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2011「昭和漫画館青虫」合宿
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1)「青虫」応援と只見観光
福島県でも新潟に近い山奥にある只見は、東日本大地震では無事だったものの、夏の洪水で被害を受けた。かの「昭和漫画館青虫」も、もう少しで冠水するところだった。目の前の用水路も、一見変わりないようだが、コンクリの護岸が壊れていた。何よりも只見線の鉄橋が落ち、電車では直接行けなくなったし、只見線ファンの鉄ヲタさんたちも行かなくなってしまった。それ以上に、放射能の風評で観光客が減って、青虫も相当来客が減ったという。
この用水路に川から水が流れ込み、周囲に溢れて、戻るときに護岸を破壊したと思われる。
今は列車が通らない只見駅付近の線路。思わず奥田と「スタンド・バイ・ミー」を歌う。
昨年、学習院のゼミ旅行はドライバー二名を学生から調達し、東京から車で行った。今年も、何とか青虫を盛り上げようと、学生がゼミ旅行を企画しようとしたが、結局都合がつかなかった。そんな話をしていたら、明治大学の藤本由香里さんたちが電車とバスを乗り継いで10月末に行くので、一緒にどうかというお話をいただいた。
そんなわけで、学習院組は藤本さん組に合流し、10月29~31日の二泊三日、青虫合宿に行った。これがまた、もうレベルの高い、多様なメンバーで、じつにみのりの多い合宿となった。旅館の部屋にやたらとカメムシがいたことを除けば、今回は只見の神社や石倉なども観光し、充実していた。マンガ研究系の成果は順次発表していくが、おそらく少女マンガ系の人たちも、多くの成果があったものと思う。本当は青虫は今年30日で閉館(毎年雪のため冬は休館)のはずだったのだが、館長高野さんのご好意で、一日伸ばしていただいた。
昔からの里山と神社は、もう民俗学の世界そのままで、駅裏の神社はじつは龍神社だし、神社裏は古い石灯籠など、雰囲気出まくり。中に「二十三夜」と彫られた大きな石があり、何やら夜祭でもあるような感じ。しかも、そこからさらに山に登ってゆくと、連理の樹が何本かあり、巨大な石の下に社を作った石倉が・・・・。これが5円を火山岩の穴に結びつける縁結び信仰ってことは、間違いなくそのテのお祭りがあったんじゃないか。
つまり、『龍神沼』と諸星世界を合体させたような世界が、只見には広がっていたのであった。今後、青虫を訪れるマンガファンも、一度訪ねてみてほしい。
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2)「青虫」の面白さと貸本マンガ
青虫のマンガ棚の面白さは、貸本マンガ、赤本(戦前~戦後)、マンガその他の雑誌、最近の復刻本、マンガ関係資料本、シングルレコードなど、本当に幅広い範囲の様々な種類のものが、さほど広くない建物に全部少しずつある、というところにある。なので、少女マンガ研究の人、SF関連の興味、戦前戦中の赤本、貸本劇画好きなど、いろんな興味の人がそれぞれの対象を同じ場所で読み、それぞれの発見や疑問を投げ合うことになる。すると、誰かが仮説を述べ、誰かが記憶をたどり、その場で復刻版や資料本を参照して時代や作品を確認したりできる。マンガ研究の合宿には、これ以上刺激的な場はないといってもいい。
「ゴリラ・マガジン」
たとえば、教えてもらって見たものに、さいとうたかおの貸本誌「ゴリラ・マガジン」(さいとうプロ 62年)の企画物で、さいとう、永島慎二、ありかわ栄一(園田光慶)の合作の号がいくつかあった。それぞれでキャラクターをつくり、同じ話を順次描いていくのだが、その打ち合わせを前書きとあとがきのようにマンガ化している。ゴリマガは好きで、貸本屋で借りていたが、これは知らなかった。
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3)赤本、絵物語ほか
戦中の赤本と「傷つく身体」
今回、かなり興味深かったのは戦時中の赤本『決死の大空爆』(作家不明 昭和13年)。日本の敵だった中国軍が、蒋介石の映画を鑑賞する場面で、映画タイトルが『蒋チャンの冒険』だったのに笑っていたが、中国兵を殺す「残酷場面」、空爆舞台の編隊の描写の迫力に並び、日本兵が負傷しながら進撃する場面に目をひかれた。
その兵士は負傷しながらも進撃をやめず、ついに後ろから銃で撃ちぬかれ、直後に爆弾を抱えて自爆攻撃を行って死ぬ。まさに「傷つき死ぬ身体」を「記号的身体」で実現している。手塚の敗戦直前のマンガが初めて「傷つく身体」を描いたわけではなく、問題はその文脈にあるということがわかる。おそらく、こういう例は他にも見出せるのではないかと思う。
絵物語のコマ
また、世代的に間に合っていなかったので、ほとんど見ていない絵物語の雑誌「冒険活劇文庫」も見た。同じ絵物語でも、雑誌の中で様々な様式で作品ごとに特徴付けていた。いわゆる定型的な絵物語形式もあれば、文章と絵を入れたコマ枠を少しずつ斜めにして組み合わせたもの、かなり複雑で不定形なコマ割りをしたもの、今でいえばほとんどマンガに見えるものなど、多様性があった。
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