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社会を変える汎用技術を考えた先駆者、増田米二

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『情報システム進化論』の参考文献の中から紹介したい2冊目は、増田米二の『原典情報社会-機会開発者の時代へ』。

この本は情報社会を学ぶ人にとっての古典になっているので、すでに手に取られた方が多いかもしれない。

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628日の投稿で、2005年に出版された本で「GPTGeneral Purpose Technology:汎用技術)」という概念を知ったときのちょっとした感動を語った。しかし、それより20年も前の1985年に、増田米二は本書でGPTと同じような概念を提唱していた。増田は、社会と技術の視点から人類の歴史を「狩猟社会」「農業社会」「工業社会」「情報社会」の4つに大分類し、社会が大きく変わるのは「人類社会を根本的に変革してしまうような技術群」があるためだと考えた。そして、そのような技術群を「社会的技術」と名付けた。まさに、のちに経済学者たちがGPTと呼ぶ概念を先取りしていたといえるだろう。

情報社会への移行は1970年代に欧米で進んでいった。それに対し、日本は製造業を中心とする工業社会の成長が続き、しかも第二次世界大戦後の短期間に驚異的な経済成長をなし遂げるという成功をおさめた。そして、20世紀後半の工業社会に最適化された諸制度が社会の隅々まで深く浸透した。

工業社会での成功が情報社会への転換のブレーキとして働き、コロナ下にはデジタル敗戦という言葉まで生まれるほどの状況をもたらした。

増田米二を中心に情報社会論で世界をリードした日本だったが、現実のデジタル化では後れを取った状態が続いている。

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