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ネットコミュニティと政策決定プロセス

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週刊エコノミスト(2010.3.23)に慶応大学の國領二郎先生の「ネットコミュニティが変える政策決定過程」という記事があり、大変興味深く読ませていただきました。

國領先生はこれまで、政府の様々な有識者会議で委員をされているだけに、政策決定プロセスにおいてソーシャルメディアの存在感を大きくとりあげているところは、大変注目されます。

印象に残った内容を少しご紹介したいと思います。

情報が権力だとすると、情報の拡散は権力の拡散を意味する。この影響をもろに受けたのが「霞が関」(中央省庁)であると言っていいだろう。かつては圧倒的な情報優位を背景に、主導権を掌握し、集めた優秀な人材で情報処理をすることで、この国の舵取りをしてきた。

そして、ツイッターに代表されるソーシャルメディアの台頭によって、   

これまでなら、役所が審議会などで集約して政治家にあげていた意見を、役所を経由せずに直接政治家に届ける流れをつくっている。共感を集めた意見に反応した大臣がトップダウンで指示を出すようなこともありうる。このような流れをネットコミュニティによる政策立案への参加という表現でとらえることができるだろう。

実際に原口総務大臣は、ツイッター で積極的にメッセージを発信し、ユーザからの声に耳を傾けています。おそらく、政策にも一部反映されているのかもしれません。先日のブログでもご紹介させていただいましたが、私自身も一度原口大臣と情報通信政策についてやりとりをさせていただきました。私自身政治家がとても身近に感じた瞬間でした。鳩山首相もツイッターを今年の正月から始めており、フォロワー数は40万を越えています。

各省庁でも国民からの意見を広く募集する施策を展開しています。

経済産業省は、「アイデアボックス」を2010年2月23日から3月15日までの期間開設し、IT政策に関する意見を国民から募集しました。3月15日時点で、登録ユーザ数は3799、アイデア数は936、そしてコメント数は5974となっています。ツイッターでは、ハッシュタグ #openmeti を使い、引き続き政策に関する意見がつぶやかれています。

総務省は、「総務省のクラウド研究会、ツイッターで“パブコメ”募集」をしているという記事が紹介されています。ハッシュタグ #scloud を使っています。記事には、

総務省のスマート・クラウド研究会が、初の試みとしてミニブログ「Twitter(ツイッター)」を使い“パブリックコメント”を収集している。2月10日に日本のクラウドコンピューティング戦略についての中間とりまとめ案を公開し、3月9日までメールや郵送などでパブリックコメントを受け付けているが、これとは別のルートとしてTwitterを活用する。

と書かれています。公式にパブリックコメントを募集しているわけではありませんが、研究会の報告にて一部紹介される模様です。私自身も、スマート・クラウド戦略に関するブログを8回に分けて書かせていただき、#scloud にもつぶやいてみました(関連記事)。

総務省が、2月10日に発表した「スマート・クラウド戦略」の中間報告では、『国民に開かれた「オープンガバメント」の推進』という文言も書かれており、ソーシャルメディアを活用して国民の声を募集するという流れはさらに広がりを見せることになるでしょう。

参考に米国の事例を紹介しましょう。オバマ政権は開かれた政府(オープンガバメント)を目指し、国民の意見を積極的に取り入れていくことを目標とし、2009年5月21日には、「オーブンガバメントイニシアティブ(Federal Cloud Computhing Initiative)」を発表しています。米国のオープンガバメントには以下の3原則があります。

  • Transparancy(透明性 ・・政府は、国民に対する責任を果たすために、情報をオープンにし、提供しなければならない
  • Participation(国民参加・・政府は、知見を広く国民に求め国民の対話を行い、利害関係者グループ外の人々に政策立案過程への参加を促さなければならない
  • Collaboration(官民連携 ・・組織の枠を超えて政府間および官民連携し、イノベーションを促進しなければならない

國領先生の記事でタイトル「ネットコミュニティが変える政策決定過程」を補足する文言に、

ネットによる政策決定過程への参加の広がりは、情報と権力が「霞が関」から個人に拡散し始めたことを意味している。

と書かれています。

ツイッターに代表されるソーシャルメディアによるネットコミュニティがこの先、そこまで政策決定過程に反映されるのか、これからの政府の政策の動向が注目されるところです。

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