すでに始まっているNVIDIA Jetson Thor実装。Jetson ThorとLLMを実装した自律的に飛行するドローンの衝撃
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米国時間8月25日に発表されたばかりのNVIDIA Jetson Thor(ロボットに搭載できる超高性能エッジコンピュータ。LLMモデルと一緒に動作し、自律的に考えて場面場面に対処できるロボットが具体化できるデバイス。"トレーニング"していない状況に対処できるロボットが作れる)。
Jetson ThorとLLMを実装した自律的に飛行するドローンの事例
これの威力を示す開発事例がもう現れました。これはNVIDIAが世界のロボット研究者の中からピックアップした人達に前もってJetson Thor招待ユーザーとしてこのデバイスをプレゼントしていたからだと思います。
チューリッヒ大学でドローンを研究しているDavide Scaramuzza。この教授が発表した論文が科学誌「ネイチャー」に掲載されたそうです。強化学習によってトレーニングされたドローンが人間のドローンレース大会で人間を凌ぐ性能を示したことを論文にしたとのこと。
おそらくNVIDIAはこの論文を読んで、「じゃあJetson Thorをプレゼントして彼がどう使うか見てやろうじゃないか」と考えたのでしょう。そのJetson Thorが彼の元に届いて(動画ではプレゼントのパッケージで受け取ったことが描写されています)、早速デモ機に実装した。そうして飛ばせた自律的に動くようになったドローンのデモが以下。ぜひ動画現物をご覧下さい。
この動画付き投稿は以下のことを示しています。
・Jetson Thorはドローンにも装着できるほど小さく、軽い。
・Jetson Thorを装着したロボット及びドローンはインターネット接続なし(Wifiなし)で動作する。
・オープンソースのLLMと組み合わさって動作する。このデモでは視覚情報を理解できるオープンソースのQwen 2.5 VL(アリババ製)が実装されている。(おそらくJetson Thorのメモリにインストール)
・視覚情報を理解できるLLMとJetson Thorを組み合わせると、簡単な自然文のプロンプトで、その指示通りにドローンが自律的に動作する。
フィジカルAIはロボットにとどまらない、どでかい市場である
チューリッヒ大学でドローンを研究している--ネイチャーに論文が載ったということは世界最先端の研究をしているということでしょう--教授の動画付き投稿が示している含意は深いです。
・Jetson Thorはロボットだけでなくドローンにも使える。
ということです。これはすなわち「動く機械」であれば何にでも使えるということを示しています。昨日の投稿で書いた農業機械や建設機械(キャタピラーがすでに研究を始めています)が、Jetson ThorとLLMを搭載することによって「人間の言葉によって指示できる、自律的に動く便利なマシーン」になるということです。これがジェンセン・フアンの言っていた「フィジカルAI」です。彼は「AIが、自分で感じて(センサーのこと)、考えて、動くようになる」という意味のことを言っていました。
フアン氏は「あらゆる動くもの――車やトラックから工場や倉庫に至るまで――がロボットになり、AIが宿る時代が来る」と語り、この物理世界の産業デジタル化(フィジカルAI)の潜在力を示しました。
このドローンのデモはフィジカルAIの裾野の広さを窺わせる一つの事例であったということです。
「今目の前にあるロボット」がJetson Thorで自律的に動く頭の良いロボットになる
また、この事例は、次のことも示しています。
ロボットを開発しているすべての企業や研究者は、従来NVIDIAスタックでロボットを開発していなくても、今あるそのロボット機体にJetson ThorとオープンソースのLLMを実装すれば、自然文のプロンプトで指示できて、放っておけば、自律的に動いて指示した内容をやってくれる自律的な頭の良いロボットが仕上がるということです。
これは日本のロボット研究を根本から変える事実だと思います。Jetson Thorは開発キット付きですでに日本で販売が開始されています。NVIDIAの用意周到さが窺われます。すべてのロボット研究者や開発者はすぐにJetson Thorを注文すべきだと言えるでしょう。