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情報通信の展望2010(1):ICT成長戦略編

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2010年は、10年単位の節目となる年であり、短期的な施策だけでなく、中長期的な展望が重要となるでしょう。民主党のICT政策は、グローバル化が加速する情報通信分野おいてどのような中長期の成長戦略を描いていくことができるのか、その取組みが注目されます。ICTの成長戦略に関わる取り組みについて少し整理してみたいと思います。


グローバル時代のICT成長戦略

ICT政策を推進する総務省の目玉となるのが、昨年の10月23日に発足した「グローバル時代のICT政策に関するタスクフォース」です。グローバルな視点から競争政策を見直し、ICTの利活用によって各種課題を解決するための新たなICT政策を1年かけて検討していくというものです。政策内容によっては、即実行に移していくことも視野にいれています。

本タスクフォースでは、原口総務大臣、内藤総務副大臣(情報通信担当)及び政務官(情報通信担当)の政務三役と各部会の座長及び座長代理で「政策決定プラットフォーム」を構成し、その下に、<過去の競争政策のレビュー部会><電気通信市場の環境変化への対応検討部会><国際競争力強化検討部会><地球的課題検討部会>の4つの部会から構成されています。

日本国内におけるブロードバンド環境は、世界最高のインフラ環境となっていますが、上位レイヤー事業においては大きな遅れをとっています。

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(出所:過去の競争政策のレビュー部会 第二回会配布資料 2009.11.30)

海外政府の情報通信戦略では、電子政府の実現やデジタル産業の育成など様々な戦略が展開されています。日本の電子政府はまだまだ遅れており、そして、デジタル産業でも、下降線をたどっており、V字回復をしていくための成長戦略が重要となっていくでしょう。

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(出所:国際競争力強化検討部会」第二回配布資料 2009.11.26)

地球的課題検討部会では、医療・教育といったように、ICT活用の遅れが目立公共分野への対応についても議論されていくでしょう。

具体的な議論はこれからとなりますが、本タスクフォースでの検討内容は、日本の情報通信分野における国際競争力を高めていくための重要な取り組みになるのではないかと考えられます。

 

原口ビジョン

総務省の原口総務大臣は、12月22日、「緑の分権改革推進プラン」「ICT維新ビジョン」の二つを,原口ビジョンとして発表しました。特に注目すべきはICTの活用による持続的な社会の実現を目指す「ICT維新ビジョン」です。

このうち「ICT維新ビジョン」では、2050年を見据えた達成目標として「地域の絆の再生」「暮らしを守る雇用の創出」「世界をリードする環境負荷の軽減」の3点をあげています。
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「地域の絆(きずな)の再生」では、ICTの利活用により、2020年時点ですべての世帯(4,900万世帯)でブロードバンドサービスを利用、「暮らしを守る雇用の創出」では、ICT関連投資を倍増し、国民の生産性を3倍にすることにより、2020年以降3%の持続的経済成長を実現、「世界をリードする環境負荷軽減」では、2020年時点でCO2排出量25%削減という政府目標のうち、10%以上をICTパワーで実現(ICTグリーンプロジェクト)と、3つの目標を柱としています(詳細はブログを参照)。

原口ビジョンは10年後まで見据えた中長期の情報通信政策で、内容を見るとかなりアグレッシブな施策も見受けられます。このビジョンがどのような具体的なプランに落ちてくるのか、今後の総務省の動きが期待されます。

 

新成長戦略

そして、昨年12月30日、鳩山総理は総理官邸で第2回成長戦略策定会議を開催されました。本会議で「新成長戦略(基本方針)」が閣議決定され、「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」が発表されています。来年6月頃までに「新成長戦略」の最終とりまとめが公表される予定です。

本戦略では、2020年度までの平均で、GDP成長率:名目3%、実質2%を上回る成長-名目GDP:2009年度473兆円(見込み)を2020年度650兆円程度を目指すとしています。

6つの戦略分野の基本方針については、「日本の強みを活かした成長」「フロンティアの開拓による成長」「成長を支えるプラットフォーム」の3つのカテゴリに分けて、6つの成長分野で方針をたて、目標設定をしています。

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科学・技術立国戦略 ~IT立国・日本~ では、2020年までの目標として、『情報通信技術の活用による国民生活の利便性の向上、生産コストの低減』 をあげ、主な施策としては、行政のワンストップ化、情報通信技術の利活用を促進するための規制改革をあげています。

情報通信技術は、「コンクリートの道」から「光の道」へと発想を転換し、情報通信技術が国民生活や経済活動の全般に組み込まれることにより、経済社会システムが抜本的に効率化し、新たなイノベーションを生み出す基盤となるとしており、「光の道」の上でのイノベーションの創出が期待されます。

本戦略の中では、情報通信技術の利活用を徹底的に進める必要があるとし、生産性向上や国際競争力強化、そして新産業の創出に結び付けるとしています。

 

IT戦略本部

自民党政権時代にIT戦略本部が「i-Japan戦略2015」を公表し、2015年に向けた中長期のIT戦略を公表しました。

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しかしながら、政権交代に伴ない、本戦略が現在どのような位置づけにあるのか、不明確な状態となっています。昨年末に、内閣府、総務省、経済産業省の各政務官会議で基本戦略の方向性について大まかなアウトラインを描く作業を進めており、2010年にはIT戦略本部の再キックオフをすることを、津村内閣府政務官が明らかにしています。IT戦略本部の今後の位置づけについてが、注目されます。


以上、「グローバル時代のICT政策に関するタスクフォース」「原口ビジョン」「新成長戦略」、そして「IT戦略本部」の4つを見てきましたが、各々内容の整合性や連携をとりながら、具体的なプランを示し、スピード感のある対応が求められていくことになるでしょう。日本の国際競争力強化や成長に向けたビジョンや戦略だけでなく、具体的な戦術や取り組みについても大きな期待がされるところです。

(関連リンク)

情報通信の展望2010(1):ICT成長戦略編 (2010.1.5)

情報通信の展望2010(2):通信放送行政編 (2010.1.6)

情報通信の展望2010(3):躍進するモバイルブロードバンドと顕在化する課題 (2010.1.7)

情報通信の展望2010(4):スマートフォンの躍進 (2010.1.8)

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