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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

企業をハード/ソフトに分離するソフトウェア定義経営:AIで時価総額増大戦術を特定して会社に実装する

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これまでChatGPT最新版やGemini最新版をDeep Researchと掛け合わせて使って、様々な企業が使えるユースケースを開発して来ました。

AIは、単に社員が使えるようにしただけでは、「ただの箱」のようなもので、知的生産性向上などと言ってもたかが知れています。時価総額はこれっぽっちも動きません。日本企業では最も早くにChatGPTを導入した大手企業のことが頭に浮かびます。

企業スケールの独自の「AIユースケース」が時価総額を生む

ユースケースこそが時価総額を生む。こういう頭の切り替えが必要なフェーズに入ったと思います。AIを導入したけれども、実際に役に立ったと実感できている企業は5%に過ぎない、みたいな調査結果が複数出ていますが、こういった調査結果が、「AI、ユースケースがなければただの箱」(昔言っていた「コンピュータ、ソフトウェアがなければただの箱」のもじりです。古い方はよくご存知だと思います)であることを証明しています。

社内のホワイトワーカー全員にAIを配布したとしても、それぞれの社員に合ったユースケースがなければ、翻訳ツールに使ったり要約ツールに使ったりするだけで、多少は作業時間短縮になるでしょうけれども、時価総額には全く影響を与えません。

最近やらせていただいた以下のセミナー

AI を活用した海外市場調査と情報収集ノウハウ

外注コストを年間1,000万円節減できる!ChatGPT5を駆使した海外市場調査

で得た受講者の方の反応から、大手企業のビジネスパーソンの中には、かなり高度な自分独自のAIユースケースを身に付けつつある方が、いるところにはいるようです。しかし多数派ではありません。エベレット・ロジャーズのイノベーション普及理論で言うイノベーター層の2.5%程度というところかと思います。

こういう、自分独自のAIユースケースを身につけたビジネスパーソンは、おそらく、周囲にいる同僚と比較して、ゆうに10倍ぐらいの生産性を示すと思います。情報収集力、分析力、提案書や報告書の作成能力、出来上がった知的成果物の質の高さ、上司や経営層に対するコミュニケーションのパスの見つけ方などなど。

仮に経営企画部にこういう自分独自のユースケースを身に付けたスタッフが3名でも居れば、おそらく、社長を動かす力もあり、企業戦略やマーケティング戦術やマーケティングメッセージや顧客とのエンゲージメントで矢継ぎ早にオプションを連発して、経済メディアも好感して書くようになり、商品のキャッシュ創出力もぐーんと増して、結果として株式投資家達がPERをどんどん高めるでしょう。

言っているのは、「時価総額に効くAIのユースケースがある」ということです。

それは優れたビジネスパーソン一人の個人ベースの話だけではなく、「企業スケール」でも言えることです。

以下は素朴な議論でしたが、時価総額に効くAI時代のやり方があるだろう、ということを提起しています。

企業価値を引き上げる「先読み経営」と「多数派からの分離」戦略 [Thought Leadership](2025/4/20)

【東証プライム経営者向けのメモ】「多数派からの分離」をしないとAIは使いこなせない(2025/4/28)

山下隆義氏(中部大学教授)

中部大学 教授
山下 隆義 氏

NVIDIA GTC 2026参加
山下隆義氏 同行
『米国フィジカルAI最前線調査ミッション』

(中部大学工学部情報工学科/大学院工学研究科 教授)

「NVIDIA GTC 2026」参加とシリコンバレーのAIロボティクス企業訪問
期間:2026年3月15日(日)~3月21日(土) <7日間>
訪問都市:サンノゼ / シリコンバレー


お申し込み締切は2026年1月30日

企画・実施:株式会社コラボレート研究所

方法論としての「Software-Defined 経営」:企業をハードとソフトに分離する

では、その「時価総額に効くユースケース」を、天才的な社員の個人的なセンスに頼るのではなく、組織的な「方法論」として量産するにはどうすればよいか。 その答えが、私が提唱する「Software-Defined 経営(ソフトウェア定義経営)」です。

この概念は、昨今の防衛テック(Andurilなど)や自動車産業(SDV:Software-Defined Vehicle)で起きているパラダイムシフトを、企業経営そのものに応用したものです。 具体的には、企業という巨大な生き物を、以下の2つの階層にはっきりと分離して認識することから始まります。

ハードウェア(HW):変えにくい資産 工場、設備、店舗網、現有の従業員、過去の財務資本、確立されたサプライチェーンなど。 これらは物理的実体があり、刷新するには巨額のコストと時間がかかります。

ソフトウェア(SW):変幻自在な「定義」 ビジネスモデル、顧客への提供価値、ブランドのストーリー、マーケティングメッセージ、そして**「誰に、何を、どう売るか」というユースケース**。 これらは「言葉(Logos)」と「文脈」で構成されており、実はAIを使えば、コストをかけずに瞬時に書き換えることが可能です。

「ハードウェア」を固定し、「ソフトウェア」をAIで書き換える

多くの日本企業が苦しんでいるのは、「ハードウェア」を変えようとしているからです。「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と称して、既存のシステムや組織構造そのものを無理やり作り変えようとし、現場の抵抗に遭い、疲弊しています。

「Software-Defined 経営」のアプローチは逆です。 「ハードウェア(既存資産)」は一切変えません。そのまま使います。 その代わり、そのハードウェアの使い方や意味付けである「ソフトウェア」を、AI(特にDeep ResearchとLLM)と協業して、ドラスティックに書き換えるのです。

例えば、ある製造業が持っている「工場(HW)」を、これまでの「部品を作る場所(Old SW)」という定義から、「都市のエネルギーを調整する巨大な蓄電池(New SW)」として再定義したらどうなるか? あるいは、アパレル企業の「機能性素材(HW)」を、「ファッション(Old SW)」ではなく、「気候変動に適応するための生活インフラ(New SW)」として再定義したら、全く新しい国で売れるのではないか?

このように、「自社のハードウェアリソース × AIによる新しい意味の定義」という掛け算を行うことで、時価総額に直結する強力なユースケースを連続的に生み出すことができます。

Deep Research が「市場の空白」を見つけ、LLMが「価値」を実装する

ここで重要になるのが、私が普段から活用している ChatGPT の Deep Research や Gemini の推論能力です。 人間だけの脳みそでは、自社の既存の定義(思い込み)から抜け出すことは困難です。しかし、AIは世界中の膨大な情報をスキャンし、「今、世界のどこに、自社のハードウェアを高く評価してくれる市場(空白)があるか」を客観的に見つけ出します。

AIは単なる時短ツールではありません。 企業のハードウェアという「身体」に、新しい「魂(ソフトウェア)」を吹き込み、時価総額という「評価」を一変させるための、経営参謀なのです。

次回の投稿からは、この「Software-Defined 経営」の視点を用いて、ユニクロ、リクルート、日清食品、パナソニックといった日本を代表する企業が、具体的にどのように自社を再定義し、次世代の価値を生み出せるか、そのシミュレーション(勝手ユースケース開発)を行っていきたいと思います。

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