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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

授業に役立つICT活用術 ‐望月陽一郎先生インタビュー まとめ編‐

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現役の先生(中学校教諭)に、教育現場のICT活用を取材して

大分県の中学校で教諭をされていらっしゃる望月陽一郎先生に、インタビュー形式でお話を伺っています。「教育におけるICT活用」を学校現場でどのように実践されてきたのか、がテーマです。

2013年6月26日から始まったインタビューが、現時点で2年近く続いています。本数は11本まで到達しました。今は年度末ということもあり、お祝いの意味も込めてインタビューのまとめを制作しました。

教育に関わる皆さまのご参考になりましたら幸いです。

【望月陽一郎 先生・略歴】

大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県 主幹等を経て、現職。
https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/about を参照。

授業を工夫するためにICTを活用する

第1回 教育とICTを学校現場で実践する取り組み

▼教育とICTを学校現場で実践する取り組み
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2013/06/ict-9ad3.html

記念すべき初回は、「1980年代以降の学校でのICT活用について」お話を伺いました。

  • 望月先生の学校におけるICT活用実例(1980年代から2000年代まで)
  • 技術家庭科にも情報関係の内容があること

などを伺いました。

望月先生:実際、1990年代に、オーサリングソフトが一時期はやりかけましたが、結局あまり使われないままでした。つまり教材づくりにはそれだけ時間がかかるということです。

  • 1980年代はBASICによる教材
  • 1990年代は動画やインターネット教材

を私も作って授業で使ってきましたが、やはり作成時間がかなりかかったものです。

1980年代、1990年代、2000年代では教材作成や、ICTの活用法がだいぶ違っていたようです。インターネットの発展も教育現場に大きな影響を与えたいたことがわかりました。

第2回目から現在の望月先生の取り組みや、学校現場のお話をお話ししていただくことにしました。

第2回 授業を工夫するためにICTを活用する-授業で工夫しているICT活用ポイントとは?-

授業を工夫するためにICTを活用する-授業で工夫しているICT活用ポイントとは?-
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2013/07/ict--ict-7e89.html

第2回目は、「授業で工夫しているポイントについて」「理科の質問プリント」などのお話を伺いました。

望月 先生:わざわざPowerpointやkeynoteでスライドにしたりすると、作成時間がもったいないです。私にとっては、画像=デジタル教材ということです。

また、毎時間小テストを行っていて、一時間完結型授業の中で、子どもたちに前の授業の振り返りをさせるところから入るようにしています。

ポイントとしては

  • 小テストのプリントを、いつも同じものを使うことができる。毎時間別なプリントを作る必要がない。
  • 問題を簡単に作成し提示することができる。

などがあげられます。

インタビューで印象的だったのは、「授業をよくするためにICT活用を行う」のと、「ICTを活用するために授業を行う」の違いです。電子黒板や大型テレビなどの機器が十分にない環境だったとしても、ちょっとした工夫で授業をわかりやすくしたり、効率よくできることがわかります。

第3回 ICT機器の活用・啓発の取り組み

ICT機器の活用・啓発の取り組み
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2013/08/ict-d348.html

第三回では、「"ICT教育"と"教育(授業)におけるICTの活用"の違い」「実際に学校に整備されているICT機器」「実際に授業で使用したアプリについて」「実際に授業で使用したアプリについて」をご説明していただきました。

--IT業界だと「ICT教育」という言葉は頻繁に目にします。「ICT教育=情報教育」として用語を使われている方が多いような気がします。

望月 先生:「情報教育」は学校現場で取り組まれていますが、子どもたちの情報スキルと情報モラルを身につけさせるのが目的ですね。情報スキルといっても、ICT機器のみのスキルを指すのではありませんし、アンケート(「ICT教育」と「教育(授業)におけるICTの活用」という言葉について知っているか)では「ICT教育」に対する先生方の票は0ですね。

~子どもたちの情報活用能力の育成~ http://www.mext.go.jp

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2010/12/13/1259416_6.pdf

"ICT教育"と"教育(授業)におけるICTの活用"の違いは、貴重なお話だと思います。ICT教育という言葉を、ICTスキルに関する教育として使う人もいれば、教育にICTを活用するという意味で使っている人がいるかと思います。誰のために、何のためにICTを活用したいのか、見直してみると良いかもしれません。

「実際に学校に整備されているICT機器」は、何が何台くらいあるか具体的に挙げていただき、公立中学校のリアルなお話を伺うことができました。望月先生は自分のICT活用のノウハウを、校内研修を行うことで他の先生方にも広めようとされていました。

先生方のICTスキルが高まらないと、授業で効果的なICT活用をすることが難しくなるでしょう。地道な校内研修の取り組みは、教育現場のICT活用を行う上で欠かせない、と思いました。

第4回 教育におけるICT活用事例:「iPad通信」と「ミニICT講座」について

教育におけるICT活用事例:「iPad通信」と「ミニICT講座」について
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2013/09/ictipadict-9fa7.html

第四回目は、「学校のICT環境について」「iPad通信の活用」「ミニICT講座」についてご紹介していただきました。望月先生が行われている校内研修について、さらに深く伺うことで、教育に関わる先生方の参考になればと考えました。

望月 先生:これまでなかなか教室でICT機器を活用した授業をする環境がなかったわけですから、先生方もデジタルではなくアナログの教材をあれこれ工夫してきました。工夫せざるをえなかったわけです。(中略)そこにiPadが導入されたわけですから、さあ使いましょうと言っても、なかなか難しいと思います。(中略)

