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「音声」から「体験」へ:進化するクラウドコンタクトセンター市場

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クラウドコンタクトセンター市場は、従来のオンプレミス中心からクラウドファーストへと劇的なシフトを迎えています。

Synergy Research Groupが2025年4月11日に発表した最新データによると、2024年の市場規模は前年から16.3%増加し、62億ドルに達しました。これは過去5年以上、毎年約10億ドルの上積みを続けてきた高成長市場であることを示しています。こうした持続的成長は、AIを活用した自動化機能や柔軟なスケーリングが可能なクラウドネイティブソリューションへの需要拡大に支えられています。

今回はSynergy Research Groupが2025年4月11日に発表した「Cloud Contact Center Market Accelerates: Zoom, Cisco, Ujet, and RingCentral Lead 2024 Growth」の資料をもとに、市場の背景や主要プレーヤーの戦略、今後の展望などについて、取り上げたいと思います。

持続的成長を支える市場環境

2024年に16.3%の成長を遂げたクラウドコンタクトセンター市場は、その前提となるITインフラのモダナイゼーションが加速したことが背景にあります。従来型のオンプレミス環境ではピーク時のトラフィック変動に対応しづらい一方で、クラウドサービスは必要に応じたリソースの増減が可能です。

また、ハイブリッド勤務の浸透により顧客対応チャネルの多様化が進み、音声やチャット、ビデオといったマルチチャネル対応が求められるようになりました。

こうした環境変化を捉えた企業が積極的にクラウド移行を進めた結果、市場全体で年間およそ10億ドルの価値が安定的に創出されています。

トップベンダーの競争優位性

Synergy Researchが示す上位4社、Zoom、Cisco、Ujet、RingCentralは、それぞれ異なる強みで市場をリードしています。Zoomは会議プラットフォームとしての知見を生かし、AIによるリアルタイム要約や感情解析機能を提供。Ciscoはグローバルな大規模顧客基盤に対して高いセキュリティとスケーラビリティを約束します。UJETはモバイルファーストのUX設計とCRM連携を強調し、新興企業ながら急速にシェアを拡大。RingCentralはUCaaS(統合コミュニケーション)とのバンドリングと戦略的パートナーシップで導入ハードルを下げ、幅広い業種で導入が進んでいます。

既存大手と新興チャレンジャーの攻防

既存の大手ベンダーであるNICE、Genesys、Five9は、合わせて市場シェアの半分以上を占めています。それぞれ長年の顧客実績と豊富な機能群で根強い支持を得ている一方、新興プレーヤーも垂直特化型のCXソリューションやAI/MLを活用した業務自動化で存在感を示しています。

こうした競争環境が、製品のさらなる差別化や顧客体験の高度化を後押しし、市場全体の成長エンジンとして機能しているのが現状です。

AIの台頭がもたらす市場変革

AI搭載型機能は、顧客対応の質と効率を同時に高める要として注目を集めています。自然言語処理による自動応答やオペレーター支援ツールは、FAQ対応の自動化や通話内容の要約でオペレーターの負荷を軽減。また、感情分析によって応対品質の可視化が可能になり、トレーニングや人員配置の最適化にも寄与しています。

今後はエッジAIの導入や、より高度な予測分析によるプロアクティブな顧客対応が普及し、従来の受動的なコールセンターから"顧客体験センター"へと進化することが期待されます。

今後の展望

クラウドコンタクトセンター市場は、依然として移行期の途上にあります。Synergy Researchによると、名称が把握できているエージェントの約3分の2は、まだレガシーなホスティングプラットフォーム上で稼働しており、クラウド化余地は大きいままです。

今後はセキュリティやガバナンス要件を満たしつつ、よりスムーズな移行を実現するマイグレーション支援サービスや、API連携による業務プロセスの自動化支援が鍵を握るでしょう。また、AI機能の高度化に伴い、チャットボットやバーチャルアシスタントの適用範囲が拡大し、カスタマーサクセスや定着率向上への寄与も期待されます。

そして、IoTデバイスやソーシャルメディアと連携した新たな顧客接点の構築、エッジAIによるリアルタイム分析など、次世代の顧客体験を支える技術革新が市場を加速させることが期待されます。

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出典:Synergy Research Group 2025.4

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