「スマートビジネス」のこれから
最近、「スマート」というキーワードをよく目にするようになりました。「スマートフォン」、「スマートグリッド」、そして「スマートテレビ」など多岐に渡っています。これらをあわせて「スマートビジネス」と整理するケースも出てきています。
NTTデータは、「スマートビジネス推進室」を2011年2月1日付けでグループ経営企画本部内に設置することを発表し、スマートコミュニティや次世代社会インフラに関するビジネスの戦略策定と企画推進を行う組織として位置づけています(報道発表資料)。
今後、広い範囲で「スマートビジネス」が一つのキーワードとなり、業界を超えて「スマートビジネス」を推進するための提携や組織再編が生まれる可能性が考えられます。
ここで「スマート」に関するキーワードを整理したいと思います。
スマートフォン
MM総研が12月14日に公表した「スマートフォンの市場規模の推移・予測」によると、2012年度には、1,925万台となり、出荷台数が50%を超えると予測しています。
スマートフォン関連のビジネスは、LTEなどに代表されるモバイルブロードバンド、スマートフォン向けのサービス開発、クラウドサービスとの連携(モバイルクラウド)、電子書籍などのコンテンツサービス、ツイッターやFacebookなどのソーシャルメディア、様々な利用シーンが想定されます。また、iPhone、Android端末、そして、今年中にWindows Mobile Phone 7搭載のスマートフォンの登場も予定されており、スマートフォンのモバイルOSのシェア争いも注目されます。今後、スマートフォンの販売増に伴い、グローバル規模で様々なビジネスが創出されると考えられます。
スマートタブレット
私自身、iPadやGALAXY Tabを持っています。これらは一般的にはタブレットと言われていますが、「スマートタブレット」と表現するケースも出てきています。シード・プランニングが1月13日に公表した「タブレット端末の市場動向」によると、タブレット端末市場は急拡大し、2010年の85万台から2015年には800万台の市場となると予測しています。
タブレットは個人ユーザだけでなく、企業での利用が進んでいくと予想されてます。米コンサルティング企業のDeloitteが1月18日に公表した年次予測によると、2011年には企業が1000万台以上のタブレットを購入し、市場の25%以上を占めると予想しています(関連記事)。
スマートタブレット関連のビジネスは、コンシューマ向けの場合は電子書籍サービス、そして、ソニーが1月27日に、Android端末でPSゲームが楽しめる「PlayStation Suite」を発表(関連記事)しましたが、ゲームでの利用も増えていくでしょう。また、公共分野においては教育分野ではデジタル教科書・教材、医療分野、医療分野では電子カルテなど利用用途が考えられます。高齢者向けの介護端末も考えられるでしょう。
企業向けにおいては、外出先での営業やプレゼンテーション用の端末など、外出先から高いセキュリティで簡易に利用できるモバイルクラウドデバイスとして利用が進んでいくと予想されます。
スマートシティ、スマートコミュニティ、スマートグリッド
スマートシティ、スマートコミュニティ、スマートグリッドの三つのキーワードが入り乱れていますが、スマートハウスやスマートメーター、そして電気自動車(EV)や太陽光などの再生可能エネルギーなど様々な要素を絡め電力版インターネットで環境に配慮した社会インフラの仕組み作りが大きなテーマとなっています。日立製作所やNTTデータなどの大手ベンダも、社会インフラビジネス強化に向けた組織再編を実施しています。社会インフラビジネスは国内市場だけでなく、アジアなどの海外展開も大きな市場となっており、産官学オールジャパンでの取り組みも進められています。
スマートテレビ
米国では、ソニーとグーグルが提携し、Android OSをベースにした「グーグルTV」を共同開発し、2010年10月に「ソニーインターネットTV」を発売しました。「グーグルTV」は、通常のテレビ番組を視聴しながら、関連情報の検索やYouTubeをはじめとした動画再生ができ、ツイッター等のソーシャルメディアとの連携も可能で、スマートフォンなどのモバイル端末をスマートテレビのリモコンとして利用できます。2011年初頭には「Android Market」を利用したアプリケーションのダウンロードにも対応することが予定されています。
一方、米国の4大ネットワークは、グーグルの動きに警戒感を示し番組配信を止めており、現時点でグーグルTVの販売状況は苦戦を強いられています。グーグルTVの登場は、今後の放送とインターネットによる動画配信ビジネスの構造を大きく変えていく可能性がありますが、同時に様々な課題解決への対応も急がれています。
日本のメーカー各社もスマートテレビへの対応を急いでいます。スマートテレビ普及に鍵はコンテンツとなりますが、放送業界への対応など、著作権や情報通信法など法制度のあり方も含めて、検討を進めていく必要あります。テレビは、IT業界全体の視点で見ると、ネット化が遅れている端末である一方で、各家庭ではほぼ100%家の中心においている端末です。スマートテレビの流れが進めば、ビジネスモデルは大きく変化していくと考えられます。
スマートクラウド
最後に、クラウド関連について若干ふられてみたいと思います。「スマートクラウド」というキーワードは、総務省が2010年5月に「スマート・クラウド研究会報告書」を公表し、「スマート・クラウド戦略」の方向性を示しています。今後、様々な分野にクラウドの利用が進んでいくと予想されますが、スマートビジネスを支えていくためのクラウドの役割は大きいと言えるでしょう。
まとめ
以上、多少強引なところもありますが、スマートビジネスとして一括りにまとめてみました。様々な業界業種、そして、デバイスから社会インフラの仕組みづくりから、様々な視点で業界横断的なビジネスモデルを創造していくことが重要となってきていると言えるでしょう。