佐川明美の「シアトルより愛を込めて」:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 佐川明美の「シアトルより愛を込めて」

元証券アナリスト、前プロダクトマネージャー、既婚な現経営者が、日頃の思いをつづります。

« 2008年12月23日

2008年12月24日の投稿

2008年12月25日 »

米国の国家情報会議(NIC: National Intelligence Council)が先月22日に公表した文書 “Global Trends 2025: A Transformed World” 。佐川流の紹介を続ける。

日本に関するまとまった記載がある所をかいつまんだ後は、8ページにわたる最初のサマリー (=Executive Summary) に戻って。

Executive Summary

第二次世界大戦後に構築された形の国際システム は、新興勢力の台頭、経済の国際化、西から東への富と経済力のシフトという歴史的流れ、そして非国家主体の影響力の増大により、2025年にはほとんど姿をとどめていないであろう。先進国と発展途上国間の国力のギャップは縮小を続け、2025年までに国際システムは多極的なものとなる。国家間のパワーシフトと同時進行して、企業、部族、宗教団体、犯罪ネットワークなどを含む種々の非国家主体が相対的に力を増す。プレーヤーの交代にとどまらず、世界が繁栄を続けるうえで重要な多国籍問題の領域も変化している。先進国の高齢化、エネルギー・食料・水の不足、気候変化の不安...これらのものが、歴史上まれにみる繁栄の時代にブレーキをかける。

歴史を振り返ると、浮上する多極的システムは、二極的・一極的システムより不安定であった。昨今の金融危機 - これにより現在の潮流は終わりを告げうるが - はあるが、先の国際化が終焉した1914-1918年におこったような、国際システムの完全な崩壊に向かっている訳ではない。しかし、新しいシステムに移行するまでの今後20年間は危険に満ちている。国家間の競争は、主に貿易・投資・技術革新およびM&Aの分野で展開されるだろうが、19世紀型の武力競争、領土拡大、軍事競争といったシナリオを除外する訳にはいかない。

このレポートは、様々な未来像を描くために我々が用いた一連のスケッチであり、はっきりとした結末のない物語である。米国が依然最も強大なプレーヤーであるには違いないが、米国の相対的影響力は、軍事面においてさえも低下する。一方、国家主体、非国家主体とも、他のプレーヤーが、どこまで増大する負担を担う意思があるかあるいは担えるか、は不明確だ。国際システムが古い体制から未完成の新しい体制へと移行する中、政治家および国民は、増大する多極的協力の要請への対応を余儀なくされる。

新興勢力の台頭をうながす経済成長

現在進んでいる世界の富および経済力の西から東へのシフトは、その大きさ、スピード、方向性において、近代史上初めてのことだ。このシフトは二つの要因からなる。第一に、石油および原料価格の上昇が湾岸諸国およびロシアに思いがけない利益をもたらした。第二に、低コストと政策が相まって、製造業およびサービス産業の場がアジアへとシフトしたことである。

2040-2050年頃には、ブラジル、ロシア、インド、中国(いわゆるBRICs)を合わせた経済成長は、G-7諸国に匹敵すると予測される。中国は今後20年で、どの国よりも影響度を増すであろう。今の潮流が続く限り、2025年には世界第二位の経済となり、軍事力でも世界の大国となる。加えて、天然資源の最大輸入国でもあり最大の公害国ともなろう。インドは高レベルの経済成長を続け、多極的世界の基軸国の一つとなるだろう。中国とインドは、増大する国際的役割をどこまで引き受ける能力と意思を持ち、互いにどのような関係を持つかという決断に迫られる。ロシアは人的資源に投資し、経済の多様化を拡大し、国際市場への統合を進めれば、2025年にはより豊かで強力かつ自信に満ちた国になりうる。他方、これらの段階を踏まず、石油およびガス価格がバレル当り$50-70台にとどまれば、ロシアの国力の大幅な低下もあり得る。他のどの国も、中国、インド、そしてロシアのレベルに達することはないであろう。しかし、インドネシア、イラン、トルコなどの他諸国が、政治および経済力を増すことは予想される。

中国、インド、およびロシアは、自国の発展に際し、大抵西洋的リベラルモデルには従わず、異なるモデル、いわゆる"国家資本主義" (= "state capitalism")を採用する。ここで国家社会主義は、国家に経済運営の重要な役割を担わせるシステムという意味で用いている。韓国、台湾、シンガポールなど他の新興諸国も、自国の経済発展に国家資本主義を用いた。しかし、国の規模といわゆる”民主化”へのアプローチを鑑みれば、ロシア、そして特に中国がこの手段をとることのインパクトははるかに大きい。民主主義普及の進展はスローペースで、新しい民主主義国は国際化により社会的経済的プレッシャーにさらされており、自由体制が損なわれるおそれもあるが、にも関わらず その長期的展望については引き続き楽観視している。

他の多くの国々は、経済的にさらに遅れをとるだろう。サハラ以南のアフリカ諸国では、引き続き経済停滞、人口増加、国民紛争、そして政治の不安定に悩まされるだろう。サハラ以南のアフリカ諸国が供給元である原料の需要は増大するものの、現地の人々はその経済的利益を享受し得ないだろう。原料価格の高騰が続き、思いがけない利益が流れ込んできても、腐敗した現地政府を潤すだけであり、民主的かつ市場原理に基づいた改革は望めない。多くのラテンアメリカ諸国が2025年までには中間所得層パワーとなるが、それ以外の国々、とくにベネズエラとボリビアのように大衆主義の政策を長期にわたり導入した国々は遅れをとり、ハイチのような国では貧困と政治不安がより進む。ラテンアメリカ全般の経済競争力は依然としてアジアおよびその他の高度成長諸国の後塵を拝する。

アジア、アフリカ、ラテンアメリカが、今後20年間の世界人口増加を牽引する。西側諸国の人口増加は3%に満たない。ヨーロッパと日本は、国民一人当たりの富では依然遥かに中国やインドを凌ぐものの、労働人口が縮小するため従来の経済成長率を維持するのは難しい。米国は出生率が高くかつ移民も多く、人口高齢化が進む先進国の中では例外。恵まれない国から比較的恵まれた国への移民の数は増大する。

いわゆる"不安定の弧” (arc of Instability)といわれる、若年層の多い諸国の数は、40%も減ると予測する。若年層の多い国の4つに3つはサハラ以南のアフリカ諸国であり、その他は中近東、南および中央アジア、太平洋諸島に散在する。

sagawa

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佐川 明美

佐川 明美

米国シアトル在住。世界の伝統工芸を紹介する Ashton Road Ltd. のco-founder。

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