世界のデータセンター立地はどこに向かうのか
デジタルインフラの整備が進む現代では、クラウドサービスやデータセンターの需要拡大が世界的に加速しています。企業がクラウドを活用して業務効率や柔軟性を高める中、コロケーション市場はデジタル基盤を支える重要な存在になっています。
これまでは経済規模が大きくITエコシステムが集中する都市が市場を牽引してきましたが、近年は新興都市にも注目が集まりつつあります。国内外の大手IT企業やサービスプロバイダは成長性の高い地域に積極的な投資を行い、従来の勢力図が徐々に変化し始めています。
今回は2025年3月31日に発表したSynergy Research Groupの資料をもとに、世界のコロケーション市場の背景や概要、今後の展望などについて、取り上げたいと思います。
Where are the World's Future High-Growth Colocation Markets?
コロケーション市場の成長背景
クラウドやデータ集約型のサービス拡大に伴い、データセンターの需要は年々高まっています。企業や組織がシステムの柔軟性を求めるなか、オンプレミスからクラウドやハイブリッド環境へ移行する動きが加速しており、それを支える拠点としてコロケーション施設が選択肢の一つとなっています。コロケーションは、設備投資を抑えつつ高いセキュリティと拡張性を得られるメリットがあるため、多くの企業が重要なデータ資産を安心して預けられるインフラとしての期待が高まっています。
IT需要が拡大する一方で、世界各地のインフラ水準や電力確保の状況、地域の規制など、成長要因は多岐にわたります。Synergy Research Groupは四半期ごとに世界のコロケーション市場を調査し、小売りからホールセールまで詳細に分析を行っています。その結果、世界のさまざまなメトロ(都市圏)の動向を比べることで、高成長が見込まれる地域が鮮明になってきました。
巨大市場かつ高成長を遂げる三都市
Synergyの調査によると、現在のコロケーション市場でとりわけ規模が大きい都市のうち、今後も高い成長が見込まれるメトロは北バージニア、ムンバイ、フェニックスの三つです。北バージニアはアメリカの首都圏近郊であり、世界最大級のデータセンター集積地として知られています。豊富な電力や通信インフラを背景に、今後も安定した需要が続く見通しです。
ムンバイはインドの経済中枢として急速なIT需要を抱えており、国内外の大手プロバイダが積極的に投資を行っています。人口増加やスマートシティ化の動きもコロケーション需要を後押しする要因です。フェニックスはアメリカ西部に位置し、地震や台風といった自然災害リスクが比較的少ないことから、災害対策としてデータセンター拠点を置く企業が増えています。こうした地域特性とIT需要の高まりが相まって、高い成長率が期待されています。
この5年で顕著な伸びを示す都市圏
Synergyの予測では、今後5年のコロケーション成長率がとくに高いと見込まれる都市には、ジョホール、ラゴス、サンティアゴ、チェンナイ、クアラルンプール、ケレタロ、ジャカルタ、ムンバイが名を連ねています。アジア太平洋地域のジョホール、チェンナイ、クアラルンプール、ジャカルタ、そして先述のムンバイが入っており、アジア圏の新興勢力が目立つ傾向です。一方、南米のサンティアゴやメキシコのケレタロ、アフリカのラゴスといった地域も高い成長ポテンシャルを秘めています。
これらの都市は、経済成長や人口増、インターネット普及率の上昇などを背景に急速なデジタル化が進みつつあります。さらに電力や土地の確保に関する制約が比較的緩やかな場合もあり、コロケーション施設を新設しやすい環境が整いつつあるといいます。
欧州や米国のコロケーション市場
欧州では規模の大きな既存市場がロンドンやフランクフルトなどに集中していますが、今後の高い成長率が期待されるのはベルリンだとされています。ベルリンはスタートアップ支援やIT人材の流入などにより、独自のデジタルエコシステムを形成しつつあり、コロケーション市場もその流れに乗って成長が見込まれています。
一方、米国は引き続き世界最大のコロケーション市場ですが、成長率のトップ10内にランクインするメトロは見当たりません。ポートランドが最も上位に近づくものの、他国の新興都市ほどの急成長は見込みにくいという状況です。それでも依然として北米全体の市場規模は圧倒的であり、安定した需要がある点は大きな強みになっています。
主要企業と地域的制約の影響
Synergyが公表しているコロケーション市場の主要プレイヤーは、エクイニクス、デジタル・リアルティ、NTT、中国電信、サイラスワン、GDS、KDDI(テレハウス)、チンダタ、センタースクエアなどが挙げられます。これらの企業は世界規模で施設を展開し、大容量かつ高信頼のデータセンターを提供しています。
市場拡大においては、電力や土地などのインフラ制約が大きく影響します。シンガポールやアムステルダム、ダブリンなどはすでに需要が高く、大規模増設に向けた規制やエネルギーの課題を抱えています。その結果、近隣地域への拠点分散や新興都市への投資が進み、市場勢力図が変わり始めています。
今後の展望
今後は、ITインフラを重視する企業がアジアやアフリカ、南米などの地域に注目し、コロケーション事業への投資やパートナーシップを拡大すると予想されます。大都市に集中してきたデータセンターの存在感が、新興都市圏へと移り変わりつつあります。電力制限や地理的な制約は今後ますます意識されるため、最適な拠点選定において新興国の成長性や近隣地域のインフラ水準が重要な位置づけとなっていくのかもしれません。
出典:Synergy Research Group 2025.3.31