AIの歴史から今のAIを考えてみて
こちらのビデオが面白そうだったので聞いてみました。こんな感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=qYNweeDHiyU
AIについてあなたが誤解しているかもしれない4つの事実
―― IBMの専門家解説から読み解く「エンジニア視点のAI基礎」
ChatGPT に代表される生成AIが一気に一般化し、「AI」「機械学習」「ディープラーニング」といったキーワードが、もはや日常語になりました。しかし、技術用語が独り歩きする一方で、それらがどんな背景を持ち、どこが本質的な価値なのかを正しく理解しているエンジニアは意外と多くありません。
この記事では、IBM の専門家による解説から 「AIを巡るよくある誤解」 を4つに整理し、技術者として押さえておくべき核心ポイントをまとめます。
最新AIの表層的なイメージから一歩踏み込み、「なぜ今のAIが成立しているのか」を俯瞰できるはずです。
1. AIは"ここ数年の技術"ではない ---- 1980年代から続く長い物語
AIが突然現れたかのように語られることがありますが、実際には1980年代から大学や研究所で地道に研究されてきた分野です。
当時の主役は Lisp、Prolog、そしてエキスパートシステム。
現在の巨大モデルとは異なり、明確なルールを人間が書き、推論する仕組みでした。
IBMの専門家も「学生時代にAI研究をしていた」と語っています。当時はAIが実用化されるまで「あと5〜10年」と言われ続け、いわば"永遠の未来技術"でした。
そして今、
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データ量の爆発
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GPU/TPUをはじめとした計算資源の進化
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分散学習の技術成熟
といった条件が揃い、ようやく AI が「動く技術」になったに過ぎません。
AIブームは突然の革命ではなく、30年以上の蓄積の上に成立した地層のようなものなのです。
2. ディープラーニングは"ブラックボックス"---- その予測不能性は脳に近い
ディープラーニングは多層ニューラルネットワークにより、人間の脳の構造を抽象的に模倣しています。その性質上、入力に対して必ず同じ出力が返るわけではなく、挙動は時に予測不能です。
IBMの専門家はこう語っています。
私たちは、なぜその結果が出たのかを完全に理解できない場合があります。
なぜか?
層の内部で形成される表現(特徴量)は人間が直接解釈できず、ネットワーク全体の振る舞いは非線形かつ高次元。
その結果、「モデルが何を見てそう判断したのか」を説明しきれない状況が生まれます。
このブラックボックス性は、
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エラー分析の難しさ
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バイアス対策や責任所在の議論
という課題を生む一方、 -
非常に高い表現力
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人間が直感的に捉えられない特徴を学習する能力
といった強みの源でもあります。
つまり、ディープラーニングは "計算可能だが説明しきれない"、極めて人間的な領域に足を踏み入れた技術と言えます。
3. 生成AIは「既存データの組み合わせ」では説明しきれない ---- 作曲家のような生成プロセス
「生成AIは既存データのコピーでは?」という指摘はよく耳にします。しかし実際は、もっと抽象度の高い仕組みで動いています。
音楽の例がわかりやすいでしょう。
音符の種類は限られていても、作曲家はそれを組み合わせて新しい曲を生み出します。
生成AIもこれと同様で、
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単語(音符)
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文法・構造(音楽理論)
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学習したパターン(作曲家の"経験")
を用いて「未学習の文章」を生成できます。
生成AIのアウトプットは、単なるコピーではなく、
「学習した確率分布に基づく新規サンプルの生成」
という点がポイントです。
だからこそ、
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文脈を理解した返信
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新しい文章・コード・画像
が生まれ、我々が「創造的」と感じる結果が得られるのです。
4. 現在のAIブームを作ったのは "基盤モデル (Foundation Models)" の登場
2020年代以降、AIが一気に"使える技術"に変わった理由はたった一つ。
基盤モデル(Foundation Models)の誕生です。
代表例はもちろん LLM(大規模言語モデル)。
これは、従来の「次の単語を予測する」オートコンプリートの延長ではありません。
LLMは、
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次の文
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次の段落
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文書全体
まで予測し、首尾一貫した文章を生成できます。
つまり、単語予測の精度向上ではなく、
言語という"システムそのもの"をモデリングした
ことが本質的な飛躍です。
この構造的な進化が、AIを
「研究室のおもちゃ」→「現場の実務ツール」
へ押し上げた決定的な要因だったと言えるでしょう。
まとめ ---- AIの本質は"技術史 × 数理モデル × 計算資源"が交差する地点にある
AIは1980年代から続く長い歴史を持ち、ディープラーニングという"ブラックボックス的"なモデルを経て、基盤モデルという新たなアーキテクチャへたどり着きました。
生成AIは、作曲家が音符を使い新しい曲をつくるように、学習したパターンから新たな表現を生み出します。
そして今、AIは私たちの日常に組み込まれ、仕事の進め方そのものを変えようとしています。
エンジニアに求められるのは、
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"魔法"ではなく"積み重ねの技術"としてAIを見る視点
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ブラックボックスの限界と向き合う姿勢
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基盤モデルが生む新たなアーキテクチャへの理解
です。
AIを正しく理解することは、未来の技術選択を誤らないための最初のステップに他なりません。