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高まるスケーラブルなAI基盤のニーズ

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世界的にAIやアナリティクスへの注目が高まる中で、大量のデータを効率的に保管・活用するためのインフラ整備が企業の競争力を左右するようになっています。データの種類や量は年々増加し、それに伴って情報の処理や管理の難度も高まっています。

さらに、データ・ソブリンティやセキュリティの要件がますます厳格化することで、従来のストレージ基盤やデータ管理手法では迅速なインサイトの創出が難しくなりつつあります。企業がAIの恩恵を最大限に引き出すには、ソフトウェアドリブンでスケールアウトが可能な高性能インフラの導入や統合的なデータ管理が必要です。

今回は2025年3月31日に発表したIDCの資料をもとに、AIやアナリティクスをめぐる背景や概要、今後の展望などについて取り上げたいと思います。

IDC Predicts: By 2027, 45% of Asia/Pacific* Organizations Will Adopt Performance-Intensive Infrastructure to Accelerate Insights for AI and Analytics

スケールアウト型ストレージ基盤と統合データ管理の採用へ

IDCのレポートによると、2027年までにアジア太平洋地域(日本を含む)のA2000企業の45%が、高性能かつソフトウェアドリブンなスケールアウト型ストレージ基盤と統合データ管理を採用し、AIやアナリティクスの高度な分析力を高める見通しとされています。

その背景には、絶え間なく増えるデータに対して十分な処理能力や柔軟な拡張性を求める声が強まっていることがあります。具体的には、顧客データやIoTから生成される膨大なログ情報など、企業が取り扱うデータは多様化が進んでおり、従来型のストレージやデータベースでは対応が難しくなっています。

加えて、データが国境を越えて行き交う時代において、データ・ソブリンティをはじめとする法規制をクリアするためのローカル拠点やクラウド環境の活用も広がり、データを適切かつ効率的に管理することが事業継続や競争力維持の要となっています。

こうした流れを受けて、企業には高い拡張性とガバナンス機能を兼ね備えた最新インフラへの移行が求められています。

ソフトウェアドリブン・スケールアウトストレージのメリット

企業がAIを本格活用するには、膨大な非構造化データを高度なアルゴリズムで処理する基盤を整備する必要があります。近年注目されているソフトウェアドリブン・スケールアウトストレージは、従来のハードウェア主導型と比べて柔軟に拡張が行え、ピーク時の負荷を分散しやすいという特徴を持ちます。

例えば、AIの学習に必要な大規模データの取り込みから、推論段階におけるリアルタイム分析までをシームレスに扱えるため、インサイト創出のスピードが格段に向上します。

さらに、ソフトウェアレイヤーによってデータ配置や容量調整の制御が自動化され、運用管理を一元化できることも大きな利点です。現場レベルで必要となる変更にも素早く対応できるので、開発・運用双方の生産性が高まり、AI導入のROIを向上させやすくなります。

こうした革新的技術が拡大することで、企業はビジネス要件や規模に応じた最適なストレージ運用を実現しやすくなり、次世代のデジタル基盤を着実に整えていく道筋が見えてきます。

統合データ管理がもたらす効果

統合データ管理は、企業が保有するさまざまなデータを一貫して扱い、品質やガバナンスを保ちながら迅速に活用するための鍵といえます。AIプロジェクトでは膨大な学習データが必要である一方、取得元の異なるデータを統合・整合させる作業には大きな手間とコストがかかるのが現状です。

ここで重要になるのが、全社レベルでデータを一元化し、セキュリティやプライバシーと両立させながらアクセスを容易にする統合プラットフォームの整備です。たとえば、機密情報を含むデータとオープンデータが同じプラットフォーム上で扱えるようになることで、新たな関連性を発見しやすくなり、高度なAIモデル開発にもつながります。

こうした統合的アプローチを実践することで、AI導入のスピードが向上し、市場競争力の確保にも直結するのです。

ガバナンスと運用面の課題

一方で、高性能インフラの導入や統合データ管理を進めるうえでは、ガバナンスと運用体制に関する問題も発生する可能性があります。IDCの予測によれば、2026年までにアジア太平洋地域で80%の企業がAIリスク(倫理面やブランド影響、個人情報保護など)に対応するポリシーや監査を整備し、ビジネス戦略と整合させる見通しとしています。

自社のビジネス要件に応じてAI活用を広げながら、データガバナンスやインフラ構成を同時に最適化していくアプローチが、今後はますます重視されていくでしょう。

今後の展望

将来的には、AIを扱う現場での運用効率を高めるため、より高度なエージェンティックAIや自動化されたワークフローの導入が増えると考えられます。専門的なプログラミング知識を持たない現場担当者でも、自分たちの業務にあわせてAIを活用する方法を柔軟に設計できる環境が普及すれば、業務サイクルを大幅に短縮し、イノベーションの創出にもつながる可能性があるでしょう。

そのための、スケールアウト型ストレージ基盤や統合データ管理の仕組みをはじめとしたデジタルインフラの整備のニーズは高まっていくでしょう。

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