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2日は花園大学での毎年やっている講演。
今回は、僕が日常読んでいる雑誌などから東日本震災に関するものをいくつか選んでみた。まだうまく語れないので、レジュメはエッセイ風に書いたが、実際の講演ではまた別のことを話している。会場には、村上知彦氏、泉信行氏、F・M・ロッカー氏や関西在住の研究者の方々が来てくれて、質疑も彼らとのやりとりとなった。

講演後、甲南女子大学に移られた増田のぞみさんが関西の研究者との交流会を催してくれて、上に書いた方々とともに食事会へ。リラックスした雰囲気の中で非常に充実した話が飛び交った。東北大から精華大(京都国際マンガミュージアム)に移った岩下朋世さんは、講義の仕方について課題を語り、村上さんは大学のありようについて思っていることを語り、僕も大学の専任の先生になって経験したことを話したり、ほかの研究者とはジャパン・クールの流れで講義を持たされて、どうしても日本固有文化を語ることになるのだが、どうしたらいいのかという悩みも聞いた。こういう交流会をするのが、そもそも花園大での集中講義を続けている動機の一つでもあるので、できれば恒例化したい。交流会は二次会に流れ、結局花園会館に帰ったのは11時過ぎ。充実はしていたけど、今回は7月からの流れがほんとにハードでいやはや疲れた。

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8月1日は、京都・花園大学での集中講義。
初めは、学習院の学部向け講義で毎回やっている学生インタビューを行い、それぞれの学生がどんなふうにマンガをイメージしているかを引き出す。単行本派と雑誌派(ここ数年でも、どんどん雑誌派は減少している)、少年、青年、少女マンガの差、どこで買っているか、読んでいるかなど、自分のマンガとの出合い方を意識してもらい、どんなものをマンガだと感じているかを引き出す。その後、海外のマンガをさまざま紹介し、本のページ数、カラーのあるなし、大きさなどをOHPで実物を見せつつ、その背景(流通形態や市場のありよう)を語っていく。経験的に、この流れが学生たちにはひじょうに面白いらしい。学生に反応させつつ、いろんな資料を見せていると、僕はいくらでもしゃべれる。結局、午前1限と午後1限を費やし、残りで『ワンピース』の話から、日本のマンガおよび出版の市場構造の話をした。

いつも、レジュメを作るときは「これで間に合うかな」と不安になるので、つい多めに作ってしまうが、やってみると時間が足りない。年間講義なら次回持ち越しでいいのだが、集中講義だとそうもいかない。本当はもっと学生たちとやりとりをしたいのだが、後半は僕一人でしゃべり続けることになった。あれって長時間やると、やっぱり眠くなるんだよね。ほんとは時間があれば見せようと思っていた映像があったのだが、それは後期に見せることにしよう。

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natsume

京都花園大の集中講義の前日、今学習院に客員研究員で来ている米国人研究者の取材に同行して、京都在住の佐々木マキさんにお会いした。僕にとって佐々木さんは、本当に影響を受けた作家なので、けっこう興奮しました。正直、質問はほとんど僕がしてしまった。でも、僕が「こうだろうな」と思っていたことは、かなり合っていたことを確かめられたので、ひじょうに嬉しかったです。佐々木さんは3時間にわたって、イヤな顔もせずに色々とお話してくださった。ありがとうございました。

僕は村上春樹が後に書いているのとほぼ同じような感じで佐々木さんのマンガを受け取っていた。69~70年頃、文章も絵も描けなくなってジャズ喫茶に日参するだけの日々をようやく抜け出した頃、僕は佐々木さんのガロの作品を全部読み直してノートをとった。同じ頃、山下洋輔のジャズにもはまっていて、こう思った。
「自分の中に表現すべき何かがあるわけじゃないんだ。中身のないがらんどうの自分を、表現する行為で震わせれば、そこに表現が成り立ち、その結果、表現すべき何かがあるような気になるんだ」
これは「本当の自分なんてどこにもない」という認識とともに得た発想だったが、佐々木さんのマンガはその証明のように思えたのだ。

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夏目 房之介

夏目 房之介

72年マンガ家デビュー。現在マンガ・コラムニストとしてマンガ、イラスト、エッセイ、講演、TV番組などで活躍中。

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