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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

『稚児今参り研究(増補版)』を出版しました

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先日、日本文学研究者として『稚児今参り研究(増補版)』という本を出版させていただきました。

今回、取り上げた『稚児今参り』は室町時代末期に成立したお伽草子で、女装して内大臣家の姫君の女房になる稚児が内大臣家の姫君と恋愛をするとても珍しい物語です。二人は困難に見舞われますが、尼天狗の救助と犠牲によって結ばれます。

参考:片岡麻実『稚児今参り研究(増補版)
※上記書籍のリンクURLはAmazonアソシエイトのリンクを使用しています。

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本の表紙は主人公の稚児が桜の下から姫君を垣間見する場面をイメージしたものになっています。本書では入水する女君のモチーフが扱われているため、水の波紋も描かれていて美しい表紙となりました。

本の内容は以下の通りです。

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【目次】

凡例 11

増補版はじめに 13

はじめに 16

奈良絵本『ちごいま』における古典受容

  • 一、はじめに 19
  • 二、入水する姫君 ―浮舟の影響 24
  • 三、入水する姫君 ―『狭衣物語』の影響 27
  • 四、『平家物語』の受容 30
  • 五、月の都について 34
  • 六、おわりに 38

『稚児今参り』における古典受容論―『源氏物語』『狭衣物語』の和歌の影響―

  • 一、はじめに 46
  • 二、月の都について 48
  • 三、『源氏物語』と『狭衣物語』の受容について 52
  • 四、読書の在り方について 57

和歌受容にみる『稚児今参り』成立私考 増補改訂版

  • 一、『稚児今参り』における研究史概括 69
  • 二、『時慶卿記』と奈良絵本『ちごいま』 74
  • 三、新写本の発見について 79
  • 四、鎌倉時代物語との類似 81
  • 五、離別の和歌と重衡の和歌 87
  • 六、「底の水屑」にみる平家取り 95
  • 七、『平家物語』の女君と奈良絵本『ちごいま』 102
  • 八、水車の和歌について 106
  • 九、おわりに 109

『稚児今参り』における尼天狗像私考 補正版

  • 一、はじめに 123
  • 二、尼天狗の文学史 125
  • 三、『稚児今参り』の尼天狗と『花世の姫』 130
  • 四、奈良絵本における尼天狗の人間化 134
  • 五、『平家物語』灌頂巻との関連 141
  • 六、『秋の夜長物語』との影響関係 145
  • 七、おわりに 150

参考文献 161

あとがき 176

増補版あとがき 178

初出一覧 181

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Amazonで購入可能な他、国会図書館や国文学資料館、大学図書館、埼玉県立図書館等でもお読みいただけます。

▼『稚児今参り研究(増補版)』-国立国会図書館
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033732561

▼Cinii Books
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BD09133541

2020年に出版した『稚児いま参り研究』に最新の情報を追加するため新しい論考に加えて、過去の論考にも大幅な加筆を加えました。お伽草子『稚児今参り』が『源氏物語』『狭衣物語』『平家物語』『とりかへばや物語』など、数々の先行作品の影響を受けていることがより分かりやすいようにまとめました。

また、拙著のように「尼天狗」をメインにして考察している論考は、日本でもあまりないそうです。在野研究者のため至らない点が多々あり恐縮なのですが、「尼天狗」についての考察や王朝物語から受けた影響についての考察に、もしよろしければご一読いただき、ご意見をいただけましたら大変幸いです。

そして、日本文学研究者としてこのような研究書を出版できたのも日頃、応援してくださる皆様のおかげです。大変ありがとうございます。望月陽一郎先生と共同で執筆している教育に関する連載に加えて、今後も日本文学研究を続けていきたいと考えています。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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