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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

世界最大級のロボット見本市 ドイツautomatica 2025に見るNVIDIAの圧倒的存在感

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automatica 2025に見るNVIDIAの存在感

〜Isaac GR00T N1.5からAIクラウド、パートナー企業の最新事例まで〜

2025年6月にドイツ・ミュンヘンで開催された世界最大級のロボティクス見本市「automatica 2025」では、NVIDIAが産業用ロボティクスの知能化に向けた最新の技術群を披露しました。展示は自社ブースだけにとどまらず、多くのパートナー企業のブースでもNVIDIAのプラットフォームが中核を担い、その存在感は会場全体に及んでいました。

1. Isaac GR00T N1.5 - ヒューマノイド時代を見据えた基盤AIモデル

NVIDIAが今回初披露した「Isaac GR00T N1.5」は、ヒューマノイドや複雑なマニピュレーションを伴うロボットの知能強化を目的とした基盤モデルです。
従来のIsaac SimOmniverse上でのトレーニング環境に加え、自然言語指示や視覚入力を統合し、ロボットが未知の作業を柔軟に学習・実行できる設計になっています。

GR00T N1.5の特徴は以下の通りです。

  • 自然言語+視覚情報の統合理解

  • Sim2Real(シミュレーションから現実環境へのスムーズな移行)性能向上

  • 複数ロボット間の知識共有

ヒューマノイドロボット開発を進めるメーカーにとって、従来のタスク特化型AIから、より汎用的な知能への移行を促す技術的土台となります。

For further reading:

GR00T N1.5 - An Improved Open Foundation Model for Generalist Humanoid Robots

Accelerate Generalist Humanoid Robot Development with NVIDIA Isaac GR00T N1

2. 欧州初の産業向けAIクラウド基盤

GR00Tと並んで注目されたのが、ヨーロッパ初となる産業用AIクラウド基盤(10,000 GPU規模)の発表です。
このクラウドは、ロボットのシミュレーション・トレーニング、AIモデルの共同開発、産業現場への展開までを一気通貫で支援します。

これにより、企業は自社内に大規模GPUクラスターを持たなくても、高精度なシミュレーションや生成AIによるロボット制御モデルの作成が可能になります。特に中小規模メーカーや研究機関にとって、開発参入障壁を大幅に引き下げることが期待されます。

For further reading:

NVIDIA Builds World's First Industrial AI Cloud to Advance European Manufacturing

Europe Builds AI Infrastructure With NVIDIA to Fuel Region's Next Industrial Transformation

3. Agile Robots(Franka Robotics)- デュアルアーム × AI認識

NVIDIAのAIプラットフォームを活用した注目展示の一つが、Agile Robots(傘下のFranka Roboticsを含む)によるデュアルアーム・ロボットシステムです。
特筆すべきは、深度センサを用いず単一カメラで物体を認識・把持する技術。
NVIDIAの汎用AIモデルと統合され、部品の形状や配置を瞬時に認識し、ピッキングや組立を高精度に行います。

これにより、カメラ・センサ類の構成を簡素化しながらも、作業の自律性と適応力を確保できるため、現場導入コスト削減と柔軟性向上を同時に実現します。

For further reading:

European Robot Makers Adopt NVIDIA Isaac, Omniverse and Halos to Develop Safe, Physical AI-Driven Robot Fleets

4. 他社ブースに見るNVIDIA技術の広がり

automatica 2025では、NVIDIA技術を活用した展示が数多く見られました。代表的なものを挙げると:

  • NEURA Robotics「4NE1」
    NVIDIAのIsaacプラットフォーム上で動作する制御・認識システムを搭載。サービス・産業兼用のヒューマノイドとして高い汎用性を披露。

  • RealMan Intelligent Technology
    軽量ロボットアームECOシリーズにNVIDIA Jetson Orinを組み込み、リアルタイムAIビジョンによる高精度作業を実現。

これらは、NVIDIAが単なる「部品サプライヤー」ではなく、ロボティクス業界全体のAI基盤として浸透していることを示しています。

For further reading:

NEURA Robotics Launches Technological Revolution

4NE1 - Your Next Gen Humanoid Teammate

Automatica 2025: NEURA Robotics unveils 3rd generation 4NE1 humanoid

RealMan Robotics Showcases AI-Driven, Ultra-Lightweight Robotics at Automatica 2025

RealMan Showcases Embodied Robotics at Automate 2025

Ultra-lightweight humanoid robot for innovative smart automation

5. 日本企業への示唆

日本のロボティクス関係者にとって、automatica 2025のNVIDIA関連展示は以下のような示唆を与えます。

  1. ヒューマノイド研究の加速
    GR00T N1.5は、タスク固有のAIから汎用的ロボット知能への移行を後押しする。

  2. クラウド活用による開発効率化
    大規模GPUインフラの外部利用で、試作・検証サイクルを短縮可能。

  3. センサ構成の簡素化
    Agile Robotsの事例に見られるように、シンプルな構成で高度な認識精度を実現できる方向性。

  4. エコシステム型の技術採用
    NVIDIAのプラットフォームは多様な企業に採用され、互換性のある開発環境が整備されつつある。

まとめ

automatica 2025では、NVIDIAは単なるハードウェア提供に留まらず、AIクラウド、基盤モデル、パートナー企業との協業を通じて、ロボティクスの「知能化」を業界全体で推進している姿が際立ちました。
GR00T N1.5の発表やAgile Robotsの実演は、その方向性を象徴するものであり、日本のメーカーなどロボティクス関係者にとっても技術戦略を見直す契機となるでしょう。

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