[ニュースの背景] 丸紅が洋上風力最大手デンマーク・ドンエナジーに出資する理由
本日の日経1面で、丸紅が、デンマーク風力発電大手ドン・エナジー(Dong Energy)が運営する英国の洋上風力発電所ガンフリート・サンズ(Gunfleet Sands)の権益の49.9%を取得すると報じていました。
デンマークは元々風力発電に熱心な国で、2008年の数字で国内総発電量の18.9%を風力から得ており、同国全体の発電容量で見ても24.1%が風力となっています。2009年の数字で風力の発電容量は3,482MW、標準的な原発で3.5基分です。
風力発電機製造はデンマークの有力な産業分野に育っており、生産の9割が輸出されています。最大手メーカー・ヴェスタス(Vestas)は世界市場で15%前後のシェアを持っています。同社は今年半ばには7.0MWもの発電容量を持つ最大級の洋上風力発電機V164を発表。風車の直径は164mもあるそうです。こちらの写真を見るとすごい迫力です。
風力発電所運営でも専門企業が育っており、その最有力企業がドン・エナジー。
同社がデンマークで運営している風力発電所のリストが以下。
●稼働中
Avedøre Onshore Wind Farm (7.2 MW)
Frederikshavn Offshore Wind Farm (10 MW)
Horns Rev Offshore Wind Farm (64 MW)
Horns Rev 2 Offshore Wind Farm (209 MW)
Middelgrunden Offshore Wind Farm (20 MW);
Nysted Offshore Wind Farm (132 MW)
Tunø Knob Offshore Wind Farm (5 MW)
Vindeby Offshore Wind Farm (5 MW)
●建設中
Anholt Offshore Wind Farm (400 MW)
風力発電に注力する英国において同社が運営する風力発電所のリストが以下。
●稼働中
Barrow Offshore Wind Farm (45 MW)
Burbo Offshore Wind Farm (90 MW)
Gunfleet Sands 1 Offshore Wind Farm (108 MW)
Gunfleet Sands 2 Offshore Wind Farm (65 MW)
Walney 1 Offshore Wind Farm (184 MW)
●建設中
London Array Offshore Wind Farm (315 MW)
Walney 2 Offshore Wind Farm (184 MW)
目を引くのは、100MWを超える大きな容量を持った洋上風力発電所が稼働中で4カ所あり、建設中のものには315MWおよび400MWという超ど級とでも言うべき発電所が控えているということです。
今年2月に「洋上風力発電が活発かしている欧州」という投稿を上げましたが、そこでは、2010年時点で欧州の洋上風力発電は総容量2,964MW。現在建設中の洋上風力発電は総容量3,000MWと記しました(European Wind Energy Associationによる)。そうした巨大な容量の1/10の規模を持つ発電所が準備されているわけですね。
こうした陸上・洋上の風力発電が活発化しているのは、各国において風力が生んだ電力を固定価格で買い取る固定価格買取制度(フィードインタリフ)が発達していることと、それを前提にした発電所建設のための数百億円〜数千億円のプロジェクトファイナンスが成立する事業環境があるからだと思われます。フィードインタリフとプロジェクトファイナンスのいずれが欠けても、大規模な風力発電所は成立しません。
日本で今後このような大規模風力発電所(洋上含む)が活発化するかどうかは、ひとえに固定価格買取制度で設定される価格と、それが維持される年数で決まります。投資回収が可能で、投資家に応分のリターンが残る、IRRで言えば10〜15%程度が見込めるような固定価格および固定価格買取年数が設定されない限り、大規模風力は出現しないでしょう。
丸紅がデンマークの風力発電大手が英国で運営する洋上風力発電に出資する理由としては、以下が考えられます。
・日本で将来活発化する可能性のある大規模洋上風力発電所の運営ノウハウを得る。
・日本以外でも大規模洋上風力発電所の建設は今後活発化することが予想されることから、将来において、独自に建設・運営する発電所のためのノウハウを得る。
・洋上風力発電所運営参画に伴って動く風力発電機およびメンテナンスの販売ビジネスのノウハウを得る。
丸紅は海外での発電事業に注力していて、総合商社の中ではもっとも多い発電容量を持っています。参画している発電所の総発電容量26,000MW。出資持ち分を勘案した発電容量は7,400MWと非常に大きいです。今後は風力や地熱の比率を増やしていくのではないかと思われます。
世界的に見れば、陸上・洋上の風力発電を火力に次ぐ重要な位置づけとして注力する国はデンマーク以外に英国、ドイツなど複数あり、他の国々にもその傾向は広がる可能性があります。
日本では、電力会社間の系統連系が独自の構造を持っているため、風力発電が5%程度までしか接続できない制約がありますが、そうした制約が取り払われるなら、風力発電が再生可能エネルギー(水力を除く)の主流になる可能性は十分にあります。