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Software-Defined Network(8)各社の取り組み(VMware+Nicira編)

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VMwareは2012年7月23日、Niciraを買収することを発表しました。買収総額は、買収総額は約10億5000万ドルで、2億1000万ドル分の権利未確定の株式報酬も支払い、2012年後半に完了する予定となっています。VMwareにとっては過去最大の買収となり、Niciraの買収は、VMwareのクラウド戦略において重要な位置づけとなっています。

Niciraは2007年創業のカリフォルニア州パロアルトに本社を置くベンチャー企業で、共同創業者のマーティン・カサドCTO(最高技術責任者)は、「OpenFlow」のコアのメンバーとして開発に関わってきています。

Niciraの中核商品は、2011年7月に発表したネットワークの仮想化ソリューション「Nicira Network Virtualization Platform(NVP)」で、SDNの代表的なベンダーです。発表当時は外部に情報を提供しないステルスモードでしたが、2012年2月から正式発表し製品やソリューションの内容を明らかにしています。すでにAT&T、Rackspace、eBay、Fidelity Investments、NTTなどの大手企業に採用されています。

OpenFlowを使ったSDNの構成モデルには、大きく分けて「オーバーレイ方式」と「ホップバイホップ方式」の二つがあります。Niciraは、「オーバーレイ方式」を採用し、NECの「UNIVERGE PFシリーズ」などは「オーバーレイ方式」を採用しています。NTTデータが2012年6月8日に発表した「バーチャルネットワークコントローラ Ver2.0」は、二つの方式に対応しています。

Niciraが採用する「オーバーレイ方式」はノード上の仮想スイッチ間をトンネルで結ぶ構成で、論理的なネットワークを構成し、既存のネットワークのコア部分のファブリックをそのまま使えるというメリットがあります。一方、「ホップバイホップ方式」は、OpenFlowの対応機器のみでネットワークを構成する方式で、OpenFlowコントローラーで制御することにより、柔軟な経路制御などを実現できるメリットがあります。

NiciraのMVPを構成する中核となるコンポーネントは、コントローラと仮想スイッチ「Open vSwitch(OVS)」です。コントローラはOpenFlowを使い、仮想スイッチ(OVS)を制御し、別々のハイパーバイザー上で稼動する仮想マシン同士で通信を行うことで、ネットワークの仮想化を実現します。

Nicira買収後の戦略は?

VMwareがNiciraを買収の発表にあたって、クラウド向けのネットワーク製品のポートフォリオの拡充を図るとともに、買収後もNiciraのソリューションのオープン性を維持し、他社製品のサポートを継続する予定であると表明しています。

VMwareはこれまで、OpenFlowとは異なるVXLANの技術を採用してネットワークの仮想化を実現する技術の開発をシスコやシトリックスなどと共同で開発をを進めてきました。VMwareは、ニュースリリースでOpenFlowとXVLANの双方の技術を引き続きサポートしていく方針を示していますが、今回の買収でOpenFlowの流れに大きくシフトしていくことが予想されます。

Niciraは、これまでAT&TやRackspaceやNTTなどのクラウドサービス事業者を主なターゲットとしてきました。しかし、今回の買収で将来の主要なターゲットはクラウドサービスを利用するユーザに大きく変化していくと予想されます。

複数の異なるパブリッククラウドやプライベートクラウドを相互接続し、ユーザ組織ごとの専用の仮想データセンターを構築する際、ネットワーク機能のリソースプールをこれらのネットワークインフラの上に構築できるようになります。ユーザはそのネットワークインフラをオンデマンドのサービスとして利用できます。

さらに、OpenStackやCloudStackなどのクラウド基盤ソフトウェアにNVPのプラグインを導入すると、仮想サーバやストレージだけでなく、仮想ネットワークもプロビジョニングできるようになり、クラウドインフラとネットワークインフラが統合された環境を、ユーザ自身がオンデマンドで自ら設定変更や管理ができるようになります。そうなれば、ユーザ利用のすそ野は拡大し、VMware自身も新たな事業分野としてシェアを拡大させていくことになるでしょう。

 

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