情報通信の展望2010(2):通信放送行政編
民主党政権になり、今年は本格的に情報通信行政のあり方や規制・制度の見直しについて本格的に議論されていくことになるでしょう。2010年に関連しそうな通信放送行政について、少し整理をしてみたいと思います。
通信放送行政のあり方
民主党のマニュフェスト「政策集INDEX2009」では、通信放送の中立性を確保することを目的に「通信・放送委員会(日本版FCC)」を設置し、通信・放送行政を移管することが明記されています。昨年の12月16日には、「通信・放送委員会(日本版FCC)」について議論する有識者会議の初会合が開かれ、諸外国の事例も調査し、設立することの是非も含めて1年間かけて議論される予定です。米国のFCCの場合は、政策立案(振興)と法執行(規制)を独立機関として一体運営をしていますが、英国のOfcomように振興と規制分離するといったケースもあります。振興と規制のバランスをどのように保っていくかが、大きな議論のポイントなるでしょう。
また、原口総務大臣は、通信・放送分野の行政機能を統合した情報通信で一つの独立した「情報通信文化省」を新設することが必要であるとの認識を示しています。本省の役割として、情報通信の基盤整備から活用策の検討までを一元的に対応し、例えば、経営不振にあえぐテレビ・ラジオ局を支援するために出資比率規制を緩和することも検討にいれています。出資比率が規制されているのは、「マスメディア集中誹謗の原則」に基づき、特定の企業が複数の放送局を支配することを防ぐなどの理由があります。また、著作権については、総務省、経済産業省、文化庁など複数の省庁にまたがっており、一元的に見ていく機能も必要であるとしています。セキュリティについても同様のことが言えるでしょう。
組織のあり方や設立の是非をめぐってこの1年間活発な議論が交わされそうです。
電波政策による新たな市場の形成
総務省では、昨年12月2日に「新たな電波の活用ビジョンに関する検討チーム」の初会合が開かれました。新たに利用可能な電波を創出するホワイトスペースの活用など、新たな電波の有効活用と早期実現に向けて検討が始まっています。ホワイトスペースの活用によって、地域活性化や産業創出など内需主導型の経済成長による市場拡大が期待されています。特にテレビの周波数帯は伝送特性が良いために、事業者が参入できる土壌が整えば、地域限定の様々なサービスが創出される可能性がある。2010年中に、経済効果や利用モデル、制度的・技術課題を分析し、最終報告がとりまとめられる予定です。
デジタル時代に対応した著作権保護法制度の見直し
情報のデジタル化が進む中において、政府は、デジタル化・ネットワーク時代に対応した著作権保護法制度を整備するために、著作権法の抜本的な見直しに向けた検討を進めてきています。その結果、2010年1月1日から「著作権法の一部を改正する法律」が施行されています。主な改正の概要には、検索サービスを実施するための複製など、権利者の所在が不明の過去の放送番組などのインターネットでの二次利用、国立国会図書館における所蔵資料の電子化など、インターネットなどを活用した著作権利用の円滑化を図るための処置が盛り込まれています。デジタルコンテンツにおける著作権の扱いについては、諸外国と比較しても遅れており、2010年はデジタル時代に適した著作権法のあり方についてさらに踏み込んだ議論や実証が必要となってくるでしょう。
昨年、12月30日に政府が公表した「新成長戦略」においても、「情報通信技術利活用を促進するための規制・制度の見直し」について明記されています。情報通信分野の利活用が国際競争力の強化や市場の成長において重要な役割を占めるでしょう。そのため、情報通信法をはじめとして規制・制度の見直しについて十分な検討が重要となる年になるのではないでしょうか。
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