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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

ICT活用とジグソー法について-中学校教諭・望月陽一郎先生のお話より-

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教育現場のICT活用について、現役の先生にインタビュー中

中学校教諭の望月陽一郎先生(理科担当)に、中学校でのタブレットの活用や、自作したデジタル教材とアナログ教材のメリット・デメリット、自作した教材の著作権などを取材しています。

【望月陽一郎 先生・略歴】

大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センタ- 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。
https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/about を参照。

前回は望月先生が自作したデジタル教材(ランダムフラッシュカード)について伺いました。

理科の授業で、スライドによる「デジタルフラッシュカード(フラッシュ型教材)」を使っていて、「次に何が出るか」を予想する方に意識が向いてしまう子どもたちが出てきたため、示される順番が毎回変わる「ランダムフラッシュカード」を構想。PowerPointのマクロ機能を利用して作成したそうです。

スライドショーをするたびに出てくる問題がその都度変わるので、子どもたちが新鮮な気持ちで取り組んでいるとききました。14回目の今回は、「子どもたちが主体的に取り組む授業の構想」についてお話を伺いたいと思います。

子どもたちが主体的に取り組む授業とICT活用の関係とは

―今回は「子どもたちが主体的に取り組む授業」について質問させてください。というのは、私がNPO法人に勤務していた時、「教育のユニバーサルデザイン」という言葉を耳にしていたからです。

望月先生:「教育のユニバーサルデザイン」をどのようにとらえているのですか?

―同僚が、学習に困難さがある生徒も含めたすべての学習者が学びやすい環境づくり・教え方が「教育のユニバーサルデザインだ」だと教えてくれました。しかし、子どもたちの個性がそれぞれ違うのに、共通して有効な教育方法がありえるのか、疑問があったのです。

望月先生:どのような子どもにも有効なものというは難しいと私は思います。

しかし、「学びやすい環境づくり」については、これまでも工夫を行っています。小テストをスライドとワークシートの組み合わせいるのも、それですね。問題を大きくスライドで表示することで、問題に集中できるようにしています。

また、子どもたちが持っている教科書を大きく投影し、その画面に直接書き込みながら大切なところを示していくのもそうですね。教科書に書いてあるのに、教師が黒板に同じことを書き、それを子どもたちがノートに写すよりもずっと時間を有効に使うことができます。

―なるほど。「教育のユニバーサルデザイン」を「子どもたちが学びやすい環境づくり」ととらえるとよさそうですね。先生が今取り組んでいる「子どもたちが学びやすい環境づくり」についてお話しいただけますか?

ジグソー法とICT活用について

望月先生:今、授業の工夫のひとつとして、「ジグソー法」に取り組んでいるところです。

―このインタビューの前に教えていただいたサイトで、ジグソー法について読みました。

▼ジグソー法―授業の作り方― 大学発教育支援コンソーシアム推進機構
http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515

上記のサイトを参照してみると、

「ジグソー法は、あるテーマについて複数の視点で書かれた資料をグループに分かれて読み、自分なりに納得できた範囲で説明を作って交換し、交換した知識を統合してテーマ全体の理解を構築したり、テーマに関連する課題を解いたりする活動を通して学ぶ、協調的な学習方法の一つ」(http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515より引用)

と解説していますね。

学力の差があっても生徒たちが意欲的に取り組むことができる学習法なのかな、と思いました。望月先生がジグソー法を授業に取り入れたのは「協調学習しやすいから」という理由でしょうか。また、ICT活用はどのようにしたのでしょうか。

望月先生:今回は、アクティブ・ラーニング(子どもが主体的に学びに取り組む)へ向かう一つの取り組みとしてジグソー法に取り組みました。ICT活用は、あくまで補助。ジグソー法をスムーズに行うために使いました。

―なるほど。そのような意図がおありだったのですね。先生がご紹介なさったサイトには

具体的には、まず、今の単元でしっかりわかりたい「問い」を設定します。この時、「一つの知識では解けないけれど、みんなが既に知っていることや今教科書に沿った資料を読めばわかること」を3つか4つ、部品として組み合わせて解けるようなものが良い問いになります(http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515より引用)。

