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夏目房之介の「で?」

青虫合宿2011(1)「青虫」応援と只見観光

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2011「昭和漫画館青虫」合宿

http://www16.plala.or.jp/aomusi-0064/

1)「青虫」応援と只見観光

 福島県でも新潟に近い山奥にある只見は、東日本大地震では無事だったものの、夏の洪水で被害を受けた。かの「昭和漫画館青虫」も、もう少しで冠水するところだった。目の前の用水路も、一見変わりないようだが、コンクリの護岸が壊れていた。何よりも只見線の鉄橋が落ち、電車では直接行けなくなったし、只見線ファンの鉄ヲタさんたちも行かなくなってしまった。それ以上に、放射能の風評で観光客が減って、青虫も相当来客が減ったという。

Photo_14 この用水路に川から水が流れ込み、周囲に溢れて、戻るときに護岸を破壊したと思われる。

Photo_17 今は列車が通らない只見駅付近の線路。思わず奥田と「スタンド・バイ・ミー」を歌う。

 昨年、学習院のゼミ旅行はドライバー二名を学生から調達し、東京から車で行った。今年も、何とか青虫を盛り上げようと、学生がゼミ旅行を企画しようとしたが、結局都合がつかなかった。そんな話をしていたら、明治大学の藤本由香里さんたちが電車とバスを乗り継いで10月末に行くので、一緒にどうかというお話をいただいた。

 そんなわけで、学習院組は藤本さん組に合流し、1029~31日の二泊三日、青虫合宿に行った。これがまた、もうレベルの高い、多様なメンバーで、じつにみのりの多い合宿となった。旅館の部屋にやたらとカメムシがいたことを除けば、今回は只見の神社や石倉なども観光し、充実していた。マンガ研究系の成果は順次発表していくが、おそらく少女マンガ系の人たちも、多くの成果があったものと思う。本当は青虫は今年30日で閉館(毎年雪のため冬は休館)のはずだったのだが、館長高野さんのご好意で、一日伸ばしていただいた。

 昔からの里山と神社は、もう民俗学の世界そのままで、駅裏の神社はじつは龍神社だし、神社裏は古い石灯籠など、雰囲気出まくり。中に「二十三夜」と彫られた大きな石があり、何やら夜祭でもあるような感じ。しかも、そこからさらに山に登ってゆくと、連理の樹が何本かあり、巨大な石の下に社を作った石倉が・・・・。これが5円を火山岩の穴に結びつける縁結び信仰ってことは、間違いなくそのテのお祭りがあったんじゃないか。

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 つまり、『龍神沼』と諸星世界を合体させたような世界が、只見には広がっていたのであった。今後、青虫を訪れるマンガファンも、一度訪ねてみてほしい。

Photo_18 龍神社裏の石灯籠など。

Photo_19 裏山の途中にある石倉。雰囲気あるなあ。

 さて、今回の行程を参考までにメモると、

北千住~きぬ103号~鬼怒川温泉~会津マウントEX~会津田島~バス(只見観光協会)~只見

 でした。

 また参加者は、藤本由香里さんをはじめ、米沢英子さん(コミケット代表)、内記ゆうこさん(現代マンガ図書館)、川原和子さん(マンガエッセイスト)、トラジカーン・マシマさん(タイから京大博士課程留学。少女マンガ研究)、日高利泰さん(京大博士課程。少女マンガ研究)、岩下朋世さん(東北大時代、論文『手塚治虫の少女マンガ作品における表現の機構』で博士号)、石塚さん(藤本ゼミ4年)、天野護堂さん(古典SF研究家。古書マニア)、卯月もよ(根本葉子)さん(「図書の家」)、石堂藍さん(幻想文学評論)。

これに夏目サイドから瀬川義之(夏目ゼミ世話役)、ライアン・ホームバーグ(米国から客員研究員として夏目ゼミに参加。60年代オルタナ・マンガなどを中心に研究)、張玉蛍(中国からの夏目ゼミ留学生)、奥田鉄人(作家、マンガ評論も)。いやはや、すごい。

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