オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

オープンデータガイド第1版(6)日本政府におけるオープンデータ利用ルールの検討状況

»

オープンデータガイド第1版をもとに、日本政府におけるオープンデータ利用ルールの検討状況についてまとめてみたいと思います。

2012年7月4日に決定された「電子行政オープンデータ戦略」(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)では、公共データ活用促進のための基本原則の一つとして

営利目的、非営利目的を問わず活用を促進すること

をあげています。

本戦略を受けて、電子行政オープンデータ実務者会議において2013年に作成された「二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)」(2013年6月25日 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)では、二次利用を促進する利用ルールに関して、以下のとおり考え方をまとめています。

・ 著作物でないデータについては、著作権の保護対象外である(著作権を理由とした二次利用の制限はできない)ことを明確にする。

・ 国が著作権者である著作物については、国において、どのような利用条件で公開するかを決定できることから、広く二次利用を認める(著作権以外の具体的かつ合理的な根拠に基づき二次利用を制限する場合を除き、制約なく二次利用を認める)形で、あらかじめ著作物の利用に係る考えを表示する。当該表示については、できるだけ分かりやすく統一的なものとする。

・ 著作権を根拠に公開データの一部について二次利用の制限を行う場合には、例えば、二次利用の制限をする部分の著作物について第三者が著作権者であること、既に作成・保有している著作物について著作権者が明確でないこと等、二次利用を制限する理由とともに、二次利用を制限する部分を明確に表示する。

・ 本ガイドライン策定後、各府省が新たに作成・入手するデータについては、各府省がインターネットを通じて公開した場合に当該データの二次利用を認めることができるよう、事前に関係者との間で合意をとるよう努める。このため、本ガイドライン策定後の委託・請負契約の検討・締結等に当たっては、それを念頭に置いた対応(例えば、委託調査の契約の内容を、成果物である報告書を府省がインターネットを通じて公開する場合、当該公開データの二次利用を認めることの支障とならないようなものとする等)が求められる。

・ 個別法の規定等、著作権以外の具体的かつ合理的な根拠に基づき公開データの二次利用を制限する場合は、制限の範囲を必要最小限に限定し、その内容及び根拠を明確に表示する。当該表示については、できるだけ分かりやすく統一的なものとする。

各府省がインターネットを通じて公開しているデータを第三者が二次利用し、当該二次利用されたデータを利用した者に損害が生じた場合も、各府省は責任を負わない旨を明確にする。

出所:二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)(2013年6月25日 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)

clip_image002
出所:電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ(工程表)

オープンデータ流通推進コンソーシアムのデータガバナンス委員会では、利用ルールにあたって以下の取り組みを行っています。

2012年度

総務省の情報通信白書等を対象としてケーススタディを行い、オープンデータ対応の利用ルールを作成

2013年度

「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ」(2013年6月14日 IT総合戦略本部決定)において、2013年度下期までの検討課題の一つとされている「各府省ホームページにおける利用ルールの見直し(二次利用を認めるのを原則とし、制限のあるコンテンツは個別に表示)」について、 2013年11月に内閣官房IT総合戦略室からの依頼を受け、ガイドラインの考え方に基づいて「各府省ホームページの利用ルール見直しひな形(素案)」を検討。

その結果、電子行政オープンデータ実務者会議のルール・普及WG(2014年1月17日開催)に提言し、電子行政オープンデータ実務者会議では、この提言を基に議論を行い、2014年4月1日に政府標準利用規約(第1.0版)(案)を了承しています。これを受けて、2014年6月19日に各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議において、政府標準利用規約(第1.0版)として決定されています。

clip_image002[7]
出所:オープンデータガイド第1版 政府標準利用規約の検討過程

政府標準利用規約(第1.0版)は、

各国で採用されている利用ルールと異なる利用ルールを日本政府が採用すると、海外からの情報利用者にとって利用ルール間の相違点の把握が必要なことや、国内のデータと海外のデータをマッシュアップする際の利用条件が複雑になる等、情報利用者にとって不便を強いること等から、基本的な利用条件はCC-BYと同様に出典の記載としつつも、各府省から示された意見も踏まえ、国のできるだけ多くのコンテンツに適用できるものとして検討された。その結果、「法令、条例又は公序良俗に反する利用」及び「国家・国民の安全に脅威を与える利用」を禁止する事項が盛り込まれる等、CC-BYとは別の利用ルールとなったものである。

とあるように、CC-BYとは別の利用ルールとなっています。

CC-BYが採用されなかった理由について

・ コンテンツを編集・加工等した場合にはそのことを記載させること、公序良俗に反するなど各府省が望ましくないと考える利用は認めないことなど、コンテンツを公開する府省の考えを併せて示すことができること。

・ CC-BY は著作権のあるコンテンツを対象とするライセンスであるが、著作物性の有無にかかわらず共通して定めるべき条件や事項が存在すること。

CC-BY のライセンス文には、CC-BY でライセンスされたコンテンツを再配布したり、他のコンテンツと組み合わせたりしたときの著作権表示の方法などについて専門的な条件が定められているが、分かりやすい利用ルールとする観点からは、これらの専門的な条件を必ずしも採用する必要はないと考えられること。

出所:「政府標準利用規約(第1.0 版)」の解説

一方、内閣官房IT総合戦略室では、政府データカタログサイト試行版「DATA.GO.JP」を2013年12月20日に開設していますが、電子行政オープンデータ実務者会議での議論を受けて、CC-BYライセンスが採用されています。

 

Comment(0)