8月24日。
それは、最も大切な友人山田大補くんの命日。

何年前になるでしょうか。
あの頃、ワタシたちは いつもいつもツルんでいました。
合コンで知り合ったA君と「一緒にテクノをやろう!」と盛り上がり、
そのA君から「仲間になってもらいたい人がいる」と紹介されたのが
山田くんとの始めての出会い。
新宿ALTAの前でガードレールに腰掛けながら待っていた山田くんは
その後ハンバーグカレーを食べながら、「すげー!最高!やさぐれてる!」と
ワタシのことを賞賛(?)してくれたものでした。

「テクノをやろう!」とは言ったものの、
当時のワタシたちにはDTMの知識も充分な機材もなく、
今から思えば、まるで原始人が木をこすって火を熾すがごとく
非効率的な作業をしたり、しなかったり。
結局、週末になるたび、夜遊びしたり、ダラダラしたり、ゴロゴロしたり、
ただただ3人つるんで楽しく過ごしていました。

それはワタシにとってまるで真珠のような時間で、
「いつまでも、こんな日々が続くといいなぁ」と思いつつも
「いやいや、こんな状態がいつまでも続けられるわけはない」
と思ったり、でもなんとかなるような気がしたりしていました。

そんなある日。
「オレ、結婚することにした!」と突然 山田くんが言い出し、
A君とワタシは思わずギャハハーッと笑ってしまいました。
だって、その頃 山田くんは結婚どころか彼女さえいなかったのですから。
でも何故か真剣な山田くんは、笑うワタシたちを尻目に、
まるで狩りをするかのように、理想のお嫁さんとなる人を探し、見つけ、
くどき、1年後には宣言どおり結婚してしまったのです。
いま思えば、彼には何か予感がしていたのかもしれません。

彼が結婚してから何となく疎遠になり、そこからさらに1年たったある日、
久しぶりに電話をしたときの山田くんの声は、とても元気で嬉しそうでした。
「ボーナス貰ったから、みんなに焼肉オゴるよー」
「えー、マジ。やったー! じゃあ、来週。来週になったら仕事が落ち着くから」

それが山田くんとの最後の会話になりました。
いつももらってばかりで、やっとご恩返しができる(焼肉だけど)と
思っていたのに、とうとうその機会はなくなってしまいました。

大きなケーキを三等分して、コーフンしながら食べた誕生日。
代々木公園のレイブ会場で開いた即席の「スナック マキ」。
始めて曲ができて、嬉しくて嬉しくてたまらなかったあの日。

新宿のクラブのお立ち台で楽しそうに踊っていた山田くん。
嬉しいことがあると、鼻の穴がプカーッと広がった山田くん。
誰よりも人が好きで、誰よりも人に優しかった山田くん。
棺の中を不思議そうにジッと見ていた、山田くんのお父さん。

山田くん

あの日はいっぱい泣いたけど、
なんだか今は、そんなに淋しくありません。
たぶん、山田くんの残してくれたものが
ワタシの中にも、みんなの中にも、
そしてこの世界のアチコチに
残って、生きて、進化しているからかもしれません。

ワタシは山田くんと出会えて、
同じときを過ごせたことを、本当に嬉しく思います。

山田くん、ありがとう。
また いつかキミと会いたいです。

鈴木麻紀

山田大補(shop33 Online)

STEREOTYPE PRODUKTS 山田大補追悼作品展「Works」(shop33 Online)


鈴木 麻紀

Special

- PR -
コメント
u-na 2007/09/05 09:41

社会人1年目のときに、大学のときの友達が亡くなりました。彼女は、平安文学を専攻し、卒論では「祀り」について書いていました。
お葬式の場で、教授が、「あなたが先に祀られてどうするの……」と、棺おけに泣き崩れたことを、いまでも鮮明に覚えています。
以来、つらいとき、ふっと彼女を感じるのです。
死してなお、彼女は私の隣りにいます。私もいつか、また、彼女と笑って会いたいです。

トラパパ 2007/09/05 11:24

とても感銘を受けました。
ありがとうございマス。
ずっと迷っていたのですが、似たようなエントリを書かせていただきたく、トラバさせてください。

ばんちょ~ 2007/09/05 23:05

u-naさん、トラパパさん。コメントありがとうございます。
同じ時間を過ごし、またいつでも会えると思っていた仲間が
ある日突然いなくなり、もう二度と会えなくなるというのは
とても不思議な感覚ですね。

>u-naさん
ワタシは逆に、何かいいことや嬉しいことがあると、
山田くんに会いたくなります。
彼のことをこうやって文字にすることは、なかなか出来
なかったのですが、山田君に胸を張って報告したい良いことが
個人的にあり、勇気をふりしぼって書いてみました。
山田くんが、目も鼻の穴もまん丸にして「まきさん、やったじゃん!」
と共に喜んでくれる様子が目に浮かびます。

>トラパパさん
その人が大切にしてきたことのために頑張る。
そういう生き方、とても素敵だと思います。
彼らが見守っていてくれる、そう思うと勇気がわいてきます。


コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/10251799

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

鈴木麻紀と丸の内ファイブ

鈴木麻紀と丸の内ファイブ

アイティメディアで、スキル/キャリア関連サービスを企画・運営しているチーム。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年6月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ikizama
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


Special

- PR -
最近のトラックバック
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