教育現場におけるWindowsタブレット活用事例 ~望月陽一郎先生のお話より~
現役の先生に教育現場のICT活用について伺いました
大分県の中学校で教諭をされていらっしゃる望月陽一郎先生に、「教育におけるICT活用」を学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺っています。
【望月陽一郎 先生・略歴】
大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県 主幹等を経て、現職。
https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/about を参照。
望月先生が勤めていらっしゃる市では、「平成25年度にタブレットが各中学校に導入された」とのこと。そこで、前回は「タブレットの導入状況(平成25年度)」「導入時に問題と感じた点」「導入されてまず工夫した点」等について、お話を伺いました。
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今回は前回のお話を更に掘り下げ、授業でWindowsタブレットを試用した際の実体験について、お話を伺います。
○Windowsタブレットの活用実践例について
-前回のインタビューで、「MicrosoftのSurfaceRTとiPadとの併用や比較」をされている、と伺いました。それぞれの端末のメリット・デメリットを教えていただけますか。
望月先生:今年度、昨年度DiTTからお借りしていたiPad10台を返却したため、学校にあるタブレットの数の少なさを補うため、日本Microsoft社の広報経由でお願いして、Windowsタブレットである「Surface」をお借りすることができました。
お借りした端末は以下のような仕様でした。
【Surface RT(一世代目)の仕様】
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・WindowsRT8.1
・Office2013RTプリインストール
・ストアアプリが使用可能
・ローカルアカウント+個人アカウントが使用可
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望月先生:私もSurfaceを初めて使ったのですが、使ってみていくつかわかったことがありました。というより、授業で使うタブレットと考えた際の課題となりそうなことです。
【授業で使う際の課題となりそうな点】
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・スタート画面(タイルが並ぶ)とデスクトップ(従来のWindowsデスクトップ)の関係がわかりにくい。
・WindowsRTのため、ストアアプリが限定される。(RT対応アプリのみ)また検索画面がAppleの
AppStoreより使いにくい。
・AppleTVのような無線投影ができない。(Surface2から対応)
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望月先生:こうしてあらためて比較してみると、iPadの使いやすさがわかります。
タブレットに初めて本格対応したWindows8とiOSの違いともいえそうですね。
【iPadの方が優れている点】
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・ホーム画面でのアイコン管理がしやすい。
・AppStoreアプリが充実している。
・AppleTVで簡単に無線投影ができる。
さらに、
・機能制限、アクセスガイドなど使いやすい管理機能が充実している。
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望月先生:こういったところでしょうか。指導者用・学習者用としても、「使いやすさ」「わかりやすさ」は、限られた時間内に行う授業では大切なポイントといえます。
Windowsもこのあたりを改良していくと、教育用タブレットとしての価値が高くなると思います。
○活用で気になったことについて ①オフィスのメリット
-まず、タブレットでOfficeが使えることが、授業でどれくらいメリットがあったのか? をお聞きしたいです。以前読んだIT系の記事には、マイクロソフトオフィスがインストールされている点は強力なメリットと書かれていました。授業で使われてみて、どの程度のメリットがあったのか興味があります。
望月先生:以下のDiTT「先導先生」のページに実践例を載せていただいていますが、
参考URL: DiTT「先導先生」
http://ditt.jp/action/case/teacher.html
・取り組み 話し合う・・・③Excelミーティング
【授業活動の概要】
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・実験した記録をグラフ化して、その特徴を話し合う場面。(グループ活動)において、グラフ化が苦手
な生徒もいるため、どんなグラフの形になるのかイメージをつかませた。
・Excelのシートにデータを入力しそこに表示されるグラフをもとに自分のグラフを書き、その特徴を話
し合った。
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【評価/振り返り】
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・データを入力していくことでグラフの形ができてくるので、その変化をイメージしやすかったという
感想が多かった。
・Excelシートは入力するだけだったので、集中することができた。
(シートに制限がかかっていたので入力ミスもしなくてすんだ)
※表を作らせたり、グラフを作成させたりするのが授業の目的ではない。
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望月先生:Excelのシート保護機能や入力規則を使ってあらかじめ準備していたので、グラフの特徴を話し合うことに集中させるという目的は達成できました。こういう細かな設定は、Excelの得意とするところですね。
-なるほど。確かにExcelは設定が細やかにできるので、いいですよね。Numbers はMicrosoft Excelとの互換性がありますから、Excelで作成したデータをiOS向けのNumbersで開くことができますし。
参照記事:Pages、Numbers、Keynoteの新機能。
https://www.apple.com/jp/productivity-apps/whats-new/numbers/
○活用で気になったことについて ②スタート画面の使い方
-スタート画面とデスクトップの関係がわかりにくいとのこと。生徒さんたちは授業でとまどってしまったのでしょうか。それとも問題はなかったでしょうか?先生の工夫でフォロー可能だったのか、伺いたいです。
望月先生:私もWindows8を使うのが初めてだったので、その多層構造?にはとまどいました。タイルとデスクトップのアイコンとどういう関係なのだろう?と。
iPadだとホーム画面にアイコンを並べる、フォルダでまとめるくらいなのですが。
-生徒さんたちは、とまどいましたか?
