始まっています。

出版社が懸念しているのは、著作者と配信会社が直接契約をする「中抜き」です。実際に、電子書籍出版社協会の設立総会の一問一答で、野間代表理事は以下のようにコメントしています。

出版社には編集、販売、宣伝機能がある。そういった価値を著者に評価してもらい、電子のビジネスモデルを提供したい。価値を認めてもらえない方には中抜きされると思う。

レコード会社や放送局の場合は、「著作隣接権」という権利があり、ネットでの配信や対価を請求することができますが、出版社にはそういった権利はなく、出版社と著作者との交渉で決めていくのが一般的です。

一方、「アゴラブックス」のように電子書籍専門の会社も立ち上がり、書き下ろし書籍を新刊として販売、出版社と協力して既刊書籍を「電子文庫」として販売、インターネットで著者を公募し、審査した上で電子書籍として販売する「ダイレクト出版」といった形で、4月より販売開始です(関連記事)。

また、iPadの電子書籍の利用が注目されていますが、iBookstoreの利用にあたっては、これまで大手出版社の動向ばかりが注目されていましたが、中小出版社や個人出版、フリーの出版プラットフォームまで、幅広い媒体をカバーしつつある動きが出てきています(関連記事)。

こういった電子書籍市場の動きは、これまで出版経験のない人にとっても垣根は下がっていくことでしょう。アイデア次第で、電子出版へのチャンスは広がります。もちろん、電子書籍の配信事業者にとっても利益を出していかなければなりませんので、著名な著者の奪い合いは激しさを増すことになるでしょう。

オルタナブロガーの永井さんは、個人出版、商業出版、そして無償ダウンロードなど、ビジネスパーソンとして様々な仕掛けをされています。ビジネスパーソンの出版戦略というのを真剣に考えられている方です。

電子書籍時代になれば、個人出版での印刷物は最小限にして費用を押さえ、電子版で多くの方に読んでもらうといったような出版ポートフォリオの設計をしていくこともポイントとなります。本の出版というのは、ジャーナリストなどのごく限られた人というイメージが強いのですが、電子書籍の普及によって、近い将来ビジネスパーソンにも広がりを見せていく可能性もあるでしょう。履歴書や名刺には、著書の掲載が当たり前のようになるかもしれません。

ビジネスパーソンとして、本を書くことを一つの目標としているのであれば、電子書籍の動向をよく見極め、電子書籍時代に向けた出版戦略を中長期的に考えていくことが重要となっていくのかもしれません。

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