学校における教育ICTの現状について
情報教育に関するさまざまな取り組みをされている望月陽一郎 先生に、2013年から教育現場の状況や先生のお考えについてインタビュー形式で伺っています。
今回は望月先生が独自に調査された「GIGAスクール端末活用の現状と次期に期待するものについてのアンケート」を踏まえてお聞きしています。
【望月先生 プロフィール】
大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。Forbes Japan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)などを経験されています。自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』」などをサイトにて公開されています。
望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/
学校におけるプログラミング教育の現状について
―今回はGIGAスクール端末活用の現状と「教育現場にいる先生方は教育ICTの現状をどのようにお考えなのか」というテーマでお伺いしたいと思います。「GIGAスクール端末活用の現状と次期に期待するものについてのアンケート」の中で、「学校におけるプログラミング教育は進んでいるか」について質問されています。
「学校におけるプログラミング教育は進んでいるか(小学校)」(2024年5月)n=98
―小学校の先生方の回答を見ると、「進んでいる」という回答は16.1%しかありません。「一部の先生しか進めていない」が58.2%、「ほとんどプログラミング教育はされていない」が20.4%となっています。
―前向きに解釈すれば何らかの形で進められている学校が74.3%あるということもできますし、逆に解釈すればプログラミング教育が不十分である学校が約80%近くあると受け取ることもできます。望月先生はこの結果についてどのようにお考えですか。
望月先生:注目してほしいのは、この結果が、2020年度からプログラミング教育が必修化になっている小学校の先生方の回答だということです。
必修化から5年目となり、それ以前から研修も行われていたはずなのですが、「ほとんどプログラミング教育が行われていない」という回答がこんなにあるというのは、意外です。
必修化となった年度の小学校6年生は、今高校1年生となっていて「情報Ⅰ」でプログラミングが扱われているはずです。中学校では今回の学習指導要領より前からすでにプログラミングの内容は必修であったため、20代の方々のほとんどは中学校でプログラミングを学んできているはずですが、実際どうなのか不安になりますね。
中学校技術科の先生不足も問題になっていますね。
参考:中学「技術」担当教員 4人に1人は正規免許なし 情報教育に課題
(朝日新聞 2024年2月13日)https://www.asahi.com/articles/ASS2D7QHDS2BUTIL00K.html
―小学校でもプログラミングが苦手という先生が多いと思いますが、中学校の専門教科である技術科の先生がそんなに少ないとは知りませんでした。
もしかして、小学校でも中学校でもプログラミングについてほとんど学ばないまま(必修なのに)の子どもたちがいるのではないかと心配ですね。
大学入学共通テストに「情報」が加わることについて
―今年度末の「大学入学共通テスト」から「情報」が加わり、国立大学などでは必修科目となることを知っているかについても質問されていますね。
望月先生:2022年度の新入生から、「情報Ⅰ」が必履修となりました。勘違いされることが多いのですが、「情報Ⅰ」の内容はプログラミングだけではなく、情報モラル・ネットワークなど情報教育全般にわたる幅広い内容となっています。小学校・中学校でどのように学んできたかが問われる教科ですね。
「2025年1月の「大学入学共通テスト」から「情報」が加わり、国立大学などでは必修科目となるが、そのことを知っているか(小学校)」(2024年5月)n=99
「2025年1月の「大学入学共通テスト」から「情報」が加わり、国立大学などでは必修科目となるが、そのことを知っているか(中学校)」(2024年5月)n=44
中学校の先生の回答では、「知っている」「一部の先生が知っている」が小学校より多く意識していることがわかります。
―なるほど、中学校の先生方にとっては身近な話題といえるのですね。
望月先生:情報教育は、すべての教科等を通じて行うことになっているので、先ほどふれた技術科だけの内容ではありません。GIGAスクール端末が手元にあるので、どの教科でも扱ってほしいですね。
全国調査に「CBT」が導入されることについて
―また、来年度2025年4月の「全国学力・学習状況調査」で、CBT(端末で問題を読み、端末で回答する)が中学校理科の調査に初めて導入されます。そのことを知っているかという質問について、中学校の先生方の回答では「知っている」が34.1%、「一部の先生が知っている」が63.6%となっています。
「来年度2025年4月「全国学力・学習状況調査」で、CBTが中学校理科の調査に初めて導入されることを知っているか(中学校)」(2024年5月)n=44
望月先生:中学校での認識率は比較的高いですね。すでにサンプル問題も公開され、接続テストも始まっています。
参考:令和7年度の調査実施(文部科学省)サンプル問題ありhttps://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/zenkoku/1417152_00015.htm
―もうそこまで進んでいるのですね。
望月先生:2027年度には小学校6年生でもCBTが始まり、2028年度にはすべての調査がCBTになります、今の小学校2年生が該当学年になりますね。
普段から端末を使っているかという要素が結果に関わってくるので、キーボード入力などの基礎的なスキルが重要です。
―今後はCBT(端末で問題を読み、端末で回答する)が普通になっていくと思われるが、学校で対策を進めているかという質問もありました。
「今後はCBT(端末で問題を読み、端末で回答する)が普通になっていくと思われる。学校ではその対策を進めているか(小学校)」(2024年5月) n=99
望月先生:小学校の先生方の回答では、まだ「ほとんど進めていない。意識にない。」という回答がまだ多く、これから、という感じですね。次第に近づいてくると変わっていくのではないかと思います。
―様々な資格試験ではCBT化が進んでおりますが、教育現場でも同様の流れであることが伝わってきました。現時点では小学校の先生方のご回答に「ほとんど進めていない」が多めではありますが、時代の流れに沿ってCBT化は進んでいくのではないかと思われます。ですが、抵抗感がある先生方も中にはいらっしゃるのかなと気になりました。今後の進展がどのようになるのか楽しみです。
―そして、教育ICT研究室の2024年度の記事は本記事が最後となります。GIGAスクール端末の更新の話題から教育ICTに関する話題まで扱ったこのシリーズが、お読みくださった皆様のご参考になりましたらうれしいです。
ご回答くださった望月先生及びに記事を読んでくださった皆様、大変ありがとうございました。皆様、良いお年をお迎えくださいませ。