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生成AIの進展で必要に迫られるデジタル戦略の再構築

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生成AIやエージェント型AIの目覚ましい進化が進むなか、多くの企業がこれまで取り組んできたデジタル推進やイノベーションについて、新たな局面に差し掛かっています。クラウドのサービス導入や社内プロセスの省力化による改善は進んでいるものの、今なおデジタル・シフトが道半ばであると感じるITリーダーも少なくありません。企業が競争力を維持・強化するためには、既存の推進計画を再度見直し、社会全体を巻き込む形での変革を本気で実行する覚悟が求められています。

今回は2025年4月8日に発表したGartnerの資料をもとに、デジタル推進戦略の背景や概要、今後の展望などについて取り上げたいと思います。

Gartner、企業や組織は、デジタル推進戦略を見直す必要に迫られているとの見解を発表


長期的なデジタル推進の疲弊と課題

多くの企業では過去5年から10年にわたり、デジタル技術を駆使して業務を改善したり、新しいイノベーションを生み出す取り組みを続けてきました。しかしGartnerの調査によると、こうした長期的なデジタル推進にもかかわらず、「実現が困難である」と感じているITリーダーが半数を超えている実態が浮き彫りになっています。背景には、デジタル推進の取り組み自体が形骸化し、局所的なプロセス改善やクラウドの導入に終始するケースが多いことが挙げられます。

生成AIやデジタル・ツイン、IoTプラットフォームなどの技術進化は急速で、従来の計画を大幅に塗り替えるほどのインパクトを持っているにもかかわらず、それらを活用してビジネス変革に挑戦している事例は全体の20%程度にとどまっています。こうした現状を見ると、過去からの計画や戦略をただ継続するだけでは、もはや十分ではなくなっているといえます。


既存のデジタル戦略再点検の必要性

1年以上前、あるいは3年以上前に立案したデジタル推進の計画やビジョンは、現在の技術潮流や規制動向と乖離している可能性があります。クラウドやRPAといったツールの導入を進めても、競合他社も同様に取り組んでいる以上、それだけでは差別化が難しいといいます。こうした状況下で重要となるのは、既存のビジョンや推進体制を一度リセットし、新たに検証することが必要となっています。

Gartnerによると、2028年までに既存のデジタル推進戦略を見直さない企業の80%は、競争力が大きく低下すると指摘されています。この数字が示唆するのは、単なる内部最適化にとどまらない、大胆なゲーム・チェンジを実現する覚悟が要るということです。ITリーダーは大きな成果が出ないまま壁に直面している計画を再構成し、社内外のリソースを改めて見極める決断を下すことが求められています。


社外ステークホルダーとの連携

デジタル推進の成否は、単に自社だけで完結する取り組みで決まるものではありません。顧客やパートナー、関連業界、そして周辺環境などの社会インフラを担う機関との連携が必要となります。生成AIやデジタル・ツインなどの新技術を実際にビジネスに落とし込むためには、それが社会全体で受け入れられるかどうか、法規制や倫理的観点への配慮も不可欠となります。

こうした観点からは、ITリーダーが社外の関係者を積極的に巻き込みつつ、自社のビジョンを説得力のあるかたちで示す姿勢が問われます。これまで「DX」を掲げていた企業も、日常の業務改善レベルに終わらず、本質的なゲーム・チェンジの実現に向けて戦略を立て直す段階に来ています。強い覚悟を持ち、スピード感をもって社内外を巻き込みながら、未来を見据えたデジタル・シフトを進めることが必要となっています。


加速し続ける技術への追従

一方で、技術の進化はとどまる気配がありません。生成AIのさらなる高度化、クラウドネイティブなプラットフォームの進展、エッジコンピューティングの拡充など、新たな革新は絶えず生まれています。これは国内企業だけでなく、世界中の企業が直面する共通の課題です。ITリーダーはこうした技術潮流を迅速に取り込み、自組織や自社の運営モデルを常にアップデートしていく覚悟を持たなければなりません。

Gartnerが提示した「ゲーム・チェンジを本気で進められるかどうか」という視点は、いまや経営者だけでなく現場のITリーダーにも責務を突きつけています。新技術による大幅な変革が求められる一方で、社会受容性や法規制への対応が欠かせないことも事実です。これをどう両立させていくか、世界的に競争力を持つ企業として生まれ変わるために、既存の常識にとらわれない柔軟かつ大胆なアプローチが重要といえます。


今後の展望

デジタル推進の再構築を果たすためには、戦略の再点検と同時に、社内外との協働をベースとした仕組みづくりが欠かせません。イノベーションの目指す先が自社都合に偏らず、社会全体で受容される姿を描き、必要な規制調整や技術的課題の共有を進めることが重要となります。生成AIやエージェント型AIなどの先端技術を駆使する際も、効果のみならず、リスク管理や倫理的観点も慎重に検討する姿勢が信頼獲得につながるでしょう。

これからの数年間で市場環境はさらに激変し、新たなビジネスチャンスや課題が浮上するでしょう。その変化を先取りするためには、ITリーダーが周囲を巻き込む強いリーダーシップを発揮し、デジタルの可能性を社会と共有しながら実践することが求められています。

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