望月先生:あらかじめ、「スタート画面」に、授業で使うアプリのみのタイルを並べておくようにしてから始めたので、とまどいはありませんでした。
【授業で使うアプリとして並べたもの】
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・黒板
・フォト
・カメラ
・星座表
・植物図鑑
・Excel・・・グラフを使うときに追加しました。
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そのため、デスクトップを生徒が操作することはありませんでした。
-そうだったのですね。Web上の記事では、「例えば、Windows 8ではデスクトップ画面を表示するには、タッチ操作に最適化されたスタート画面を経由しなければならず、社内でデスクトップしか使わないユーザーにとっては不満の要因ともなっていた。
これが、Windows 8.1では起動後に表示する画面をデスクトップに設定変更することができる。つまり、起動すればすぐにデスクトップ画面が表示されるので、従来のOSと同じような使い方ができる。」(http://shanimu.com/%E7%89%B9%E9%9B%86/2013/09/part2%E3%80%80windows7%E3%81%8Bwindows8%E3%81%8B.html より引用)
と解説している記事がありました。
Windows 8はUIが従来のものからだいぶ変わりました。とまどう方が多かったのでしょうね。
望月先生がされたように、「スタート画面」に授業で使うアプリのみ表示していれば、生徒さんたちは操作しやすいでしょうね。何を使えば良いのか明確ですし。先生の側で事前に設定を行っておけば、問題はなさそうですね。
○活用で気になったことについて ③アプリの数について
-Windows系のアプリは前から数が少ないと噂を聞いていました。アプリが少ない中、どのようにしのがれたのでしょうか?日本マイクロソフトがアプリコンテストを開いて増やそうとしたそうですが、まだたりないようですね?
また、RTのため使えないソフトが多かったとのこと。標準インストールされる「Office2013RT」では、マクロやアドインが使えず、スカイドライブとの自動同期機能がないとWeb上の記事に書かれていましたが。
望月先生:前の項目で話したように、ストアアプリから使えそうなものをダウンロードしてタイル配置しました。通常のフリーソフトなどは使えないので、使えるものをどうやって選択して使うかは授業者の工夫次第ではないでしょうか。
理科の授業での活用なので、Officeの使い方を習得させるのが目的ではありませんから、マクロが使えないことなどは意識にありませんでした。
-言われてみればそうですよね。理科の内容を身につけることが本来の目的。そのためにタブレットを使うのですから、必要な機能が使えれば問題ないですよね。
ところで、Surface RTでは「また、RTは従来のウィンドウズ向けソフトをインストールできない、ドメインに参加できないといった機能制限もある」(http://asciipc.jp/news_trend/2013/03/25/surface_rt/より引用)とのこと。
Surface RT はノートPCとしても使えるメリットがあります。RTに対応したアプリでないと、利用できないデメリットもあります。
Windowsタブレットを使いたい場合は、RTではなくSurface Proを選んだほうが授業で使いやすいのでしょうか?
望月先生:目的によるでしょう。1人1台で、Officeの使い方や専用のソフトまで授業で使うとなると、SurfaceProでないと難しいのではないでしょうか?それなら安いindowsタブレットという選択肢もでてきますね。
参考URL:Microsoft SurfacePro3
http://www.microsoft.com/surface/ja-jp/products/surface-pro-3
-タイプカバーを組み合わせれば、ノートPCとしても十分使えて、いいですよね。Surfaceペンで手書きのメモも書けますし。
○活用で気になったことについて ④無線投影について
-Surface RTでは無線投影ができなかったとのこと。有線投影されたいと考えられたかと思いますが、どうしたでしょうか?
望月先生:AppleTVでAirPlay(ミラーリング)できるのは、iPadの大きなメリットですね。
自由に教室内を動くことができるので。これは大きなポイントなのです。
それがSurfaceRTでは難しかったので、Microsoftからのアドバイスで、Surface2(2代目)を別途数台お借りしました。
そのSurface2と、Net Gear PTV3000という機器の組み合わせでミラーリングできるようになりました。
参考URL:Microsoft Surface2
http://www.microsoft.com/surface/ja-jp/products/surface-2
Net Gear PTV3000
http://www.netgear.jp/products/details/PTV3000.html
指導者用Surface2だけミラーリングしましたが、グループで使っているSurfaceをわざわざミラーリングしなくても、そのままカメラで撮影すれば共有できるわけです。
この方法なら、iPadとSurfaceRTという組み合わせもできますね。
-なるほど。「Surface2と、NetGear PTV3000という機器の組み合わせでミラーリング」すればよいのですね。タブレットの長所を生かした活用法、とてもいいなあと感じます。
おわりに
今回は望月先生が中学校の授業でWindowsタブレットを利用した際の取り組みをお話してくださいました。
Windowsタブレットを授業で使いこなすための工夫・実践は、学校の先生方やIT業界の皆さまにも参考になるのではないでしょうか。今回も興味深いお話をありがとうございました。
>>「教育現場における「提示の工夫」 指導者の提示用タブレット・編 ~望月陽一郎先生のお話より~」に続く
参考記事
先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の32の取組みが紹介されています。
まとめ記事
今までに取材した「授業でのICT活用のポイント」「学校でICT機器を活用する時のポイント」「教材作成時に気をつけたい著作権の問題」などについては、以下の記事にポイントをまとめました。ぜひご参考にされてくださいね。
※インタビューの第1回目から11回目をまとめています。
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