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リサーチのプロとして長いこと歩んできた今泉大輔です。ChatGPT出現以降、Facebookで「ChatGPTとMidjourneyのビジネス活用を探って行く勉強会」を立ち上げ、「ビジネスパーソンにとってのAI」の観点で米国情報を収集して来ました。知的アウトプットの質と量を向上させるプロンプトの開発にも取り組んでいます。

【NISA成長投資枠】ウォーレン・バフェットがAppleを評価する最大のポイント"Economic moats"(経済的な堀)を理解するための英文プロンプト

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ウォーレン・バフェットはAppleの"Economic moats"を見ている

"Economic moats"(経済的な堀)の"moat"とは、ヨーロッパの中世の城において敵が入ってこないように設けられている「堀割」です。日本の戦国時代〜江戸時代の城における堀割と全く同じ意味です。

"Economic moats"があることで、NVIDIA(エヌビディア)のような「AI半導体一強」の位置に上り詰めた企業は、昔日の王者だったIntel(インテル)やAMD、Broadcom(ブロードコム)の追撃を阻むことができます。圧倒的な競争優位を保ち続けることができるのです。

ウォーレン・バフェットの投資哲学を調べていくと、日本ではよく聞かない"Economic moats"がキーワードとして出てきます。特に興味深いのは、ウォーレン・バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイの保有銘柄のうち最大の割合を持つのがApple株だということ。つまり、ウォーレン・バフェットはAppleの"Economic moats"を高く評価しているということです。

バークシャー・ハサウェイの保有銘柄のうち最大のシェアを持つのがAppleです。同社保有株式の時価総額は2024年9月末時点で約2,717億ドル、1ドル150円で約40兆7,000億円。うちAppleは25.7%の699億ドル、約10兆5,000億円となっています。

NISA成長投資枠(1年で240万円)の株式銘柄選択肢として米国株を選ぶ場合、投資の神様という意味の「オマハの賢人」であるウォーレン・バフェットが最大級に評価しているAppleを選択する...という判断は、間違っている可能性が相当に低いと思います。

さて、ウォーレン・バフェットはAppleのどういう要素を"Economic moats"として見ているのか?ChatGPTなどのAIを駆使して調べて見ましょう。
前回の投稿にも書いたように、日本語のプロンプトで調べると日本語の資料ばかり検索して回答する傾向があるので、英文のプロンプトを得て調べることにします。

同じ英文プロンプトを3つ4つのAIに入れて回答を比較する

米国の膨大な資料を広く深く調べて、日本では得にくい知見を引き出すことができる英文プロンプト。1つの良いプロンプトがあれば、ChatGPTだけでなく、Googleが運営するGemini、欧米の新聞雑誌報道を調べるのに便利なPerplexity、多種多様な使い方ができるGenspark、そして最近性能が向上してきたGrok(Xユーザーでなくても使えます)、いずれのAIにそのプロンプトを入れても、大変に有用な回答が出てきます。

AIを駆使して米国株の情報を得る場合、2つか3つのAIに同じプロンプトを入れて、出てきた回答を見比べるということは大切です。AIには以前から言われてきた「ハルシネーション」(簡単に言えばAIの"勘違い")が起こることがあり、勘違いして正しいと思い込んでいる内容を回答に入れることがあります。最近はかなり少なくなりましたが。ハルシネーションを見分けるために、最低で2つ、できれば4つのAIを同時に使って(同じプロンプトを入れる)、出てきた回答を比較検討、吟味していくと良いです。


最初はテキスト量が多くて目まいがするかも知れませんが、自分で納得できる株式選定のためには情報量にひるんではいけません。以前であれば個々の銘柄に関する情報を得るだけでも大変でした。ものすごくありがたい環境が今はあります。
また、大量の情報に接して、読み込むことに慣れてくると、自分の脳がそれに順応してきます。脳は偉大です。どれだけ知的処理をさせても、だんだんとそれに慣れるようになり、なおかつ、高速になって行きます。複数のAIが出してくる回答を見比べることを繰り返していると、だんだんと情報量が苦にならなくなります。また、どのAIがヘンな回答をしているのか、瞬時に見抜くことができるようになって行きます。