そこでまず私が取り組んだのは、

  • 自分自身がiPadの活用に慣れること。
  • iPad活用のメリットデメリットを明らかにする。

ことからでした。

コンピュータ室はあるが、授業用パソコンが0~数台の場合は、教室でICT活用することが難しかったことがわかります。そこで、先生方はアナログの教材を工夫してきたのに、突如、タブレットが導入されたとなると、活用にとまどうのも自然な流れです。

望月先生の場合は、ご自身がトライアンドエラーすることで、実践例を積み重ねる方針をとられました。校内の先生方に「iPad通信」を配布したり、「ミニICT講座」を行って実際に話をしてまわることで、校内でのICT活用の啓発に努められました。

先生方は授業だけでなく生徒指導や部活動、教材作成など、多忙な時間を過ごされています。第4回目のインタビューを読んでいただくと、校内研修を開くときの適切な行い方のヒントがわかるのではないでしょうか。

第5回 教材を作る際、著作権についてどのようなことに注意しているか

▼教材を作る際、著作権についてどのようなことに注意しているか
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2014/03/post-7418.html

第5回目は、「学校現場と著作権法」について伺いました。

望月先生 著作権法の第35条には、「学校における例外規定」が書かれています。学校での著作物の利用について、一般より許諾を毎回得なくてよい範囲が広くなっています。

  • 授業の過程における使用
  • 教育を担任する者と授業を受ける者

など、条件も書かれています。

(中略)

ガイドラインは、著作権法第35条の解説資料ですね。

望月先生がガイドラインとおっしゃったのは、以下の資料のことです。

▼学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン 平成16年3月
http://jbpa.or.jp/pdf/guideline/act_article35_guideline.pdf

望月先生 ガイドラインを見ると、「授業をあらかじめ録画しておき後日配信すること」も×となっていますね。その授業の中で(リアルタイム)が条件のようです。著作物等をホームページ等に掲載も×となっていますね。教材は授業の中で使うものだから、ということでしょう。

と解説していただきました。

リアルタイムな授業の中で著作物を使用する場合は、第35条の適用になるようです。補習や反転授業など、第35条を適用できるか微妙な場合は、どうしたらよいのでしょうか。

望月先生の回答は、「他者の著作物を無断で使用しなければよいことなのです。また許可をもらえばよいのです。そうすれば、公開してもよいし、『授業』でなくてもよいのですから。」とのこと。そこで、次のインタビューで、実際に許諾をとった際の体験談を伺うことにしました。

第6回 教材やコンテンツを制作する際、実際に許諾を取った例

▼教材やコンテンツを制作する際、実際に許諾を取った例
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2014/04/post-ee2f.html

第6回目は、今回は「音楽や地図など、実際に許諾をとってみた例」についてお話をしていただきました。

望月先生 私が最初に著作物に関する許諾をとったのは、大分市視聴覚センター(現 大分市情報学習センター)におけるデジタル教材作成を依頼され、Microsoft百科事典の中にあった図を使いたいと考えた時です。そのデジタル教材をセンターHPに公開するというので、これは確認した方がよいと思い、Microsoftにメールを送ったところ回答がありました。

もちろん、送ったメールの中で、

  • 教材作成の目的。
  • どのようなデジタル教材か。
  • どのHPで公開するか。   

などについて書いておきました。

すると、法務部という部署から、デジタル教材への明記の仕方を添えて許可をいただきました。もう20年くらい前になりますけどね。

日本マイクロソフト社は、著作権についてのルールを公式サイトで明示しています。

※「学校内におけるレポートおよびプロジェクト」「スプレッドシート、データベース、パワーポイント スライド」など

▼マイクロソフトの著作物の使用について
http://www.microsoft.com/ja-jp/mscorp/legal/permission/default.aspx

報道に使用して良い画像を公式サイトで公開していたり、地図を営利目的で利用する場合のライセンス手配の説明が書かれていたり。マイクロソフト社の著作物の使用について、ルールが解説されています。

望月先生は、日本マイクロソフト社の事例の他、国土地理院は地図を使用する場合の条件について明示されていることを説明して下さりました。

▼国土地理院 承認申請 Q&A
http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-qa.html#02

国土地理院は、利用の目的ごとに、

  • 「出所の明示」をして利用が可能(申請不要)
  • 申請不要で利用が可能
  • 複製承認申請が必要

など、条件が変わってくるようです。

使いたい著作物は申請不要で利用できるのか。出典を明示すれば良いのか。申請をして承認されないと利用できないのか、を確認することをお勧めします。

なお、望月先生によると、「子どもたちが合唱している動画を載せる場合も、作詞者・作曲者の許可が必要」とのこと。許可を取るのは、「著作権者」「著作権者がすでに亡くなられている場合は遺族」になるそうです。

著作権者がJASRAC会員の場合、連絡先がJASRAC。「校歌については、JASRACが、当面の間使用料をとらない」とのお話を伺いました。うっかり違法な行為をしないために、注意したいポイントです。

>>「授業に役立つタブレット活用術 望月陽一郎先生のインタビュー まとめ編」に続く

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の32の取組みが紹介されています。

関連記事

このまとめ編では1~6回目のインタビューを紹介しました。7~11回目のインタビューのまとめは、

をご覧下さいね。

12回目以降の新しいインタビューは、以下の通りです。

編集履歴:2015.12.26 14:39 見出し「関連記事」と「このまとめ編では1~6回目の・・・」以降を追加。

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