オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

スマート・クラウド戦略(7) クラウド技術標準化

»

総務省の「スマート・クラウド研究会中間取りまとめ(案) 」の中で、クラウド技術標準化についても触れられています。

利用者の視点にたち、ベンダロックインを排除する観点から、クラウド技術の標準化等を進めることが必要であるとしています。過度な標準化ではなく、利用者の視点からみて必要最小限の標準化等について、国際的な標準化団体等へインプットし、グローバルな視点で標準化を進めていく必要がある点があげられています。

SLAのあり方やセキュリティ・プライバシーの確保のあり方等の標準化等に優先順位を置きつつ、相互運用性の確保等についも、国際標準化団体の活動に貢献していくことが求められることをあげています。

SLAの在り方や、サービス品質やプライバシー確保の在り方、相互運用性の確保、について個々に標準化の検討が必要であるとしています。以下項目をあげてみたいと思います。

SLAの在り方

  • 各クラウドサービスのQoS(Quality of Service)やセキュリティレベルに関するレイティング等の共通的・客観的な基準
  • データセンタの稼働率だけではなく、複数のクラウド間を接続するネットワークを含むエンドエンドベースのQoSを考慮したSLA基準
  • データセンタのパフォーマンス、データバックアップ・リストア、障害回復時間、障害通知時間等に関するSLA基準

サービス品質やプライバシー確保の在り方

  • 一つのクラウドの中に複数の顧客データが蓄積されるマルチテナント環境(データ処理プロセスのマルチテナント化又はデータ保存のマルチテナント化)において、各顧客のデータ処理が明確に分離されたり、それぞれの保存されたデータ群間で相互参照ができないようなセキュリティ環境の確保の在り方 
  • 特定のクラウドサービスに障害が発生した場合に、別のクラウドサービスにデータや処理を移管するディザスターリカバリ確保の在り方
  • 利用者から開示請求があった場合、クラウドサービス事業者がセキュリティポリシーを開示する責任を負う制度の在り方

相互運用性の確保

  • 異なるクラウド間で連携して一つのジョブを処理する際、各リソースを安全かつ動的に配分する分散処理の在り方(個々のプログラミングレベルでの分散処理にとどまることなく、システム・サービスレベルでの分散・協調機能の実装による全体最適の実現)
  • 異なるクラウド間の連携を容易にするためのAPI等のインターフェースの共通化の在り方
  • 異なるクラウド間のデータフォーマットやデータ処理プロセスの共通化の在り方
  • データコードの共通化など、異なるクラウド間で利用者がデータを持ち運ぶことができるデータ・ポータビリティの実現方策(例えば、データ、プログラム、仮想マシン情報等をオープンな書式でエキスポートできる機能の実装等)
  • 複数のクラウドを同時に利用する場合の各クラウドサービス事業者間の責任分界点の在り方

相互運用性については、認証ポリシーや識別IDフォーマットなど、ID管理システム間の連携を実現するための方策についての検討が必要であるとしています。IDについては、Open ID、SAML等については関連フォーラムと連携しつつ、「認証基盤連携フォーラム」との連携を図っていくことが必要であるとしています。

海外での標準化の取り組み

ここで、海外での標準化の取り組みを参照してみましょう。

image

image

image

総務省の別紙資料だけでも11の標準化の取り組みが紹介されています。そのため、日本では、特定の国際標準化団体を対象として貢献するのではなく、デファクトを含む国際標準化活動に貢献していく体制整備が必要であるとしています。

標準化の活動については、日本では「グローバル基盤連携技術フォーラム(GICTF)」等で取り組んでいます。GICTFの設立背景の中には、主な活動内容や目標が掲載されており、標準化に関する取り組みとしては、以下の3つがあげられています。 

  • クラウドシステム利用技術等の開発・標準化の推進
  • クラウドシステム間連携を実現する標準インタフェースの提案
  • 欧米の関連フォーラムとのリエゾン、関連研究開発チームとの交流

本報告書の中では、過度の標準化は技術革新を妨げるとし、最低限標準化が求められる部分を明確にし、「強調と競争」を旨とする市場環境を実現する方向で検討することが適当であるとしています。

国際市場の中で、日本のクラウド技術がどの程度存在感を示していけるのか、今後の取り組みが注目されるところです。

Comment(0)