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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

スマートシティから発送電分離まで:拙著「電力供給が一番わかる」刊行のお知らせ

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あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

昨年のこの時期はこってり仕込みをした「新春夢想」を以下のように5本掲げさせていただきましたが、今年の三が日はゆるゆる過ごしました。

以下の新春夢想、今見ても、中身がまだまだ「夢」っぽいですね^^;。ということで再掲。

[新春夢想] 関西空港の営業権をPPPで海外資本に譲渡
[新春夢想] 発電ビジネスを組み合わせて入居コストを下げるスマートシティ
[新春夢想] 福岡空港をPPPにより拡張、ローコストキャリアのハブにする
[新春夢想] 公的年金資金で官製インフラファンドを設立してアジアに投資する
[新春夢想] 在来線を走れる秋田新幹線E3系をコスパの高い高速鉄道として海外に売る

■拙著「電力供給が一番わかる」刊行のお知らせ

さて、そろそろ店頭に並ぶタイミングですので、拙著のお知らせをさせていただきます。

2009年夏から私的なスマートグリッド勉強会(現在はスマートコミュニティ勉強会と改称)の世話人をやらせていただいていることがきっかけとなって、「スマートグリッドも含めて電力供給全般の理解ができるような本を書いてみませんか」というお話が参りまして、夏から秋にかけてうんうんうなりながらまとめていた本がようやく形になりました。

技術評論社さんから「電力供給が一番わかる」という書名で出ています。

今週末ぐらいから書店に並ぶようです(大きな書店の電力実務書の棚にあると思います)。立ち読みが難しい方のために、最終稿のゲラを4見開き分、末尾に掲げましたので、それをご覧になって中身をご判断下さい。目次情報もあります。

■本書の狙い

本書の狙いは、一言で言うと、電力業界以外の方がスマートグリッド、スマートシティ、再生可能エネルギー発電事業に携わる際に、どうしても必要になる電力系のキーワードをセットにして一冊に収めたかった、というところです。これ一冊に目を通すことで、スマグリ系の情報だけに接しているだけではどうしても理解できなかった、電力業の核の部分が理解できるようになると思います(以下の目次参照)。
ソフトバンクさんのように、他業界から再生可能エネルギー事業に参入される方にも同じことが言えます。

■数珠つなぎに必要になる知識

以前の勤務先でスマートグリッドのリサーチをしばらく行い、その後、上記のスマートグリッド勉強会で関連の知識のアップデートを続けていくなかで、スマートグリッドを理解するには、かなり広範囲な知識が必要であることがわかってきました。例えば次のような具合です。

例1:スマートグリッドは、電力の需給の課題をITの仕組みを使って解決するものだと言えますが、電力の需給は「同時同量」や「電力系統」に関する基礎的な理解がないと、どうにもイメージしにくいものです。また、日本固有のスマートグリッドのニーズを理解するには、日本の「電気事業制度」の基本事項に加えて、各電力会社の系統の連系の仕方が欧州のように「メッシュ型」ではなく「くし型」であり、「連系可能量」に制約があって、「太陽光」や「風力」のように出力変動の激しい電源を系統に接続することが難しいという大前提を踏まえる必要があります。その上でないと「定置型蓄電池」のスマートグリッド的な活用のよさが見えてきません。「ダイナミックプライシング」や「デマンドレスポンス」の役割もそうした事柄を踏まえて初めて、「あ、そういうことか」とわかってきます。

例2:日本における「再生可能エネルギー」の行方を概観するには、「固定価格買取制度」のような制度面に加えて、「太陽光」「風力」「地熱発電」「バイオマス」の仕組みに関する理解もほしいところです。また、欧州では陸上風力もさることながら「洋上風力発電」が盛んに行われているのに、なぜ日本ではそうではないのかということもわかれば、なおよいと言えます。
その他、「原発事故以後」に、電力供給の基本的な構造がどのように変化したか、資源小国である日本が従来から頼ってきた「LNG・天然ガス」や「石炭」が日本にとってどういう意味を持ち、それに対して、各再生可能エネルギー発電はどういう位置づけになるのか、というような、既存の発電燃料との対比も不可欠です。再生可能エネルギー発電の動向だけを見ていると、日本の電力需給という大きな図式での方向感が得られないのが普通です。

といった具合に、電力に関係した世界では、1つの事柄を理解するのに数珠つなぎに色々な事項の理解が必要になってきます。しかし、われわれ電力業界の外にいる人間にとっては、その数珠つなぎで必要になる事項をインプットしようと思っても、あちこちに散在している資料に目を通す必要があって、効率的な勉強ができにくいという状況にありました。

そのため、本書では、そうした数珠つなぎで必要になる事項を各方面から拾って、前提となる知識がない方にもわかりやすいように記してみました。これ1冊で「展望」が開けるように書いたつもりです。

現在、議論されようとしている「発送電分離」についても、日本の数多くのメーカーが取り組んでいる「スマートシティ」についても同様で、そのコンテキストを理解するには、日本固有の電力事情をインプットしておく必要があり、結局、本書で取り上げているような諸事項をざっと理解しておくことが早道となります。

ということで、ご関心がおありでしたら、ぜひ立ち読みなどをお願いします。

とはいえ、大きな書店がお近くにないとか、書店で見つけられなかったという方のために、以下に4見開き分をサンプルとして掲げます。

■ページ見本

11

1-1 同時同量

34

3-4 ダイナミックプライシング

62

6-2 ガスタービン発電

65

6-5 今後も重要な石炭の位置づけ

■「電力供給が一番わかる」目次

第1章 電力供給の基本
1 同時同量
2 発電と送電と配電
3 日本の電力系統
4 東日本と西日本の周波数
5 原発事故以前の電源構成と事故以後の電力供給
6 再生可能エネルギーの課題

第2章 日本と海外の発電と送電
1 電源別発電コスト
2 商社が取り組む海外の発電
3 中東で盛んな発電+海水淡水化
4 新興国の発電所建設ラッシュ
5 欧州のメッシュ型送電網
6 2003年アメリカ北東部大停電
7 中国の超高圧長距離送電
8 日本の電気事業制度
9 活発にならない日本の電力ビジネス

第3章 スマートグリッドの基本
1 スマートグリッドとは
2 スマートメーター
3 スマートメーターが普及するアメリカ
4 ダイナミックプライシング
5 課題も残るスマートメーター
6 日本スマートグリッド不要論はなぜ出たか
7 スマートグリッド実証実験

第4章 スマートグリッドの活用
1 HEMS
2 BEMS
3 デマンドレスポンス
4 ビークル・ツー・グリッド
5 定置型蓄電池の種類
6 スマートグリッド的な定置型蓄電池利用

第5章 再生可能エネルギー発電の基本
1 再生可能エネルギー発電の動向
2 固定価格買取制度
3 太陽光発電の基本
4 風力発電の基本
5 太陽熱発電の基本
6 地熱発電の基本
7 ごみ発電の基本
8 バイオマスの基本

第6章 これからの電力需給を考えるためのキーワード(1)
1 LNGとシェールガス
2 ガスタービン発電
3 ガスコンバインドサイクル発電
4 コージェネレーション
5 今後も重要な石炭の位置づけ
6 クリーンな石炭発電(1) 超々臨界圧
7 クリーンな石炭発電(2) IGCC
8 スマートシティを理解するポイント

第7章 これからの電力需給を考えるためのキーワード(2)
1 洋上風力発電
2 UHV(超高圧送電)
3 HVDC(高圧直流送電)と海底送電
4 可変速揚水発電
5 企業の自家発電
6 発送電網分離
7 日本のスマートグリッドのゆくえ

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