カザフスタンの高速鉄道に進出する中国、国内高速鉄道網をASEANにも延伸
インフラ外交という目線で見ると、中国の動きは非常に目立ちます。中国という国があたかも巨大な総合商社として機能しているのではないかと思えるほどです。
本日の日経で、カザフスタンのナザルバエフ大統領が中国を訪問し、両国が原子力発電、再生可能エネルギー、高速鉄道などの分野で連携を深めることに合意したと報じられていました。インフラ投資ジャーナルとしては、特に高速鉄道が気になります。
高速鉄道計画について多少詳しく報じているのはフィナンシャルタイムズのサイト内にある以下のブログ記事(北京駐在の同紙記者によるもの)。
China’s high-speed rail diplomacy
・カザフスタンの首都アスタナ(人口60万)と同国最大の都市(人口122万)アルマトイとの間1,000kmを結ぶ区間を2015年までに完工。
・これまで2都市間は夜行列車で1泊分の時間がかかっていたが、高速鉄道により4時間に短縮。航空機の運行が頻繁に停止する冬期には特にメリットを発揮。
当然のことながらこの高速鉄道には中国の高速鉄道車両が使われることになります。車両製造は中国南車、鉄道建設は鉄建(鉄道建設最大手。海外でも積極展開)が行うことになるのでしょうか。
中国はすでにラオスを経由してタイに至る高速鉄道の建設を始めようとしています。
中国とタイ・ラオスを結ぶ高速鉄道が来年着工へ
詳細はYoutubeにアップされていたラオス国営放送のテレビニュースの英訳解説にありました。以下がそのあらまし。
・2011年4月にラオス・中国国境から首都ビエンチャンまでの421kmの区間を着工。
・区間内には計190kmのトンネル、90kmの橋を建設する。
・旅客列車の速度は時速200km、貨物列車の速度は時速120km。
・ビエンチャン以外にBoten, Oudomxay, Luang Prabang, Vangviengの主要駅を設置。
・ラオス国内で5万人の雇用が見込まれる。エンジニアは中国で研修を受ける。
・この高速鉄道は中国雲南省(昆明)を起点にラオス、タイを抜けてシンガポールに達する「ASEAN・中国レールリンク」の一部を成す。
上の資料では「ASEAN・中国レールリンク」(Asean-China rail link)なる計画が始動していることがわかります。また、「貨物」とあることから、物流インフラとしての性格も持つわけですね。
以下のロイターの記事では、ASEAN・中国レールリンクが「ASEAN・中国自由貿易地区」の計画とも密接に関係していることが伝えられています。
Laos says railway to China finished by 2014
一方、この路線とは別に、ミャンマーと中国国内の高速鉄道網を結ぶ工事も始まっています。こちらは雲南省昆明とミャンマー・ヤンゴンとを結ぶ路線です。
ミャンマー行き高速鉄道着工、カンボジア、ラオスにも—中国
High-speed rail between Yunnan and Myanmar on agenda
Work on high-speed rail between China, Myanmar starts in 2 mths
昆明ーシンガポール、昆明ーヤンゴンに加えて、カザフスタンと中国を結ぶ高速鉄道も計画にあるのかどうか?おそらくあると見た方がよいでしょう。
地図で確認すると、中国新疆ウィグル自治区の首都ウルムチと隣国カザフスタンで今回の高速鉄道の終点アルマトイとは数百kmの距離。
すでに明らかになっている中国国内高速鉄道の計画では(以下の記事)、ウルムチと北京の間も結ばれることになるそうなので、ウルムチからアルマトイに延伸する可能性は大いにありそうです。