教育現場における「タブレットのグループ活用」編 ~望月陽一郎先生のお話より~
現役の先生に教育現場のICT活用について伺いました
大分県の中学校で教諭をされていらっしゃる望月陽一郎先生に、「教育におけるICT活用」を学校現場でどのように実践されてきたのか、インタビュー形式でお話を伺っています。
【望月陽一郎 先生・略歴】
大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県 主幹等を経て、現職。
https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/about を参照。
前回は望月先生の勤めている中学校で、タブレットをどのように活用しているのか、「指導者用のタブレット」という切り口でお話を伺いました。提示の工夫の実践例を、4つの観点から説明していただけました。
- なぜ「指導者の提示用タブレット」からか。
- なぜ「大型テレビ」あるいは「プロジェクター」の常設か。
- 提示用はタブレットがよいのか。
- どんな提示教材を使っているのか。
参照元:教育現場における「提示の工夫」 指導者の提示用タブレット・編 ~望月陽一郎先生のお話より~
例えば、生徒達が二人一組でタブレットを使う場合と、五人一組でタブレットを使う場合では、違った提示の工夫が必要になるのではないか、と考えています。
指導者用タブレットのお話に引き続き、今回はグループでタブレットを活用するときの工夫、注意点について取材したいと思います。
「一人一台」に向けて
‐タブレット活用において、「一人一台」をめざす動きがあるようですね。教育現場の状況は、いかがでしょうか?
望月先生:「教育の情報化」に向けて、2020年までには、子どもたちに「一人一台」端末を持たせるとの話が出ています。最近よく聞かれる「ICT教育」も、情報リテラシーを身につけさせる一つのアプローチの方法といえますね。
私は、まだ「一人一台」整備が先の話(学校現場では、指導者用タブレットの整備もまだ見通しがみえない)なので、それまでにいろいろな使い方のポイントを見出しておきたいと思っています。
‐なるほど。学校現場では、指導者用タブレットの整備もまだ見通しがみえない状況なのですね。大変ですよね。「それまでにいろいろな使い方のポイントを見出しておきたい」という部分について、詳しくお訊かせいただけますか。
グループ一台活用
望月先生:実際に「一人一台」を試してみるだけのタブレットがないため(学校には、10台のiPadしかまだ導入されていない)、DiTT(デジタル教材教科書協議会 http://ditt.jp/)からiPad、MicrosoftさんからSurfaceを貸与いただいたので、「グループ一台活用」から始めてみました。
‐前回、お話しいただいた取り組みですね。
注:教育現場における「提示の工夫」 指導者の提示用タブレット・編 ~望月陽一郎先生のお話より~
望月先生:はい、それ以前から100均のホワイトボードをグループ活用したり、そのホワイトボードを指導者タブレットで投影して共有したりしていたので、「グループ一台活用」も子どもたちは、スムーズに受け入れてくれました。こういう段階を踏むことが導入しやすくするコツかもしれませんね。
また、使ってみて、iPadでもSurfaceでも、活動で使う分にはあまり変わりないこともわかりました。それよりも「使う場面」の設定、授業設計の方が大切です。
‐iPadでもSurfaceでも、あまり変わりないという点、興味深いです。「使う場面」の設定、授業設計の方が大切というお話、その通りだと思います。
「二人一台」構想をやめた理由
‐生徒用のタブレットを何人一組で利用したらよいのか、迷われている先生方は多いのではないかと思います。
望月先生:その後、NECさんからも貸与いただいたので、30人のクラスで「二人一台」15台の活用が可能になりました。ただ、どう使うか、どんな活動の様子になるか授業をイメージしていくと、15ペアの中を自分が一人で動き回らなければならないことに気づいたのです。
‐先生が一人なのに、15ペアでは、大変ですね。
望月先生:中学校では教科担任制で複数のクラス、私の場合5クラス、75ペアそれぞれに合わせた指導・配慮が必要になります。授業は教科の目標を達成することがメインであり、タブレットの使い方を行うわけではありませんから、そこに時間が取られては本末転倒になりますね。
‐そうですよね。授業は教科の目標を達成することがですから。ICT支援員さんや補助の先生がつけば、操作がわからない生徒に説明してもらって授業を進められますが、一人だと確かに難しいですよね。
「グループ二台活用」をしてみて
‐クラスや環境によって、タブレットの操作が得意な生徒・不得意な生徒が出てくると思います。先生の人数が足りない中で授業を進めるとなると、それなりの準備と工夫が必要になるのではないかと思います。望月先生は、どのようにされてきましたか。
望月先生:発想を変え、「グループ一台活用」→「グループ二台活用」とすることにして、子どもたちにもその趣旨を説明しました。
‐「グループ二台活用」ですか。なるほど。
望月先生:これだと、画面も見やすくなります(グループ一台だと画面が小さいし、見る向きが限られる)。また、わからないときはグループの中で教えてもらうことができやすい(二人で考えるのではなく、グループで相談することができる)。
また、指導する側から見ると、グループ(私の場合、6グループ)の間を動くことになるので、「グループ一台活用」の時と変わらないことになります。
‐それでしたら、先生の目が行き届きやすいですね。
望月先生:こういう考え方をしていけば、「一人一台」になっても、「グループ活用」していくことで、子どもたちも指導者側も負担が減り、授業の目標により近づきやすくなるのではないかと思います。
‐私は「生徒何人に対して、タブレットを配布するのがよいのか」、という発想で考えていました。しかし、「グループで●●台」というアイデアをうかがい、目から鱗でした。
グループ活動を進めるだけでも、ずいぶん授業がやりやすくなるのですね。様々な視点を持つ大切さを感じました。
望月先生:今回、理科の実験データをExcelでグラフ化し、そこに見られる特徴について話し合わせました。グループの中で使い方がわからない子どもが他の子どもにきいている姿、二人で話し合いながら画面のグラフを見る姿などが見られました。
‐想定していた「グループ二台活用」のよさが見られたということですね。
おわりに
今回は望月先生が中学校の授業で実際に行っている、タブレット「グループ二台活用」の工夫についてお話を伺いました。お忙しい中、現場の実践に基づくお話をしていただき、ありがとうございました。
そして、生徒用のタブレットを何人で利用したらよいのか、迷われている先生方は多いのではないかと思います。読者の皆さまの実践に、この記事が役立つことを願っています。
>>「理科の実験におけるICT機器の活用術 ‐中学校教諭・望月陽一郎先生のお話より‐」につづく
参考記事
先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の32の取組みが紹介されています。
まとめ記事
今までに取材した「授業でのICT活用のポイント」「学校でICT機器を活用する時のポイント」「教材作成時に気をつけたい著作権の問題」などについては、以下の記事にポイントをまとめました。ぜひご参考にされてくださいね。
※インタビューの第1回目から11回目をまとめています。
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