と書かれていました。先生の授業では、どのような段取りで行われましたか。

望月先生:今回は、動物分野のまとめとして、3時間をひとつのテーマをもって進めました(ここがアクティブ・ラーニング・・・授業設計)。

「動物について、これまで学んできたことを活かしながら、生物の種類ごとの特徴を調べて分類する」

1時間目・各グループで担当した動物の種類について(たとえば魚類)、教科書で調べながら「ワークシート」に書き出しまとめる。説明者(プレゼン担当)を中心に、どのようにその種類の特徴について説明するか準備を行いました。

・・・ワークシートを準備。種類ごとのつながりを意図したイメージマップに書き込むよう設計しました。(ICT活用①・・・視点を示す)

2時間目・説明者はグループに残り、取材者は担当した他のグループに分かれ、一次プレゼン(説明)を行いました。取材者は、説明者の説明を聴き、グループで報告できるよう、ワークシートに書き込み、また質問も行いました。

・・・よい発表の様子を写し、映す。(まっすぐ立ってはっきり説明している様子。これは他のクラスの参考にもなりました)(ICT活用②・・・動きを示す)

・取材者はグループに戻ってそれぞれ二次プレゼン(報告)を行う。他のメンバーはそれを聴き、自分のワークシートをまとめました。(取材して集めてきたパズルのピースを組み合わせる)

・・・説明時間を確認するため、アナログ時計で大きく示す(時間を意識させる)。(ICT活用③・・・時間を示す)

3時間目・種類同士のつながりを中心に総合まとめを私が行い、自分たちのワークシートにたりないところを書き込ませました。
・・・ワークシートに私が書き込んだものを大きく映しながら解説。(ICT活用④・・・視点を示す)

  • 視点を示す。
  • 時間を示す。
  • 動きを示す。

あくまで子どもたちのジグソー活動をサポートする役割として、ICTを活用しています。

―なるほど。そのようにして、ジグソー法とICT活用を組み合わせたのですね。私は二次プレゼンをするところがいいなあと思いました。一回目のプレゼンを振り返らざるをえないので、客観的に発表内容と向き合えそうです。自分でいろいろ情報を組み合わせたり、新たな疑問が思いついたりできそうなのもいいなあと感じました。

まとめ

今回は、「子どもたちが取り組みやすい授業」というテーマで、ジグソー法を行った事例を教えていただきました。子どもたちの活動をICTでサポートするときに、望月先生が指摘した三要素、

  • 視点を示す。
  • 時間を示す。
  • 動きを示す。

は、とても大事なことだと思います。

パソコンの授業を担当していたとき、これから教科書の何ページ目の授業を始めるのかページ数を黒板に書いたり、作業の残り時間を生徒たちに口頭または板書して伝えたりするように、先輩からアドバイスを受けました。

タイピング練習の時は声かけや音声時計を使い、グループワークの時はアナログ時計を使いました。アナログ表示だと、残り時間が視覚的にわかるメリットがあるからです。

ジグソー法は仲間と情報を教えあうことで、さらに理解が深まります。望月先生がおっしゃるように、アクティブ・ラーニングの足がかりになりそうですね。今回も興味深いお話を伺うことができました。大変ありがとうございました。

次回は「アクティブ・ラーニング」について、さらに質問したいと思います。この記事が読者の皆さまの授業作りのご参考になる事を、願っております。

>>「アクティブ・ラーニングとICT活用について-中学校教諭・望月陽一郎先生のお話より-」に続く

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)

※望月先生の32の取組みが紹介されています。

まとめ記事

今までに取材した「授業でのICT活用のポイント」「学校でICT機器を活用する時のポイント」「教材作成時に気をつけたい著作権の問題」などについては、以下の記事にポイントをまとめました。ぜひご参考にされてくださいね。

※インタビューの第1回目から11回目をまとめています。

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