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夏目房之介の「で?」

青虫合宿2011(2)「青虫」の面白さと貸本マンガ

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2)「青虫」の面白さと貸本マンガ

 青虫のマンガ棚の面白さは、貸本マンガ、赤本(戦前~戦後)、マンガその他の雑誌、最近の復刻本、マンガ関係資料本、シングルレコードなど、本当に幅広い範囲の様々な種類のものが、さほど広くない建物に全部少しずつある、というところにある。なので、少女マンガ研究の人、SF関連の興味、戦前戦中の赤本、貸本劇画好きなど、いろんな興味の人がそれぞれの対象を同じ場所で読み、それぞれの発見や疑問を投げ合うことになる。すると、誰かが仮説を述べ、誰かが記憶をたどり、その場で復刻版や資料本を参照して時代や作品を確認したりできる。マンガ研究の合宿には、これ以上刺激的な場はないといってもいい。

「ゴリラ・マガジン」

 たとえば、教えてもらって見たものに、さいとうたかおの貸本誌「ゴリラ・マガジン」(さいとうプロ 62年)の企画物で、さいとう、永島慎二、ありかわ栄一(園田光慶)の合作の号がいくつかあった。それぞれでキャラクターをつくり、同じ話を順次描いていくのだが、その打ち合わせを前書きとあとがきのようにマンガ化している。ゴリマガは好きで、貸本屋で借りていたが、これは知らなかった。

Photo_11 ゴリマガの合作編、冒頭。

2 作品タイトルは「イカスこいつら」(すげー)

園田光慶

 奥田の教えてくれたのは、園田光慶の貸本『車大助』シリーズ(これ、読んでみると、ほとんど『柔道一直線』に出てきた必殺技の原型があるように見える)に、かの『アイアン・マッスル』の予告編があったこと。アクション場面が映画の予告編みたいに描かれ、最後に主人公らしき男がいるのだが、顔が決まっていなかったらしいのがわかる。

Photo_12 『車大助』の一場面。

Photo_13 『アイアンマッスル』予告。顔、ちがうー!

「X」と出崎統

 僕が「発見」したのは、これ。手塚やさいとう、手塚のアシでもあった福元一義などが一緒に作品を発表した『漫画探偵ブックスX』4号の中の、入選作として掲載されていた出崎統の作品『殺意なき殺人』。その後、青虫にある『X』の中では他に2作見つけた。手塚風の絵柄で、しかし内容的には劇画的なミズテリーを指向しているのが感じられる。

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