教育現場のICT活用能力の向上のために ~望月陽一郎先生のお話より~
現役の先生に教育現場のICT活用について伺いました
大分県の中学校で教諭をされていらっしゃる望月陽一郎先生に、教育におけるICTを学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺っています。
【望月陽一郎 先生・略歴】
大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県 主幹等を経て、現職。
https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/about を参照。
前回は望月先生が教材・コンテンツを作成する際に、実際に画像や文章等の許諾を取った時の体験談をうかがいました。
今までに
- 授業でのICT活用のポイント
- 学校でICT機器を活用する時のポイント
- 教材作成時に気をつけたい著作権の問題
などを伺いました。
学校現場で先生方はどのようなICT利活用の工夫をされているのか。先生方はどのように試行錯誤されているのか。今回は、望月先生が先生方を対象に行っているICT活用法講座(ミニICT講座)を切り口にして探ります。
先生方のICT活用能力の向上のために
‐今回もお世話になります。さて昨年夏には、望月先生が学校でどのようにICT活用の普及を行われているのか。先生が「工夫をされている点」について伺いました。このインタビューは現役の先生方から反響が大きかったように思います。
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そこで今回は「ミニICT講座」について、さらに深くお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
望月先生 まずは、なぜ校内で「ミニICT講座」をしようと考えたのか、その目的からお話しますね。
学校では、
- 効果的な授業を行うこと。
- 子どもたちの学力を向上させること。
- 情報活用能力をつけさせること。
などいろいろなことが求められています。
これらを見ても、先生方のICT活用能力向上が必要となりますが、先生方もなかなかそういった研修に行かないというより行けない実態があります。
中学校では、夏季休業中も部活動があったり会議や出張があったりと、なかなかそういう+αの時間がとれません。そうなるとわざわざICTを活用してまではできない、ということになりますね。そのあたりを解決し、眠っている先生方のニーズに応えられないかが、この講座を校内で行ってみた目的です。昨年度も行いましたがけっこう反省もありました(笑)。
‐先生方が参加しやすいように講座を実施されたとのこと。頭が下がります。「反省もありました」とのことですが、続きをうかがってもよろしいでしょうか?
望月先生 昨年度は12日(12回)行いましたが、
- 部活動の練習があるため、校内にいるとしても時間が合わないと参加できない。
- 続けて参加しないといけないと思われた。
- そのため、時間をとられると感じる(12日間出ないといけない)。
などで、あまり参加者が伸びませんでした。のべ50人くらい。
このように校内にいても、ミニ講座になかなか参加できないのに、校外の研修に参加するというのは、もっと限られた先生になります。
‐なるほど。そうなのですね。学校の先生は部活動の顧問の仕事もありますし、参加する時間を作るのもご苦労されているのですね。
望月先生 中学校以外の他校種の先生方だと、勤務の実態が違うかもしれません。
そのため、今年度は
・午前、午後の2回 同じ内容で行います。
・・・つまりどちらでも自分の都合がよい方に参加できます。
・短時間30分、単発の内容
・・・1回完結を強調しました。いつ参加してもOKです。
・(無料)・・・もちろん、有料の講座ではありません。
を事前に「ICT活用通信」で大きくアピールしました。
‐なるほど。それでしたら、先生方が参加しやすいですね。
望月先生 午前だけ、午後だけ部活動の練習という先生もいますからね。
‐そう言われれば、そうですよね。校庭や体育館の使用の都合で、部活は午前だけとか、午後だけとか、ありそうですし。
望月先生 そうですね。昨年度は、昼前30分だけでしたので、まだ、部活動中で出られないとか、けっこうありました。
‐今回は午後も行うことで、参加できる先生はだいぶ増えたのでしょうね。望月先生の負担が心配ですが、先生方にとっては朗報でしたでしょうね。
望月先生 全28回、のべ100名弱でした。昨年度の約倍になりました。負担は大きかったですが、けっこう盛り上がりました。最低1人から行いましたよ。
‐参加しやすくていいですね。
望月先生 「それなら参加できそう」という気にさせるのが大切なポイントです。最先端の難しいことをしても集まりませんし、広がりが見られなければ意味がありませんからね。
‐確かにそうですよね。心のハードルが下がると参加しやすいですし。
望月先生 参加する側から見ると、校外より校内、有料より無料、長時間より短時間で効果的な講座を受けたいということになります。講座を開設する側としてはとても大事なことですね。それで活用する先生が増えれば、結果的によいのです。
‐私もそう思います。必要なときにICTを活用できる先生方が増えること、取り組みが広がることが大切ですから。
望月先生 以前教育センターで、教職員研修を担当してきた経験からもそう思います。
‐ご経験のたまものですね。学校によってインターネット環境など、様々な環境が違うだろうと思います。ですから「校内で研修を行うのはいいなあ」と感じました。
望月先生 校内で行うこともメリットがありますね。すでにお互いを知っていますから。
‐それは大事な点ですね。望月先生のブログには、iPadを導入された際にiPadに名前をつけるという記事がありました。データ共有の問題を書かれていて、はっとしました。
参考記事:iPadの設定例
http://mochizuki.la.coocan.jp/mochizuki_ict/mochizuki_ict_vol6/2014/08/ipad-2.html
こういう所は校内で研修してもらうと、先生方はわかりやすいだろうなあと感じました。
望月先生 その話題は、先日校外の研修でも話しました。研修に持ってきた端末が、同じ名前で表示されて困りました(笑)。うちは、名前を割り振っていますよ、と説明したところです。
‐なかなか気がつきにくいことですが、現場ですぐに役立ちそうな話題ですね。実際に使ってきた経験がないと気がつけないですから。
望月先生 校内で管理・活用しやすいようカスタマイズする方が使いやすいですから。
‐こういう工夫は実践的でいいなあと感じます。
望月先生 いろいろな意味で、「校内で取り組むこと」は啓発につながりやすいと、今年度の「ミニICT講座」を終えて思います。参加したい人だけが参加する校外の講座より、広がりができやすいですね。次回は、どんな内容を工夫したか、について話しましょう。
‐はい。今回もわかりやすくまとめていただき、ありがとうございました。
おわりに
今回は学校現場で先生方がどのようなICT活用の工夫をされているのか、望月先生にお話しいただきました。次回は学校にあるタブレットのお話も伺えるようです。今回も実践に基づいたお話が大変面白かったです。ありがとうございました。
>>「学校へのタブレット導入事例 ~望月陽一郎先生のお話より~」に続く
参考記事
先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の32の取組みが紹介されています。
まとめ記事
今までに取材した「授業でのICT活用のポイント」「学校でICT機器を活用する時のポイント」「教材作成時に気をつけたい著作権の問題」などについては、以下の記事にポイントをまとめました。ぜひご参考にされてくださいね。
※インタビューの第1回目から11回目をまとめています。
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