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夏目房之介の「で?」

夏目ゼミ卒業生の同人誌『三角星』2号

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学習院身体表象の夏目ゼミ卒業生(一人は今博士課程)3人でやっている同人誌「三角星」2号が出ています。特集は「中村明日美子 ~ネオビジュアリズム~」。ゲストに河原和子さんを迎え、ゼミにもよくくる川勝徳重君のマンガ『道成寺』などもあります。150ページながら、なかなかバラエティに富んでいる。自分の元学生たちの同人誌なので、なかば宣伝なんですが、雑誌のどこにも「どこで買えるか」書いてないので、宣伝にならないかもしれない。

とはいえ、それとは別にいくつか触れておきたい文章があります。
うちのゼミにもきてた早稲田の表象・メディア論コース修士の宝田亮祐「マンガの「ことば」はどこからきたのか-20世紀前半の「絵」と「字」をめぐる運動から」は、短い文章ながら、彼の修士論文(未提出)の要旨を簡潔にまとめた文章で、現在のマンガ史論が求められている歴史的射程に一石を投じる。マンガにおける「絵」と「字」の関係を、大正新興芸術運動」と田川水泡、柳瀬正夢を中心に論じ、「立体派」とセリフおよび吹き出しの関係についての仮説を提出している。これまで宮本大人をのぞき、マンガ論の世界では戦前からの新たな文脈と視野でマンガ史を描きなおそうとした仕事は少なかったが、そろそろ始まってきたなと感じる。今後を期待したい動き(五十殿利治、足立元らの仕事も刺激的だ)。
たまたま、今博士課程で研究者を目指す三輪健太朗は中村明日美子を吹き出しと「落下」を通じて論じている。ほかにも杉浦茂で刺激的な修論を書いてくれた島村マサリは「ヘタウマ」を通じて言説史的に「ガロ」を論じ、昨年までうちにいたライアン・ホームバーグも杉浦茂に使われているアメコミを調べて図版を提示している。なかなか面白いデキになっていると思います。ご興味のある方は、どこかで調べて入手してみてはいかがでしょう?(無責任ですが・笑)

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