オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

DX推進で成長する予算管理市場

»

企業の経営管理において、より厳密な予実管理や迅速な経営判断へのニーズが高まっています。デジタル技術を活用して分析やレポーティングを自動化する動きも加速しており、予算管理の領域ではIT導入の効果を実感する企業が増えてきました。

DX推進の一環として、予算管理システムによる正確な財務データの把握と可視化が求められています。さらに、クラウド技術の成熟によって導入ハードルが下がり、多くの企業が、予算管理における業務効率やリスク軽減などの具体的な成果を重視し始めています。

こうした背景もあり、国内の予算管理市場は高い成長を見せている状況です。今回は2025年4月3日に発表したITRの資料をもとに、予算管理市場の背景や概要、今後の展望などについて取り上げたいと思います。

予算管理市場は有用性への認識が着実に広がり2023年度は19.4%増に
提供形態別のCAGR(2023~2028年度)は、パッケージは微減となるがSaaSは24.0%を予測
ITRが予算管理市場の提供形態別市場規模推移および予測を発表

予算管理市場の拡大

ITRの調査によると、国内の予算管理市場は2023年度に93億円の売上金額を記録し、前年から19.4%増という大幅な成長を遂げました。

企業が予算管理システムを導入する主な目的は、予算編成業務の効率化や経営判断の迅速化などを実現することです。これらの導入メリットが認識されるようになり、ベンダー各社では新規ユーザーの獲得が好調に推移しています。

2024年度も20.4%増が見込まれ、予算管理市場に対する需要の高さがうかがえます。また、ITRの予測では、2023年度から2028年度までの年平均成長率(CAGR)は19.3%とされており、中長期的に見ても堅調な拡大が見込まれています。

企業では迅速かつ正確な予算策定と予実管理が経営課題としていっそう重視されており、データドリブンな意思決定を支える基盤として予算管理の導入が進んでいることが背景にあります。

予算管理のSaaSとパッケージの動向

同市場を提供形態別に見ると、SaaSとパッケージで成長率に明確な差が生じています。2023年度のパッケージ市場は前年度比2.6%増という緩やかな伸びにとどまる一方、SaaS市場は同26.6%増と著しい勢いを見せました。主要ベンダーがSaaSでの提供に注力していることもあり、2028年度には市場全体の約9割をSaaSが占めるようになると予測されています。

ITRによると、2023年度から2028年度までのCAGRは、パッケージ市場がマイナス0.8%であるのに対して、SaaS市場は24.0%と大きく差が開く見通しです。クラウド技術の進化やセキュリティ面の改善に伴い、オンプレミスのパッケージを導入していた企業もSaaSへ移行する動きが加速しています。

導入コストの低減や利用者数に応じた柔軟なライセンス管理など、SaaSの利点は企業規模を問わず評価されており、今後も拡大を続けると考えられます。

予算管理市場の成長を支える要因

予算管理市場がこれほどまでに拡大している要因としては、まず経営リスクを早期に把握し、迅速に対応する必要性が高まっていることが挙げられます。企業がグローバルや国内市場で競争力を維持するためには、財務状況を精緻に分析し、投資配分の最適化を図る必要があります。

また、予実管理の精度を上げることで経営層がより正確に事業計画を立てられるようになり、競争優位性を確立する手段としても注目されています。加えて、DXの潮流により、デジタル技術を用いた予算管理プロセスの自動化や業務負荷の軽減が実務面で歓迎されていることも大きな後押しとなっています。

SaaS型のソリューションを導入すれば、初期コストを抑えながら短期間で機能を実装でき、利用状況に応じた柔軟な拡張も容易です。こうした総合的なメリットが、市場成長を支えています。

中小企業市場での拡大

ITRのプリンシパル・アナリストである浅利 浩一氏によれば、中小企業向けの予算管理市場は特に高い成長率を示しているとのことです。数年前まで予算管理ツールは大手企業向けのイメージが強かったのですが、SaaS型サービスの普及によって低コストかつ短い導入期間での運用が可能となりました。

その結果、年商100億円未満の企業を中心に採用が進んでいます。予算策定からレポーティングに至る一連のプロセスを自動化できることは、人的リソースが限られる企業にとって極めて有効です。また、予算精度の向上は財務状況を的確に把握するだけでなく、資金繰りや投資判断を行う際のリスク低減にもつながります。

このように、中小企業層への浸透が予算管理市場全体の成長を押し上げる重要な要因となっています。

今後の展望

今後は、生成AIやAIエージェントの活用が予算管理の高度化を一段と進めると期待されます。具体的には、収集データのリアルタイム分析やシミュレーション精度の向上が図られ、経営判断を下す速度と的確性の両面でさらなる進歩が見込まれます。自動化技術の発展によって、人間の作業負担が減るだけでなく、複雑なデータを多角的に解析することが容易になるでしょう。

また、クラウド基盤との親和性は引き続き重要視され、SaaS型製品の市場シェア拡大は続くと考えられます。予算管理は今や経営の根幹を支える仕組みとして位置づけられており、多くの企業が効率化と精度向上を両立させるITソリューションを求めています。この流れの中で、予算管理市場は着実に拡大し続けることが期待されるところです。

スクリーンショット 2025-04-04 19.50.09.png

出典:ITR 2025.4

Comment(0)