AIエージェントは「期待外れ」? マーケティング現場で見えてきた課題と次の一手
ガートナーは2025年10月29日、マーケティングテクノロジー分野の最新動向をまとめた調査結果を発表しました。
ガートナーによると、AIエージェントを導入または試験的に使っているマーケティングリーダーのうち、45%が「ベンダーが提供するAIエージェントは期待していたほどの成果を出していない」と回答しました。
AIエージェントは、生成AIを活用して自律的に業務を行う仕組みとして注目されています。導入企業は急増しており、すでに8割以上が活用を始めていますが、技術基盤の未整備や人材不足が成果の足かせになっているようです。
今回は、調査結果から見えてきたマーケティングAIの課題と、今後企業が取るべき方向を考えます。
AIエージェント導入が急拡大 8割の企業が活用へ
AIエージェントとは、人の指示を待つのではなく、自律的に判断し、タスクを実行するAIシステムを指します。マーケティングの世界では、生成AIの進化とともにこの技術の導入が一気に進みました。
ガートナーの調査によると、マーケティングリーダーの81%がAIエージェントを導入中または試験的に利用しており、その多くが業務効率化や生産性向上に期待を寄せているといいます。
導入の主な目的は、「コンテンツや広告素材の制作」(52%)、「既存コンテンツの編集・最適化」(49%)、「キャンペーン管理」(43%)などです。つまり、AIにクリエイティブな業務を部分的に担わせることで、時間とコストを削減しようとする動きが加速しています。
一方で、ガートナーのベンジャミン・ブルーム副社長は、「AIエージェントの導入は目的ではなく手段。真に重要なのは、どれだけビジネス価値を生み出せるかだ」と指摘しています。ツールを導入しただけで成果が上がるわけではなく、運用体制の整備が不可欠です。
半数が「社内の準備不足」 データと人材が壁に
AIエージェントの普及が進む一方で、多くの企業が導入の壁に直面しています。ガートナーの調査では、回答者の半数が「自社の技術基盤やデータ環境が整っていない」と答え、同じく半数が「AIを扱う人材が不足している」と回答しました。
AIエージェントは大量のデータをもとに意思決定や提案を行うため、企業内部のデータが統合されていないと十分に機能しません。マーケティングデータが部門ごとに分断されているケースでは、AIが正確な判断を下せず、結果的に成果が限定的になってしまいます。
また、AIを安全かつ継続的に運用するためには、データガバナンスやセキュリティの仕組みも欠かせません。ガートナーのアパラジタ・マズムダール上級主席研究員は、「AIエージェントの導入効果はベンダー任せではなく、企業自身の基盤整備と人材育成によって左右される」と強調しています。
つまり、AI導入の本当の課題は技術そのものではなく、企業側の"受け皿"の準備にあるということです。
ベンダー依存の限界 求められる「自社仕様のAI」づくり
今回の調査で注目すべきは、AIエージェントを導入した企業の45%が「ベンダー製のAIでは期待した成果を得られていない」と答えた点です。
多くのAIエージェント製品は汎用的に作られており、どの企業でもすぐ使える反面、それぞれのブランド戦略や顧客特性に最適化されていないことが多いといいます。
このため、導入初期には生産性向上が見られても、長期的には差別化につながらず、AIが生み出す成果が頭打ちになる傾向があります。
今後は、ベンダー提供のAIをそのまま使うのではなく、自社データや顧客知識を反映させた「自社仕様のAIエージェント」を構築する動きが重要になるでしょう。
そのためには、マーケティング部門がIT部門やデータ部門と協力し、モデルのチューニングやデータ連携を行う体制を整えることが必要となります。
今後の展望
ガートナーの調査は、AIエージェント活用が次の段階に入っていることを示しています。AIを活かすためには、企業が自社データを整理し、AIが学びやすい環境を整えることが欠かせません。また、AIが生成したコンテンツや提案を評価・改善するための仕組みも必要でしょう。
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