ウォーレン・バフェットの投資哲学、4つのポイント

ウォーレン・バフェットの投資哲学は、日本語でGoogleに聞いてもすぐに沢山のWebページが出てきて、理解することができます。
おおむね、次の4つのポイントを挙げています。
・バリュー投資/成長株投資:
 現時点で割安である株を選んで投資する→中長期的には値が上がるのでリターンが得られる。
・長期投資:
 株は買ったら売らない。できる限り長く保有する。長期保有することでその株のリターンを最大化できる。時間を味方にする投資。
・"Economic moats" - 経済的な堀:
 その企業が競合企業を寄せ付けない圧倒的な競争優位のポイント、複数あるのが普通。
・経営の質:
 バフェットは優れた経営陣の存在が成功する企業にとって不可欠であると言っています。

上の4つのうち3つは日本の我々もよく理解できます。問題は"Economic moats"です。

"Economic moats"を知るための英文プロンプトをいくつかのAIに入れて(ChatGPT最優先でOK)、米国の資料が解説する内容を見て見ましょう。

"Economic moats"を理解するための英文プロンプト

ChatGPTとやりとりして得たのが以下の英文プロンプトです。自分の立場(経験、知識等)を明らかにして、「これこれを知りたいので、米国の資料を調べて回答を得ることができる英文プロンプトを作って下さい」とやれば、大体的確なプロンプトが得られます。英文プロンプトの内容が理解できない場合は、優秀な翻訳ツールであるChatGPTに入れて「上を翻訳して下さい」とやればOK。

Summarize Warren Buffett's concept of 'Economic Moats' based on reliable U.S. sources. Explain how Buffett defines economic moats and why they are a critical part of his investment philosophy.
信頼できる米国の資料に基づき、ウォーレン・バフェットの「Economic Moats(経済的な堀)」の概念をまとめてください。バフェットが経済的な堀をどのように定義し、それが彼の投資哲学の中でなぜ重要な要素なのかを説明してください。

この英文プロンプトを入れて出てきた英文の解答は、「上を日本語に翻訳して下さい」と入れて、日本語に直してもらいます。それぞれのAIで、長い回答や短い回答が出てきますが、日本語で読めるので大丈夫です。

実際にやって見たところ、最近性能向上が著しいGrokの回答が優れていたので、以下で引用します。(ただGorkの翻訳性能はまだイマイチなのでChatGPTにコピペして翻訳させました)

経済的な堀の定義
バフェット自身の言葉:
2007年の株主への手紙で、バフェットは経済的な堀を持つ企業を「中世の城」に例え、堀が競争相手からの防御の役割を果たすと説明しました。彼は、経済的な堀とは、企業が競争相手に対して持つ持続的な競争優位性であり、市場での地位を容易に侵食されない特性を持つことだと定義しています。

バフェットが考える経済的な堀の種類
1️⃣ 無形資産(Intangible Assets)
➡ ブランド力や特許などの知的財産が競争優位性を生む。
✅ 例:コカ・コーラのブランド力、Appleのブランドとエコシステム

2️⃣ コスト優位性(Cost Advantages)
➡ 競争相手よりも低コストで商品やサービスを生産・提供できる企業。
✅ 例:ウォルマート(Walmart)のサプライチェーン効率

3️⃣ ネットワーク効果(Network Effects)
➡ 製品やサービスの価値が利用者数の増加とともに向上する。
✅ 例:VisaやMasterCardなどの決済ネットワーク

4️⃣ 高いスイッチングコスト(High Switching Costs)
➡ 顧客が他社製品に乗り換える際にコストや不便さが発生し、競争相手に移行しにくくなる。
✅ 例:MicrosoftのWindows OS(ソフトウェアの互換性が強み)

バフェットは、このような「堀」を持つ企業を適正価格で購入し、長期保有することで、持続的な利益を得る戦略を取っています。

"Economic moats"を持つ企業は値下げ攻勢にも負けない

ウォーレン・バフェットが大切にする個別銘柄の選定基準"Economic moats"がだんだんと理解できてきたように思います。

日本語では平たく「競争優位」という言葉で片づけられてしまいますが、バフェットが言う"Economic moats"は、「経済的な堀を持つ企業を『中世の城』に例え、堀が競争相手からの防御の役割を果たす」ということなんですね。これがあれば、競合企業が新製品を出しても、大々的な営業展開をしても、極端な値下げ攻勢をかけてきても、その企業はびくともしないということです。

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