情報通信の展望2010(4):スマートフォンの躍進
モバイルブロードバンドの対象が広範囲に広がりにつれ、アップル社のiPhoneに代表されるように、スマートフォンへの人気が急上昇しています。スマートフォンは、PCに近い利用ができ、インターネット関連サービスの使い勝手が良いため、今後の急速な市場拡大が予想されています。
スマートフォンの市場拡大に伴ない、端末競争、モバイルOS競争、アプリケーション競争など、様々なレイヤーで国境を超えた競争が繰り広げられることが予想されます。端末メーカーは、グーグルのAndroidやWindows MobileやSymbianなどのどのOSを採用するかによって、勝敗を大きく左右することになるでしょう。
パソコンの分野では、Windowsがほぼ独占している状態ですが、スマートフォンでの市場ではマイクロソフトも追いかける立場にあり、OSの覇権争いの動向が注目されます。
その最右翼となり注目されているのが、Android OS搭載のスマートフォンです。米グーグルは、1月5日、スマートフォン「Nexus One」を発表しました。グーグルは「Nexus One」にAndroid OS 2.1を搭載し台湾のHTC社と共同で開発し、スマートフォンのさらに上をいく“スーパーフォン”と位置づけています(関連記事)。米国では即日販売を開始し、日本でも発売されるといううわさが流れています。これまでグーグルは、Android搭載端末は、端末メーカーが開発して端末メーカーのブランドで販売していましたが、Nexus OneはGoogleのブランドで販売しており、グーグルのスマートフォン分野での影響力は強まってきています。
また、ソニー・エリクソンが欧米で2月に発売を予定しているAndroidを搭載する「XPERIA X10」の発売を予定しており、日本での発売も期待されます(関連記事)。
国内メーカーでは、シャープが携帯メールや着うた、おサイフケータイなどの日本特有の機能を盛り込んだAndroid搭載のスマートフォンの開発を明らかにしており、これらの機能を盛り込んだ端末が発売されれば、スマートフォンの利用は一気に進む可能性があるでしょう。
そのほか、NECビッグローブは、昨年12月17日、フォトフレーム型Android端末とアプリケーションを組み合わせて提供する新事業をスタートすることを発表し、Android搭載端末で7インチのタッチパネル端末の「WebStation」のモニターサービスを募集しています。さらに、今年の1月7日にAndroid向けアプリ・コンテンツマーケット「andronavi」をオープンしています。NECビッグローブは、andronaviの販売手数料うやMVNO通信料から収益を得る予定で、端末ユーザー累計20万人、コンテンツを2012年度末に累計10万本、他社端末を含めた有料アプリユーザー250万人を目標としており、12年度に年間100億円の売り上げを目指しています(関連記事)。「WebStation」はスマートフォンのカテゴリには入らないかと思いますが、Androidを搭載する端末は、スマートフォン以外にも広がりを見せ、Androidの急速なシェア拡大し、グーグルの影響力が増大しそうな予感がしています。
そして、スマートフォンの市場として大きな市場拡大が期待されているのが、アップルのApp Store、グーグルのAndroid Market、そして、マイクロソフトのWindows Market Place for Mobileなどといった、アプリケーション・ストアの存在です。昨年末にアプリケーション・ストアがほぼ出揃い、2010年は、さらに充実したコンテンツやアプリケーションの登場が期待されています。例えば、iPhoneのセカイカメラのようにiPhoneのディスプレイ上に映し出される現実世界の映像に、撮影した写真などのデジタル情報を重ねあわせて、利用者の活動を支援するAR(拡張現実)は一つのキラーアプリケーションとなるでしょう。
2010年は、最新のアプリケーションが利用でき、ワンセグやおサイフケータイ等の一般の携帯電話で利用でき、いいところどりができる理想のスマートフォンが登場する可能性は十分に考えられます。町で見かける光景も携帯電話よりもスマートフォンのほうが多くなっているのかもしれません。
(関連リンク)