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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善(その1)

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教育現場のICT活用について、現役の先生にインタビュー中

中学校教諭の望月陽一郎先生に、子どもたちが主体的に取り組む授業(環境作り含む)や、授業でのタブレット活用、自作した教材の著作権などを取材しています。

【望月陽一郎 先生・略歴】
大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センタ- 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。
https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/about を参照。

前回は「アクティブ・ラーニングに近づくための授業術」について伺いました。「アクティブ・ラーニングとICT活用について」では、

  • 子供たちが授業へ主体的に参加する姿がアクティブ・ラーニングであること
  • コミュニケーション活動(ジグソー法など)を行えばアクティブ・ラーニングになるわけではないこと
  • ICTは必要な場面でさりげなく使用していること

をご説明いただきました。

16回目の今回は、「アクティブ・ラーニングの視点から望月先生が行った授業改善」についてお話を伺いたいと思います。

【実践1】リフレクション(振り返り)シートのポートフォリオ

○今、行っている実践を教えてください。

望月先生:今年度、私は小規模校に異動しました。新しい学校で、あらためて「アクティブ・ラーニングの視点」からの授業改善に取り組みはじめているところです。

今年度新しく取り組んでいるのは、

  • リフレクション(振り返り)シートのポートフォリオ
  • KPシートバンクシステム

というものです。

○望月先生が取り組んでいる「リフレクション(振り返り)シートのポートフォリオ」とは? 「ポートフォリオ」ということは、リフレクションシートをフォルダにおさめていく、というイメージだと思いますが、どのように活用しているのでしょうか?

望月先生:今年度も、授業の最後に時間をとってリフレクションシートを書いてもらっています。

内容としては、

  • 子ども自身の授業への取組
  • 授業の理解度、授業の評価
  • 授業の感想

などです。

これ自体は、これまでも取り組んできたことで、子供たち自身が授業にいかに取り組んだかを振り返ることができるだけでなく、書いてもらった感想などから私自身も授業を振り返ることができます。子供たちの視点から、授業を評価してもらうことにより、授業改善を日々行っています。

ただ、それまでも一枚ずつ目を通し、コメントを書いたり質問に回答したりして子どもに返却してきましたが、単発になっていました。

そこで、少人数で全校の生徒とかかわる環境をいかして、より細かくフォローができないかと考えたわけです。

○それがポートフォリオにつながるわけですか?

望月先生:一人ずつに持たせたファイルに、返却したリフレクションシートを次々おさめてもらっています。シートにはその時間の小テスト回答欄も載っているので、シート自体をそのまま子ども自身の「授業記録」と考え、ファイリングしていったらどうだろうと考えました。

○リフレクションシートをポートフォリオにおさめていった結果、子どもたちにどんな変化がありましたか?

望月先生:たとえば、今度の学期末テストに向けて、授業でどんな内容があったのか、小テストでどんな問いをされたのか、自分がどんなところができていなかったのか自分の感想・私のコメントをファイルから探すことで見直すことができると思います。

単発で終わっていたリフレクションシートを、時系列で並べて保管することで、年間を通した学びへの取組になるのではないかと思います。

その結果は、テスト以降・学期末な書いてもらう子供たちの振り返りの中で見えてくるでしょう。

【実践2】KPシートバンクシステム

○次に、KPシートバンクシステムとは何ですか?

望月先生:「バンクシステム」とはアニメ作成現場などで出てくることばですね。アニメでは毎回同じ絵を使う場面(決まった場面)があると、以前使用したセルをとっておいて(バンク=銀行)再利用しています。

KP法(紙プレゼンテーション)で使ったA4のシートも、とっておいて再利用することで

  • 子供たちに前の授業とのつながりを意識させる。
  • 私自身が指示するシートを再利用することで効率化できる。

などのメリットがあります。

○KP法とは紙芝居プレゼンテーションのことですよね?YouTubeに動画がありました。

▼伝えるということ 川島直さんのKP法
https://m.youtube.com/watch?v=6ROgvpY4x6U

○「KPシートバンクシステム」を導入してみて、どうですか?何か以前と変わった点はありましたか?

