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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

学校に現在配備されている端末について(2)+ 現在授業などで子供たちが使っているアプリ・サービスについて

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情報教育に関するさまざまな取り組みをされている望月陽一郎 先生に、2013年から教育現場の状況や先生のお考えについてインタビュー形式で伺っています。

今回は望月先生が独自に調査された「GIGAスクール端末活用の現状と次期に期待するものについてのアンケート」を踏まえ、「現在配備されている端末について」の続きと「現在授業などで子供たちが使っているアプリ・サービスについて」お聞きします。

【望月先生 プロフィール】

大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。Forbes Japan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)などを経験されています。自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』」などをサイトにて公開されています。

望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/

GIGAスクール端末活用の現状について

今回もまず「学校に配備されているGIGAスクール端末活用の現状」というテーマの続きをお伺いします。先生が20245月にとられたアンケートで「現在配備されている端末で困っていること」という質問がありましたが、回答を見ると、一番多かった項目が「Wi-Fi」、それから「バッテリー」となっていますね。それ以外の「その他」も多いです。学校現場で端末を使っていて、いろいろな困りがあるのですね。

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「現在使っている端末で困っていることがあるか(複数回答)」n=217

望月先生:そうですね。「Wi-Fi」については、端末というよりネットワーク環境についてだと思います。困りの内容を記述で回答してもらっていますが、

  • 一斉に使用したときになかなか繋がらない。
  • Wi-Fiが脆弱で、クラス全体で使う際に通信が遅くなる。

など、クラウドサービスを使うにあたってつながらなくなることで、端末の使用頻度が下がってしまうという問題は、GIGAスクール当初から言われていることですね。

また、「バッテリー」については、

  • バッテリーが消耗し、1日もたない。
  • リモートをしようとすると直ぐにバッテリー切れを起こす。

など、端末更新を間近に控えて問題が多くなっているようですね。端末をよく使うとバッテリーの劣化も早まるでしょう。

「その他」の内容で特に目立ったのが、「ストレージ容量がいっぱいになる」ということです。もともと端末のストレージが少ないものが多く、写真をいっぱい撮るといっぱいになる、アップデートしようにもストレージがいっぱいでできない、動きが遅くなった、など、GIGAスクール端末導入にあたり、価格の上限・前倒しでの導入(オンライン授業などのため)から十分なストレージのあるものでなかったからでしょう。

そのような理由があるのですね。使用頻度が増すほどトラブルが発生してしまうというのは、先生方・子どもたちにとって困りますよね。

次に「現在、子供たちが学校でどのようなアプリ・サービスを使っているのか」について伺いたいと思います。

学校でライセンスを使っているサービスについて

アンケートの中で「ライセンスを使っているサービス(小学校)」について、1位が「Google for Education」、2位が「学習者用デジタル教科書」、3位が「Microsoft 365 Education」となっています。

(ライセンスを使っているサービスとは、学校や教育機関が購入または契約しているソフトウェアやアプリケーションで、特定の機能やサポートが提供されるもの)

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「ライセンスを使っているサービス(小学校)(複数回答)」n=99

他の校種でも「Google for Education」「学習者用デジタル教科書」「Microsoft 365 Education」が多かったですね。Google Microsoft のライセンスはわかるのですが、この「学習者用デジタル教科書」が多いのはどうしてでしょうか。

望月先生:デジタル教科書には、「指導者用」という先生方が授業中提示に使うものと、子どもたちが自分の端末で使う「学習者用」があります。

従来から使われている紙の教科書は、法律で国が買い取り無償で配布することが決まっていますが、デジタル教科書はまだそこまでいっていなくて、国の補助や自治体の予算などでいくつかの教科のデジタル教科書が使われ始めています。

  • 外国語
  • 算数、数学

などの教科から使われ始めていますね。

以下のニュースでは「活用が進んでいない」というタイトルになっていますが、グラフで見ると、「すでに91%もデジタル教科書を使っている」ことがわかります。

https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20240923-OYT1T50003/

なるほど、今は移行期なのですね。

望月先生:また、「Google For Education」などライセンスを使っている割合を見ると、端末のOSChromeOSiPadOSWondows)に関係ないこともわかります。今はクラウドサービスを使うので、端末がなにかというよりも、どのサービスが使いやすいかが大切なこともわかりますね。

子供たちが使っているアプリ・サービスについて

では次に「現在授業などで子供たちが使っているアプリ・サービスについて」お伺いします。

「子供たちが授業や自宅でよく使うアプリ・サービス(小学校)」については、1位が「Google Classroom」、2位が「デジタルドリル」、3位が「ロイロノート・スクール」となっています。

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「子供たちが授業や自宅でよく使うアプリ・サービス(小学校)(複数回答)」n=99

私は教員ではないので基礎的なことを存じ上げない点が多いのですが、2位の「デジタルドリル」は初めて目にしました。文部科学省のウェブサイトでも活用方法の例が紹介されており、人気のあるサービスのようですね。

文部科学省のウェブサイトには「デジタルドリルのデータ等を適切に活用することで、子供の学習状況を把握し、どの問題で誰がつまずいているのかが分かりやすくなります。」と記載されており、うまく活用すれば子供たちの強みを発揮できるようにしたり、弱みを改善したりする助けになりそうですね。

参考:デジタルドリル 文部科学省https://www.mext.go.jp/studxstyle/skillup/19.html

望月先生:そうですね。従来のドリルと違う部分は、子どもが間違えたところをAIが判断し、類似問題を出したり、もう一度繰り返させたりすることで、その子どもに応じた対応をしてくれることですね。40人近くを教室で担当している先生方にとっても、それぞれの子どもたちにとってもよいサービスだと思います。

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「子供たちが授業や自宅でよく使うアプリ・サービス(中学校)(複数回答)」n=44

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「子供たちが授業や自宅でよく使うアプリ・サービス(高等学校)(複数回答)」n=17

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「子供たちが授業や自宅でよく使うアプリ・サービス(特別支援学校)(複数回答)」n=8

中学校で使われているアプリは、小学校と傾向が似ていますね。学年が上がっていくにしたがって、Google Microsoft サービスの割合が増えているように感じましたが、どうでしょうか。

望月先生:そうですね。学年が上がるにつれてインプットの場面よりアウトプット(作成・まとめ・発表)の場面が多くなってくるからではないでしょうか。

私も理科の授業で、グループごとに考えをまとめさせて発表させる場面を多くとっていました。今のように一人一人に端末があると、そういう場面でもより考えをまとめ発表しやすくなっているのだと思います。

そういうことなのですね。ご回答をありがとうございました。望月先生、今回も貴重な調査結果をお話しくださり、ありがとうございました。

次回は、次期更新端末について詳しくお伺いしますので、皆様もご期待ください。

>>「次期更新端末について」に続く(202411月公開予定)

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