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夏目房之介の「で?」

「ユーロマンガVol.8」エマニュエル・ルパージュ特集

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「ユーロマンガVol.8」エマニュエル・ルパージュ特集。がんばってます。
『ムチャチョ』のルパージュ『悪なき大地』全編翻訳。中南米を舞台に女性人類学者が、白人に汚された土地を離れ、理想の「悪なき大地」へ向かって彷徨する原住民の旅にまじり、最初は抵抗するもののやがて一体化してゆく物語。そこにナチのユダヤ人迫害のニュースが届く。彼女もユダヤ人であり、その家族は祖国ポーランドで殺されていた。二つの迫害の歴史を重ね合わせた旅が、ルパージュの鮮烈で透明な風景とともに描かれる。内容の悲惨さ、惨さに比して、いささか美しすぎ、流麗すぎる印象があるが、読み応えはじゅうぶん。
吸血鬼物の『ラパス』は今回で完結。ヤン原作、ロマ・ユゴーの精緻極まる絵の戦記物『エーデルワイスのパイロット』は、第一次大戦の複葉機による空中戦と戦闘機乗りのお話で、次回に続く。この人の女性はじつに豊満で色っぽい。アルチュール・ド・パンスのしゃれっけのある妖怪コメディ『ゾンビニアム』も面白い。本物のゾンビや魔女や悪魔が入り乱れるアミューズメント・パークを舞台にしたドタバタ物で、絵がかわいい。単純そうな絵だけど、丸鼻の魔女が意外に魅力的。あと、『闇の国々』作者たちへの斉藤宣彦のインタビュー(文化庁の受賞記念で来日した際のもの)も載ってます。
http://www.n11books.com/archives/27104812.html
http://www.asukashinsha.co.jp/book/b109673.html

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