望月先生:今年度から始めたので、「子供から見た効果は比較ができないのでまだ分かりませんが、 ・「キーワード」を書いたシートを再利用し、黒板上にイメージマップ(キーワードを中心とした構造)を創り出すことができるので、前の授業(さらに、単元を通して)とのつながりを意識させることができているように思います。

テレビに提示するのと違って、黒板上で構造化できますからね。また、板書の時間を節約できることで、授業時間を有効に活用できることにもつながっています。手に持ってそれこそフラッシュカード的に使うこともありますね。

すでに準備室に大量のKPシートが、学年別にためられて(笑)います。1年間たつとかなりの枚数になるでしょうね。

まとめ

「アクティブ・ラーニングの主体は子どもたちである」ことを踏まえて、望月先生が授業改善されていることが伝わってきます。

先生の目線でアクティブ・ラーニングをとらえるのではなく、

  • 子どもたちが学びに向かう姿はアクティブか
  • 子どもたちの学ぶ態度・思考はアクティブか

という視点から授業を見直し、工夫していくことが重要なのではないでしょうか。

子どもたちの学びを先生方が理解するために、「リフレクションシート」を活用することは大変有効だと思います。

私の体験ですが、以前の勤務先では毎回、1~3文程度だけ生徒さんたちに書いてもらうことになっていました。生徒さんたちの負担が少なく熱心に書いてもらうことができました。

授業中に質問するのは気が引けるという生徒さんも、リフレクションシートを通して率直な感想や質問、授業を通して発見したことなどを伝えてくれるので大変役立ちました。もちろん次の日に生徒さんたちにフィードバックをしていました。

望月先生のインタビューを通して、「子どもたちの思考が、学びに向かってアクティブになることがアクティブ・ラーニングである」ことを改めて実感しました。

今回取材した「リフレクションシートのポートフォリオ」および「KPシートバンクシステム」の取り組みが、皆さまのご参考になることを願っています。

>>「アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善(その2)」につづく

【補足】用語の定義について

「ポートフォリオ」という言葉は、業界によって意味・使い方が異なります。

【ポートフォリオの使い分け】

業界

ポートフォリオが指すもの

金融

投資家が投資している金融商品の組み合わせ

教育

ポートフォリオ評価(法)

クリエイティブ

今までの自分の作品を集めて自己PRとして利用するもの

(注)意味(ポートフォリオが指すもの)の部分は、「ポートフォリオとは - Portfolioの意味と3つの業界での使い方」から引用

たとえばウェブデザイナーにとっての「ポートフォリオ」は"作品集"ですが、教育系の仕事では"ポートフォリオ評価"を指します。当ブログはIT関係の読者が多いため、前掲記事から教育業界の「ポートフォリオ評価(法)」の解説を引用しますね。

これは、生徒たちが学習過程で残したレポートや試験用紙、活動の様子を残した動画や写真などを、ファイルに入れて保存する評価方法です。従来の科目テストや知力テストだけでは測れない個人能力の総合的な学習評価方法(質的評価方法)とされ、様々な教育分野で取り入れられています。

(中略)

教師と共に生徒自身も自己評価を行いながらステップアップしていくというものであるため、保存する情報は生徒たちが自分のことを客観的に見ることができるように意義のあるものを取捨選択していく方式となります。
https://creator.mynavi-agent.jp/knowhow/article/what-is-a-portfolioより引用

KPバンクシステムは望月先生の造語です。言葉の定義はインタビュー中の解説をご参照くださいね。

引用記事

▼伝えるということ 川島直さんのKP法
https://m.youtube.com/watch?v=6ROgvpY4x6U

▼ポートフォリオとは - Portfolioの意味と3つの業界での使い方
https://creator.mynavi-agent.jp/knowhow/article/what-is-a-portfolio

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の32の取組みが紹介されています。

まとめ記事

今までに取材した「授業でのICT活用のポイント」「学校でICT機器を活用する時のポイント」「教材作成時に気をつけたい著作権の問題」などについては、以下の記事にポイントをまとめました。ぜひご参考にされてくださいね。

※インタビューの第1回目から15回目をまとめています。

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